街中を歩いていて、ふと見入ってしまう、廃墟同然、朽ち行く寸前の、誰が住んでいるのか謎なアパート。そんな物件を、紹介していきたいと思います。
近代的な建物が並ぶ街中に、異彩を放つ、木造2階建の古びたアパート。場所は、京王線の国領駅からすぐだが、込み入った路地にあるため、他所者が運良く辿り着くには、かなりの偶然が重ならないと無理だろう。
国領駅周辺は、路線の地下化により区画整理が行われ、古い民家やお店が根こそぎ無くなってしまった。そんな状況で、かろうじて生き延びた物件が”この”アパートである。東京の抗い難い光景がここにもあった。
雨戸で閉ざされた部屋。人の住んでいる気配は無さそうに思えた。
垂れ下がるケーブル類。真夏の炎天下、クーラーの設備も無さそうで、人がいたとしたら、熱中症で死亡のケースだ。
この溝スペースをセンターとして、通常のアパート2棟分の大きさがある。
最近では見ないトタンの雨戸。
もし、このアパートが現役だとしたら、建物の老朽化からして、大した賃料は取れないだろう。駅からすぐ近くの物件ということもあり、建て替えられるのも、そう先のことではなさそうだ。
全景を撮ろうと、駐車場の奥から撮影を試みたが、後でこの行為が、ちょっとした因縁をつけられることに・・・
一番端というか、駅から近い部分に、どうやら人の気配が
しばらく撮影をしていると、自転車に乗った主婦から「あなた、さっきも後の会社で撮影をしていたでしょう」と、絡まれる。なんのことかわからなかったが、どうやら、このアパートの全体像を撮ろうと、駐車場へ入って撮影したことを、注意でもされたようだ。
街中での撮影など滅多にしないのだが、たまにやってみると、これである。北海道の廃施設などでは、一日中いても、誰一人見かけず、心置きなく自由に撮影が出来るが、都会では些細なことで、人の監視の眼があり、行動に制限がかかる。
おばさんの話をよく聞いてみると、どうやら、後方の会社の中で撮影会があり、その延長で僕がまだ写真を撮っているから、まだ終わっていないのかと、疑問に思ったようだ。
「個人の趣味でこのアパートを撮っているんです」と言っておいたが、一般の人からしたら、ただの潰れそうなアパートでしかなく、『なんでこれを・・・?』以上の感想はないだろう。理解はされていないと思うが、とにかく、妙なぬれぎぬのようなものは晴れたし、絡まれてもいなかったようなので、安堵する。
魅惑的な廃アパートの反対側へと
都会に、まだこんなのがあるんですね・・・。奥の2階は蔦で埋まってます。
唯一ひと気のある部屋の下には、真新しいプロパンガスが。
廊下が通っていて、これは非常口になるんでしょうか。ドアはボロボロ。
エントランスです。やはり、この巨大なアパートに、たったひとりだけ、籠城中のよう。それにしても、何時の時代の物だろうか。
ダークサイドへと、誘われそうな木製階段。
半開きのドア。一部屋を残し、廃墟化が進行中・・・・・・
見応えのあった思わぬ収穫の廃アパート。
世の限りある限界廃アパートが、取り壊されるその前に、更なる物件へと、触手を伸ばして行かねばと、誓った、真夏の熱い日の昼下がり
終わり
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コメント
コメント一覧 (4)
安さん
>サッシやドアがアルミであると60年代。それ以前は〜50年代はアルミサッシやドアは存在せず、木製だったり
なるほど、細かい目配せをすれば、時代が見えてくるものなんですね。軍艦島なんかは先進的でしたが、ベランダの手すりという手すりは木製でした。塩害のためだそうです。それは例外として、素材で時代性を読み取れることは可能でしょう。
>シルバーアルミだった時代から70年代には、ブロンズ調のカラーを纏ったブラウンのアルミドアや引き戸、サッシ
そんな変遷があるとは。アルミ製と一緒くたに語れないものなんですね。
>バブル期は外壁が石綿サイディングと石綿葺き屋根に
石綿ってバブル期もまだ使用されていたのですか。問題が指摘されたのは随分前ですよね。マスクが必須になりそうです。
>特に風呂釜のカラーに、バブル崩壊前後で違いが有ります。
経済が上向きだと、風呂釜のカラーまで変わってきますか。注文建築も多かっただろうし、個性が花みたいなところがありました。就職活動の時のスーツも個性があって華やか。風呂釜さえ、影響を受けるんですね。
>特にバブル前後の建物は、非常にわかりやすい状態だったりします。
夢のようなバブルの時代。テレビの内容も豪華だったような。これからも自分の足で、近代の目まぐるしい様変わりを、つぶさに観察していきたいと思います。風呂釜時代考察、実に参考になりました。
安さん
無名の町の建築家の創造物。視点が同じなのか、胸に刺さるものがあります。
>特にエントランスのノスタルジックな雰囲気。
大量生産されたものの中の一つなのでしょうけど、周囲に取り残されて、生き残って、際立ちを見せている。自分の町の原風景を投影しているのかもしれませんね。
>住んでいる唯一の住人は、元大家さんでしょうか?
