ようやく、立坑櫓(たてこうやぐら)の裏側へと到達する。
見えない背中を そっと 手鏡で見るように…
と言った歌があるが、裏に潜む爆発事故の痕跡を”まじまじ”とじっくり観察してみたいと思う。
建物の屋上部分が家庭菜園のようになっている。
この付近は現役で稼働している施設は無いが、車両の轍が見受けられた。まさか、侵入者が車で直接乗り込んでいるのだろうか。普段はなんの縁もない他人の廃屋にずかずかと、突入してあれやこれやと詮索をしている僕が、ここでは控えめに臆病気味に、気配を消しながら、申し訳ない気持ちを最大限に醸し出しながら、見学をしているというのに、このように貴重な産業遺産へ土足で上がり込むような行為は、あまり感心できない。
自分以外の人を目撃したら、物陰に隠れるぐらいの控えめさ、謙虚さが、廃墟散策者には、必要ではないだろうか。
灯油かガソリンか。赤いタンク。
周囲には、かれこれ数時間、誰も見かけないし、乗り越えられそうではありますが・・・
ひとまず、櫓外観周遊を完遂したいと思います。
付随の壊された施設跡には、野ざらしの鉄骨。その向こうにはタイル地の壁。公衆トイレか入浴施設だったのだろうか。
住友奔別炭礦立坑櫓の真裏部分。確かに、爆発事故跡のように見えるが、錆のようでもある。
慰霊塔のようでもあり、石炭産業の功績とその栄光を称える、シンボリックな塔としての存在感。
ガラス部分が残っているが、それ以外は、吹き飛んだのか。
最後に、無茶を犯さないで入りやすそうな部屋があったので、侵入してみる。
特にこれといった成果は無かった。
長い間施設内を見学をしたが、誰一人として、自分以外、みかけることはなかった。北海道ならではの、贅沢な巨大空間の長時間独占である。
ここへ来る前に見かけた、行列が出来ていたお蕎麦屋さんで食事を済ませ、ルームミラー越しに、勇壮にそそり立つ『奔別炭礦立坑櫓』を見やりながら、次の北の廃空間を目指して、車を前進させた。
おわり…
こんな記事も読まれています
コメント
コメント一覧 (4)
どうもこんばんは。最近ツイッターをフォローしてくれましたよね。どうもありがとうございます。
あの錆びゆく巨大な人工建造物を目の前にすると、人の無力感を感じます。北海道なら一対一で対峙できるので、打ち震えて言葉も出なくなるのもわかります。
>行く勇気と装備がない私ではありますが、いずれは、その姿が自然に還ってしまわないうちに見学したいと思います
冬の装備は着込めばなんとかなりますが、夏は暑いだけに結構気を使います。自分なりに試して良いのを見つけたので、追々、記事の中に書いていきたいと思ってます。
かなり読み込んでもらっているばかりか、記事を参考にして訪問までしてもらって、書き人冥利に尽きるというか。
ういろうさんもひるまずに大いに退廃ライフを楽しんで下さい。
昨年のこの時期に奔別炭鉱の竪坑櫓を見に行きました。
自分は廃墟大好きですが、廃墟にはほとんど足を運んだことがなく、炭鉱跡を拝見するのは雄別炭鉱を入れて2回目でした。
とにかく大きな竪坑櫓。言葉が出ませんでした。
その日はたまたま竪坑の周りが一面水溜まりで、あまり近くで見学することは出来ませんでした。非常に残念です。
また、浦幌炭鉱や羽幌炭鉱の記事も拝見させていただきました。
行く勇気と装備がない私ではありますが、いずれは、その姿が自然に還ってしまわないうちに見学したいと思います。
自分が臆病で廃墟に行けない分、Kailasさんの冒険記事を読むとまるで自分が冒険してきたみたいな、夢のような気持ちになります。
他人からすると不気味な程廃墟を見るのが心地いいです。
いつも夢のような一時を、ありがとうございます。
お蕎麦屋さんは同様に古めかしい佇まいで、観光客ではなく、昼休みの背広姿のサラリーマンや、タクシーの運転手など、地元の人で混雑していました。
井戸さんも行かれたんですね。雪景色の奔別炭鉱も格別でしょう。冬だとスタッドレスタイヤ購入など、出費がかさむので、いまいち、二の足を踏んでしまいます。
僕が作業員だったら、真冬の廃炭鉱施設で一人歩いている人を見たら、やはり警戒をしてしまうかも。現場や見慣れた地元の人には、あまり理解できない対象かもしれませんね。朽ちた工業施設の味わいなどは。
もっと行っておけば良かったとか、見ておけばという、その後悔の念、すごくわかります。僕の場合も、対象物を決めて出た旅では、必要以上に見て、写真に撮るのですが、ぶらり旅や、海外バックパッカー旅行などでは、ほとんど写真を撮らず、刺激がマヒをして、イースター島まで350ドル出せば行けるのに断念をしたり、マダガスカル島も跳ねる小猿ぐらいしかいないのだろうと、フェリーに乗らなかったりと、今思えば行っとくんだったと、時折夢に見るぐらいです。その場では、気付かないものですよね。置かれている恵まれた状況、環境などが。
今まで継続をしてブログを続けたことが無かったので、井戸さんからのように内容を評価してもらったり、アクセスが段々増えるたりするなど、意外な反応にまだ慣れてませんが、これからも、こつこつと更新していきたいと思います。ありがとうございます。
僕が行ったときはもう廃線になったあとでしたが、幾春別駅があった近くだったのかなと思いました。
あと真冬に奔別炭鉱を見に行ったことがあるのですが、天気は良かったのですが、雪がかなり積もってまして、たいへんでした。
でも青空と雪と建物のカラーバランスが素晴らしかったです。
どこの会社かわからないんですが、跡地で稼働してたようで、あまり近くには行けなかったです。
あと雪捨てなのか、トラックは何台か通っていって、雪の中ひとりでこいで歩いてた僕は、不審者だと思われてたかなと。
以前は空知地方に住んでいたため、ぶらりとバスで炭鉱跡を見に行くなんてこともできたんですけどね。今思えば、もっともっと行けば良かったなと…(近くだと案外いつでも行けると思ってしまって、逆に行きそびれたりする)。
白河さんの文章好きです。もちろん写真も素晴らしいですし。
最近、めっきり廃墟から離れている僕ですが、また行きたくなるような内容です。