老朽化
 仙川団地の区画内に入り異質に感じたのは、そこそこ都心に近い立地ながら、土地の余剰スペースが不自然に多いこと。建物の老朽化、その放置され具合などにも驚く。他にも、敷地内中央部にありながら、誰もいない商店街の余りにもな静けさなど。

 東京に住んでいて普段、団地の敷地内には踏み込むことが無かったのでよくわからないが、果たしてこの光景が東京の古い団地の当たり前の光景なのか、それとも仙川団地特有のものなのだろうか。

 廃施設を求めてわざわざ北海道まで行ったりしているのに、こんなにも身近にあった、現代東京の不可侵ともいえるスポットに、期待に胸膨らませつつ、切り込んで行く   



danchi
 あともう一つ。道路や歩道が”とてつもなく”綺麗に清掃されていること。爆買いで来日する中国人が、日本の公共施設にゴミが落ちていなことに驚くらしいが、この団地の道路や公園のゴミの無さ、綺麗さには、日本人である僕でさえ、驚愕と言ってもいいほどのインパクトを受けた。団地特有の管理された人間関係と、日本人の美意識が上手に組み合わされた結果なのだろうか。

 ただ、ホラー映画の舞台になっただけあり、建物の朽ち果て具合は見ての通り。



鉄塔
 中田秀夫監督も納得の味わいがある・・・



来客用
 昔は秋葉原まで車で行っていたこともあったが、最近では都内を車で乗りつけることはあまり無くなり、車はおろかバイクの使用も避けている。理由は駐禁を取られる確率が半端無く高くなったこと。駐車場にとめたとしても、支出される無駄な駐車料金のこともある。近場なら自転車、40分以上かかるなら、電車やバスの方が速くてコスパが良い。

 ここでは無料で来客用の駐車場が用意されているのだろうか。かなり恵まれた周辺環境だ。



ベランダ2
 空き家が多い。印象的な塔。

 団地生まれの子は、この給水塔が幼少の頃の原風景として、脳裏に焼き付いているのではないだろうか。



表面
 公園がある中央部よりは、周縁部にある建物に朽ち具合が多く見受けられる。



たわし
 玄関前に置いておいた百均の傘を盗まれたことがあり、今の時代に家の前の傘が盗まれるものなのかと、愕然としたことがあったが、この団地では御近所の眼がしっかりと監視役をしているのか、タワシやスポンジは無事のようだ。



店
 仙川団地銀座と言ってもいい場所。昼下がりに人通りは無い。スーパーのコープと個人の八百屋さんが並ぶ。お年寄り以外は、川を渡ってすぐの、コメダ珈琲まで併設するショッピングモールへ行くのかもしれない。

 誰もいないタイル地のアーケード通路を進んでいくと、奇異な光景と遭遇する。



八百屋
 団地の歴史とともに歩んだに違いない、レトロな八百屋さん前。店内を見回しても、客がいないどころか、店主もいず。手前のネコはこちらを睨みつけている。どうやらテリトリー内に入ったらしく、警戒をしているようだ。団地の人にとっては当たり前の存在のネコ達で、カメラを持って寄ってくる人など普段いないだろうから、なおさら警戒心が強くなっている。

 ここから数分先の仙川駅には、スタバや高級スーパーなどがあるというのに、この団地の空間だけは、完全に昭和の時間が流れている。



ねこ2
 バラバラに、思いおもいの場所で、まったりと死んだように寝ていると思われたネコ達。僕がやってくると、ボス格らしきネコが頭を上げて挑発をもせんばかりに。すると、周りの支配下のネコだろうか、するすると彼等が動き出し、綺麗な十字型陣形を取り、また寝そべりだす。



ねこ
 仲間以外のネコが来たが、その鉄壁の陣形を見ると恐れをなしたのか、そそくさと去って行った。どうやら、仲間内を守り、縄張りを主張する、防御の陣形とでもいうべきものらしい。普段はその隊形は解かれたままだが、部外者が領域を侵犯をすると、防御警戒態勢に入り、決められた配置、十字配置へと着くようになっているようだ。

 この、十字型の陣形はどこかで見たような気がして、そもそも、仙川団地へとやって来た目的ともかぶっているような気がする。朧気にその形、配置、姿体、が、頭の中で形作られ、あるイメージと”ガッチリ”と符合をする。




kadan
 映画『クロユリ団地』内で強い印象を残した、鉤十字死体に違いない。卵が先か、ニワトリが先か。映画のイメージとネコ達の十字陣形を無理矢理結びつけたとも思われるかもしれないが、ロケハンに及んだ中田秀夫監督が、このネコ十字陣形を目の当たりにし、直接アイデアとして使わなくとも、頭の隅に留められ、無意識に極めて斬新な、”鉤十字死体”創出の元になったとも推測できる。



つぐみ
 鉤十字陣形は犬さえも追っ払ったのか。つぐみちゃんが行方不明です。見かけた方はご一報を・・・



ダストシューター
 作りのタイプが少し違う建物へと。

 開かずのダストシューター。羽幌炭鉱の高層アパートでも使われていなかったが、容量が決定的に足りなかったり、使い勝手が悪いのだろう。



階下2
 違法建築のリスクまで犯し、隠したかったものとは。画一的な建物にまれにあるこのような歪。妄想を掻き立てられる。



商店街
 団地区画の端から少し出ると、見事なまでのシャッター商店街。団地とともに一蓮托生でやってきたようだが、近場のショッピングモールに客足を取られた様子。



ベレー帽
 元来た道へ戻ろうとした時、目に入ったのが図書館の看板。バイトの受付が、片手間で描いたイラストと思いきや、『illustration Dick Bruna』とある。ミッフィーなどで知られる、オランダ人の絵本作家だ。版権料などを払っていたとしたら、なんとも税金の無駄遣い。



ルール
 『きれいに』と諭す看板自体が汚いという、ありがちな光景。


 時間の流れが止まっているような仙川団地内を、カメラ片手に跋扈しつつ、外周部を歩いていた時、強い違和感を感じる。周囲を女子大生に囲まれ、一気に現代へと押し戻されたのだ。すぐ近くに有名な『白百合女子大学』があり、その下校時間と重なってしまった。カメラを持ちながらの並走状態なので、通報されてもおかしくない状況だ。だが、危機の前に逃げ出す敏捷な察知能力で、なんとか女子大生の群れから早足にて抜けだした。

 廃墟散策者たるもの、常に始終ビクビクと恐れを感じながら、逃亡せんとする心構え、気心、を持ち合わせていなければならない。それが最大の危機リスク回避、自己安全に繋がるからだ。北海道の山の中、東京の仙川団地でも同じこと。これで何度も今まであらゆる危機から逃げおおせて来た。

 取り敢えず、女子大生にも不審がられていないようなので、安心をして、駅まで徒歩で行き、帰途につく。


おわり