唯一の住人の存在は謎です。寝たきり老人かもしれません。大概はコメント欄で語ってくれる人がいるものなのですが、ここはレア過ぎるのでしょうか。
>付近を監視する監視員役のおばちゃんが必ずいるんですよね(笑)
子供を叱ってくれるおっさん、町の風紀を勝手に取り締まるおばさん、今思えば、円滑なコミュニティーの共存に激しく寄与してくれていたのかもしれません。鳩に餌やりおばさんを注意したり。
>少なくとも、付近の治安向上という結果にはプラスにはなっていなさそうです。
セコムより役立っていたのかも。しかも無料ですから。消えていくおせっかいおばさん、生き辛い世の中になってしまいました。
例えば、サッシやドアがアルミであると60年代。それ以前は〜50年代はアルミサッシやドアは存在せず、木製だったり、更にそれ以前はこの物件はアパートなので話が反れますが、
住宅自体が富裕層の所有物だった時代なので意匠性に凝った造りだったりします。
アルミサッシの時代以後は剥き出しのシルバーアルミだった時代から70年代には、ブロンズ調のカラーを纏ったブラウンのアルミドアや引き戸、サッシが登場した時代です。
セキュリティ意識の向上で小窓にアルミ格子のオプションが付いたサッシが一般に広く浸透した80年代。80年代後半〜90年代前半のバブル期は外壁が石綿サイディングと石綿葺き屋根に(この年代の建物は外壁も屋根も石綿原料に包まれていて、塗装等で管理されている場合は無害ですが、外壁や屋根が劣化してグズグズと崩れている場合最も危険で近付かないほうが無難です)
更にバブル期物件での細かい年代推定は残留物の他に、中に入れるような物件では、内装、特に風呂釜のカラーに、バブル崩壊前後で違いが有ります。バブル崩壊前には、派手な原色&濃色の浴槽が大流行して、ワインレッドだったり
モスグリーンだったり、水回りや手付にゴールドや深みの有るメッキが使われています。壁もタイル壁で豪華です。
バブル崩壊後は各メーカーコストカットが影響して、浴槽は淡色の流行で、タイル壁に代わり浴室パネルでユニット形式になっていたりします。メッキも安価で処理され廃墟では剥げて艶も無く、ステンレスのはずなのに腐食し、見るも無残に薄汚れていたり…
特にバブル前後の建物は、非常にわかりやすい状態だったりします。
これは味わい深いアパートですね。
この時代の「意匠になんの中身の無い」普遍的なくたびれ感溢れた建物。1950〜70年代が現役だった木造建築物に魅力を感じるのは僕のような変わり者くらいでしょう。(笑)
特にエントランスのノスタルジックな雰囲気。
普通に見たら、この時代の建物はデザイン的にも建物が現役の時代から、何のまとまりもなく拘りも無かった量産時代の、真新しいだけのただのボロだった記憶が有ります。
この雰囲気に、時代が流れて、醸し出すノスタルジックな加工ではないエイジング。
住んでいる唯一の住人は、元大家さんでしょうか?
こういった密集地では、陰で逐一、付近を監視する監視員役のおばちゃんが必ずいるんですよね(笑)
こういったおばちゃんはどこでも例外無く、
悪い言い方をすればお節介なのか、セキュリティに一役担っているととるか…。微妙なところですが、
少なくとも、付近の治安向上という結果にはプラスにはなっていなさそうです。