誰もいなくなった廃墟アパートを、大の大人が息を切らしながら、昇り降り。
人里離れた山の奥深くとはいえ、北海道の人のいなさ加減は、本当に心身を落ち着かせてくれるし、ふと頭をよぎる『俺は一体何をやっているのだろう』といった、一瞬呼び起こされる、生活の場での自分が置かれている実際の状況、これから先のやりくり……
兎にも角にも、これだけの寂寥感を味わうためだけに、北海道へ何度もやって来てしまう自分がいる。
物干し竿売りのおじさんは、こんな所までやって来たのでしょうか。
ベランダ収納。
開いて…
遊びで外してみたものの、これといったやりようもなかったので、放られて放置されたままのポスト。
奇声でもあげながら蹴りを入れたんでしょうね。
中央の扉の中には排水管が通っている。
野良犬や野良猫が住み着いても良さそうなもんですが、絶望的なまでにエサが無いんでしょうね。
あらためて、本来は人が住むような場所じゃないということがわかる。
災害時には避難しやすいようにと、簡単に割れるようになっている、仕切り板。
1階のそれと違って、密林度が5割増し。
このような住居形態だと、当時は年齢や家族構成が近いこともあり、全員が知り合いだったと思うんですが、ちょっとした浮気でも一斉に噂が伝わったりして、プライベートな時間があまり持てなかったような気がする。
床に昭和四十五年の新聞。
この半年後に羽幌炭鉱が閉山となる。
ふすまが纏められた部屋。
中から割ったり、外から割ったり。
ニトリやIKEA要らずの設備。
古い畳やブラウン管のテレビは、本当に処分に困る。
個人的な経験で言えば、『パソコンファーム』がお勧め。
古いPCや液晶ディスプレイなど、優良な対象品が1品でもあれば、それに同梱をして、厄介者のガスコンロも引き取ってくれた。本当にこれには大助かり。
勿論、着払いの送料無料で…
まだカーテンが残っている部屋。
この部屋にあったのが入学祝いの短冊のし。
贈ろうと思っていた矢先に、閉山が決定になり、ご主人が解雇をされたのかも・・・
ここでも、ベランダチェックを一応してみる。
ナショナルの電気炊飯器の箱と、漬物でも漬けていたような樽があった。
表札は現在でも公団住宅などでよく見かけるのと同じもの。
ポストはドアに組み込まれているから、このステンレスの入れ物は、ヤクルトや牛乳の配達受けだろうか。
流石に上層階は程度が良い。
現在も不変のデザインのハンガー。
妙な台で固定されたドア。
人目を必死に避けようとした形跡が。
まずまずの便器具合。
サンポールにまだ残りあり。
ちなみに、サンポールを販売していたサンポール株式会社は、1990年に経営不振に陥り、経営権を金鳥に譲渡している。
ラベルの『日本電酸工業株式会社』とは、サンポール株式会社の旧社名。
現在販売されているサンポール。
ベランダの物置にはパールライスの袋。
そして、ストーブやボイラー等の排気用と思われる煙突。
現在やっていることの意味について、あらためて問いただしたくなるような時、我に返るその時に
「北海道!北海道!北海道!!」
と、内面に向かって叫んでいる、自分。
頭上スペースも抜かりなし。
とりあえず5階まで行き降りてみる。
理由はわからないが、奥の方の棟へ行くほど人の営みの痕跡が増えて行き、何故か内部自然崩壊の度合いが酷くなり、時には植物園のようになっていいる部屋もあったり、侵入者の荒らしようは益々高まり、言い方は悪いかもしれないが、現実を知るという意味での興味深さは増していくばかり。
期待を膨らませつつ、間髪入れず、廃墟アパート散策を更に続けようと、軽やかに歩き出す・・・
つづく…
「柱のメッセージ」 廃墟高層アパート戸別訪問、羽幌炭鉱跡.4
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