書き込み
オホーツク海に面する北海道の紋別市。

冬には流氷が接岸をし、砕氷船での流氷観光が名物にもなっている港町だが、その昔、日本でも三番目の金の産出量を誇った金山があったことでも知られる。

その鉱山跡がある紋別の鴻之舞を訪ねた時、付近一帯の鉱山施設跡が草木に埋もれつつある中、ひっそりと取り残されたように佇む、廃屋数件を確認する。

そこで私は、見たことを後悔するような残留物を発見することとなる。 
表
朽ち果てているのか、火災にでもあったのかはわかりませんが、中に入らせてもらいます。



勝手口
建物周りをチェック。

この状態だと中も雨風雪の影響を受けまくるため、建物全壊もそう先のことではないだろう。



入り口
入り口のドアがもがれたように無い。



ドア
枝草に埋まったそのドア。



勝手口ドア
勝手口のドアは原型を留めている。



トイレ
山の中なのでやはり水洗式ではない。

トイレットペーパーではなく、ネピアのBOXティッシュを使用していた模様。



古新聞
ティッシュと併用して新聞紙も使用。



1988
廃墟や廃屋において、所有者が何時去ったかを憶測するのに大変役立つのが、新聞とカレンダー。

1988年の新聞。

東京ドームが完成。リゲインが発売され『24時間戦えますか』のフレーズが流行語になり、時はバブル経済期。



パイプ椅子
この椅子に座りながら、もしかしたら鉱山勤めで定年後の余生を送っていたかもしれない老人は、森林へと戻って行く鉱山の町の様子を、一体どんな思いで眺めていたのでしょうか。



牛乳パック
牛乳パックの山。

道民飲料の『ソフトカツゲン』も、忘れないでくれと言わんばかりの存在感。



机ラジカセ
神棚に机、ラジカセに赤外線ストーブに箱買いインスタントラーメン。

生活の証しが見えてきた。



窓枝
一部にはかなりの損傷部分もあるが、



トタン
全体としては、補強されている部分もあり、



煙突
中の状態はしっかりと守られているようだ。



肩もみ
肩もみマッサージソファ。

背広など、男性用の服がある。



電子レンジ
デザインとその大きさからみてかなり古そうな電子レンジ。



ファンタ
250ml太缶サイズの『ファンタフルーツパンチ』。

この頃、東京で250mlサイズと言えば、細身のロング缶だった。



1993
1993年の新聞。

Jリーグ開幕。レインボーブリッジ開通。

少なくとも、この時代まではここに住んでいたらしい。



少年と東京タワー
東京タワーの飾り付き写真たてと制服を着た少年。
もしや、高校の修学旅行時のものだろうか。

実はこの右横にずらりと同じ男性の肖像写真が並んでいた。
年代順にきっちりと並べられているのだが、最後の老人と言ってもいい写真まで、一貫して一人でしか写っていない。



三角定規
でかい三角定規に新聞の囲碁コーナー。



ラジカセメモ
紙の束はメモ帳替わりだろうか。

延長コードとコンセントが部屋の中央に浮かんでいても、普段の生活が許されていた状況。



棚
生活物資が並んでいる。



恵比寿様
恵比寿様と大黒様。



昭和天皇皇后
昭和天皇と皇后陛下。



ベッド
シングルベッド。

衣服やその他の状況を鑑みて、老人の一人住まいだったことにほぼ間違いないだろう。



習字
自分の子供の頃の習字か、孫の物か、定かではない。



金比羅山
金刀比羅宮の壁掛け。



図鑑
木や花が生い茂る山の中に住んでいるわけですから、必須な本。



壁穴
ストーブの煙突穴。



袋
コンビニは無かった頃だろうから、スーパーの袋でしょう。

一人暮らしの男性によくある光景。



校歌
小学校の校歌が書かれた額。

教室の後方の壁にでも飾られているようなものだが、廃校となった小学校から引き受け、大事に保管していたようだ。

鴻之舞にあった小学校が母校だったのだろうか。

それとも、元教師?



本
歴史の本が多い。



1986
1986年のプロパンガスカレンダー

チェルノブイリの原発事故、ダイアナ妃が来日した年。

これより数十年後、まさかチェルノブイリ以上の原発災害が日本で起こるとは、誰が想像しただろうか。



味覚糖
味覚糖チョコハイディ。

ウィスキーボトルのような器に入っている。

味覚糖 チョコハイディ 108g×10袋
現在ボトル入りではないですが、絶賛発売中。



日記1
かなりの数の日記がありました。



日記2
詳細に書き込まれている。

このようなものを自ら置いて家を去るとは通常考えられず、自ずとその理由が推測できる。



台所
生活の臭いが残ったまま、ある日突然に。



ガスコンロ
まだ使えそうなガスコンロ。



屋根裏部屋
2階への階段があるので登ってみると、そこは屋根裏部屋。

今で言うロフト。

独居老人には必要なかったらしく、あまり使用されていた形跡はない。



コンロと椅子
魚が焼けるまで、お湯が沸くまで、そのパイプ椅子に座って待っていたに違いない。



瓶
ファンタの瓶をはじめ、空き瓶類が並ぶ。



茶箪笥
合板の茶箪笥。

湯沸かし機能の無いポットが転がっている。



屋根穴
年々損壊が酷くなり、何れ土へ山へと埋もれる運命。

この老人の生きた証しは、この地上から全て抹殺されてしまうのだろうか。



HI-C
HI-Cオレンジとヤマキだしの素。

HI-Cオレンジのボトルには張り紙がしてあることから、何かの調味料入れに使用していたと思われる。



中野モータース
1987年、中野モータースのカレンダー。

調べたところ、まだあります。



ベット棚
ベッドの端の便利棚。

足元か、枕元か。それで便利具合が変わってくる。



練習
独り身のご老人が裁縫の練習でもしたのだろうか。



書き込み
通りすがりの人間が、放置された数十年前の痕跡とはいえ、あまりに深入りしすぎたのではないかと、、思うところがある・・・



かぼちゃ
かぼちゃ。



だるま鏡
だるまの鏡。



ビッグマン
スーパーなどで、ビッグマンのどでかいボトルを買っているご老人を見かけると、いたたまれなくなるのは自分だけではないはず。



取っ手
この取っ手が、たった一人の老人のためにだけ使われていたとしたら、なんとも悲しすぎる話だ。



外側
再び外側。



タイル
もしかして外風呂だったのだろうか。

別棟だったが、屋根壁が崩れて頑丈なタイル浴槽が残ったと。



浴槽
浴槽はこっちで間違いない。

こんなものを運び出す理由も無いから、この周りに屋根や壁があったんだろう。



家屋
金山の夢が醒めて人々が去った町に一人残った老人。

想いが詰まった家屋が人知れず土に帰ってゆく切なさ。

独居老人の廃屋ほど考えさせられるものはないと、あの積み重ねられた日記の濃密な書き込み内容を思い出し、こちらも一人、肩をすぼめ建物を後にして歩き出した。


廃屋、愛国者の姿なき声 おわり

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