元炭鉱夫とその家族。高度経済成長期の”あの”日々を懐かしみ、「苦しかったけど、あそこでの苦労があったから、今がある。お父さんが北海道まで行けるのは今だけかもしれないから、旭川動物園を見るついでといってはなんだけど、行ってみよう!」
山奥の、森に埋もれ廃墟化した高層アパートの一室。既に開いた状態の錆びた”いかにも”団地風ドアを、長女を先頭にして「せーの」で入ると、見えてきたのは
かつての住みなれた我が家。居間があった場所。ローアングルポジションで無心に写真を撮っている、一人の作業着風ファンションの男と対峙する・・・
部屋の中が植物園のようになっていたので、唖然としながら撮っていたが、もしこのように来られたら、彼等の存在にしばらく気づかず、かなり恥ずかしいポジショニングを、結構な長い間、みせつけてしまったかもしれない。
陽が当たらない場所も結構ありそうだが、まんべんなく生い茂っていることに驚く。なんたって、ここはアパートの一室。
もしかして、部屋じゅうに、建物全体に、種子をばら撒けば、高層アパートそのものが植物の棟となり、山奥に建てられた人工物が、ごく自然な形で自然界へと還り、埋没をし消えつつも、4棟の残骸は風景として観光名所となる
気が狂っても、サバゲーなど、やらぬように・・・
水耕栽培なんかできそうだ。
水分と土と砂、絶妙のブレンドに、差し込む光線。
アーティストかなんかが、わざと床板を外し、種蒔きをして、この完成形へ持っていった?
密林部屋を抜けまして、次なる部屋へ。
ルーチンワーク化した便所確認。
「ほぼ、当時のままに綺麗であります!」
誰もいない山奥、一人きり、息をぜえぜえ切らしながら、廃墟アパートで便所確認する男・・・・・・
関東圏のこういった場所なら、自分以外の訪問者が何時来てもおかしくないので、妙な格好はできないし、挨拶をしようかしまいか、考えるだけでも億劫。
花火大会や森の棟案に感化されてしまい、『町興しだ!』なんていうことにならぬよう、くれぐれも、そっと、自然放置保存してもらいたいものです。
ピクセル風で、今だからかえって新鮮に見える刺繍のハンカチが、しっとりと。
この缶にもテグスが通してあり、下部分には穴がいくつも開いている。
アパート菜園に農薬でも蒔いたのでしょうか。
捨て置かれてウン十年。すっかり退色をして、白黒になっているカバヤの『チョコレート・プレッツェル』。
ある、確信が自分の中に仄めき、実行をしてみようと、裏返して
数十年の時を経て鮮やかに蘇った、犬と少年の輝き。
これより更に数十年、脱色リバーシブル状態のこの箱を再び拝むその時まで、僕は廃墟探索を続けているだろうか・・・
心なしか、栗毛の少年の笑顔が二割増しに
猫よけのはずがない。
玄関付近に雑然と置かれたコーラやビールの瓶。
道民のソウル・ドリンクでもある、ガラナ系飲料がある。『ガラナ・エール』。
ビールブランドはどこの部屋も頑なに、サッポロビール。
当時だったらリサイクル料を貰えたはずなのに、この放置よう。
家主が、瓶の中に帆船を入れる『ボトルアート』のアーティストだった可能性は、あるのかないのか。
昔は大概の家にありましたね。
ピンセットで部品を入れながら製作をするタイプと、手抜きのやつは、底の方を切断して完成模型を入れてから、元に戻した瓶の切断面に縄を巻いて誤魔化すという、バレバレのがあったりした。
トイレのドアだろうか。スリムサイズ。
室内はじっとりジメジメとしているが、ゴキブリがいないのが、幸い。
夢の近代的高層アパートメントの残骸。
今や、ひなびた旅館のトイレぐらいでしかお目にかからないタイプのスリッパ。
実に中途半端な切り方をして、残りを便器内に捨てる行為。
数十年の時を越えた謎かけか、精神異常者の仕業か。
これより先には「全ての神様はここに置いてきた」と言わんばかりの、祭殿の部屋と出くわし、汚れた心を癒してもらい、清らかな体をもって建物外回りの大規模最終チェック巡りを行うこととなる
つづく…
「お祈り部屋」 廃墟高層アパート戸別訪問、羽幌炭鉱跡.9
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コメント
コメント一覧 (2)
そういった工夫の仕方があったんですね。下町の家は独特なので、本人は当たり前に思っていても、他から見ればめずらしいような節約術があったのではないかと思います。
キリで開けたいくつかの穴からシャワーのようにして手洗いをしていました。
蛇口の水を出すより少量で手先だけ洗う事が出来ました。