正面
 北海道滝川市を早朝に立ち、三笠市にある『住友奔別炭鉱』へと車を走らせる。途中、古き良き炭住の”風景”がなかなかだということを聞き、奈井江町に寄ってみることに。

 平日の朝9時頃。滝川や札幌だったらとっくに街が活動を始めている時間だが、ここ奈井江町では人家は見かけるものの、人の気配がまったく無い。いくつかの炭住はあるにはあったが、強い印象をもたらしてくれるようなものではなかった。

 そんな中、ある不思議な長屋風の崩れかけた家屋の並びと遭遇。現役の郵便局(簡易)や呉服屋などがアーケード街のように連なっているその末端。窓は無く、カーテンが勢いよく外へ向かってたなびいている廃屋。部屋に散在する”昭和の残骸”が外から丸見えだ。


 その部屋で見たものは、携帯電話普及前夜に繰り広げられた若者達の涙ぐましい驚きの方法での交流会。思わず膝を打つような愛情伝達手段。来るべき未来にこの部屋へと訪れる者達に伝えたかったこと・・・・・・。


 早速、呉服屋の主人や郵便局職員に見つからないように、潜入を開始する   



呉服屋
 人の気配や息づかいも感じられないが、駐車をしている車は新しいので、呉服屋が現役でなかったとしても、人は住んでいる様子。郵便局は通常なら当然営業中のはずだが、前を通ってチラリチラリと眼をやってみても、閉まっているように感じられる。用もないのに「営業中ですか?」と入って行けるほど強いメンタルが僕には無い。



前より
 長屋のように建物が並び、その店先の庇はつながっていて端から端まで続いている。ちょっとしたアーケード街のよう。問題はその末端。一番端。
 



端
 壁の一部は剥がれて中の板が露出している。雪が滑り落ちやすそうな半ドーム型。



ごみ
 末端の廃屋の側面。アルコール類が多いが、アル中だったのか、元は酒屋さんだったのか。



断熱材
 臓物のような断熱材が山盛り。



カーテン
 強風でブルンブルンたなびくカーテン。窓は全開なので侵入は容易だが、朝からその様子を近所の人に見られると、下手をすれば通報モノ。車中よりしかと様子をうかがい、ここしかない、といった絶妙なタイミングで、ダイブするように入る。



カーテン2
 うごめくカーテンで気が散ってしょうがない。部屋を散策していて、お婆さんが覗いたりしても、気づかずそのまま撮影を続けてしまいそうだ。



あさひ
 朝陽が廃墟散策者のその濁った暗い眼を射す。なにげにカーペットは冷から暖への配色。グラデーションでまとめられている。

 注目すべきは、動かずの波打ガラスの戸。



momoko
 MOMOKO とある。当時の菊池桃子ファンだった子供が、ガラスの上にお気に入りのシールを貼ったはいいが、廃屋化して戸は不動となり、波打ガラスに封印される。歪んだ視界から廃屋内を見つめること数十年。ワークウェアと革パンを着込んだ廃墟探索者と対面することになる。

 今でこそ当時のアイドルとしては成功をした部類の彼女ですが、ロック歌手転校の時、このシールを貼った少年がどんなにか心を痛めたか・・・、お察しいたします・・・。



アルバム
 床のカーペットの上にはアルバムが。『双葉幼稚園』の運動会の様子。ここもまた、意図しない不意の退出だったのだろうか。



新聞
 昭和天皇崩御を報じる北海道新聞。束の下にあったのを広げてみる。開いて読んだ形跡は無かった。



メーター
 闇の中に埃がこびりついた体重計。華麗さを失っていないかき氷のカップ。とても二軒隣りが現役の郵便局とは想像できない有り様。



ふろ
 風呂場のようだ。大文字で書かれた、映画館の看板のような大きな板が横たわっている。入りたくなるが、ここも窓が全開で、隠れ蓑になるカーテンのような死角が無い。モロバレ発見通報を避けるため、泣く泣く退散をする。


 次に足を踏み入れた部屋では、現役大物タレントの懐かしい”あの”シンボルが、部屋の真ん中で廃墟散策者を満面の笑顔でもって歓迎をして向かい入れてくれる。そして、この部屋の本来の用途、昭和の若者達が大挙してここへ訪れた”本当の理由”があきらとなる   


つづく…

「先人少女の残り香」廃屋、ジョージ交流館.2