用意された道を、敢えて拒み、多角的な視点から廃墟『山楽荘』へ深くえぐり込み、こうなってしまった”理由”を解き明かすべく、険しい道程を好んで進み行く”廃墟探索者”
このタバコの自販機が破壊され、中身を物色されたのは、いつ頃のことだろうか。その侵入者達も今はいい大人になっていて、子供が何人かいたりして、当り障りのない穏やかな生活を送っているに違いない。
かく言う私も、幼少の頃、記憶ではこれと同型の機種を、OKストアの前で弄りまわしていたら、いつの間にか大人がお金を入れていて、その人が意図しない”たばこの銘柄”が出てきてしまい、文句を言われる前に猛ダッシュで逃げて来た思い出がある。今となってみれば、どうってことのない話だが、全くの他人に無駄な支出をさせてしまった→使い込み→横領・・・ と、幼くて純真な子供が、悪い方悪い方へと罪の意識を増幅させてしまい、未だにふとした瞬間に時折記憶がこみ上げてくる、苦い思い出である。
そのピュアだった子供が何時しか、津軽海峡を渡り、岩見沢くんだりまでやって来て、廃墟となった得体のしれぬ薬膳旅館の残骸を漁り、幼少の頃よりのトラウマであった、自販機と再会・対面をした。必然ではないと思うが、しばし、立ち尽くして我を振り返える
水分を吸い込まないため、表面に残った水滴が気化もせず菌が繁殖し、強烈な臭いを撒き散らす、入浴施設ではお馴染みのビニール製スリッパ。衣装ケースの蓋もある。行くべき所へ示唆しているかのような配置具合。
はやる気持ちを抑えて、冷静になり見つめなおすと、視界に入ってきた、階段。どうやら階上へ行けるらしい。
いつ崩れ落ちてもおかしくない階段を、薄氷を踏む思いで登って行く。もし落下でもして木片が頭部に突き刺さり死亡でもしたら、フロアにて横たわった死体が発見されるのは、何週間後だろうか。
階段はグラグラ。とにかく不安定な状態から、隣接する崩壊した建物を臨む。
いざ、2階へと
宴会場らしい。天井がかなり近くて圧迫感がある。ロフト宴会場とでも言うべきか。金屏風まで行ってみたいが、これは無理だろう。骨折覚悟で行く理由も無いので、2階散策は断念する。
1階に降りて見つけたのは、山楽荘アイデンティティーを感じさせる三角シェイプのドア。こだわりを持つオーナーは、名前や建物だけではなく、ドアにまでその統一された思想や哲学、コンセプトを盛り込んだようだ。いまいち残念なのは、ドア自体は四角いままなので、音や冷気は筒抜けで実用的ではないところ。
廃墟ドライブイン『丸豊』では、看板から椅子、電飾塔、食器、芳香剤に至るまで、サークルで統一されていたのを、見事に混沌とした残留物より見つけ出すことに成功。ともすれば、誰にも気付かれることなく、朽ちて葬り去られたに違いない、無名の人達が残していった、イデオロギー的痕跡。廃墟散策では、このように、建物や設備などに込められたコンセプトなどを今更ながらに掘り起こすことができる、意義ある発見とたくさん出会えるのがうれしい。
廃墟、『ドライブイン丸豊』の闇
靴のロッカー横にあった小さめの自販機。入浴施設付近にあるこの程度の大きさの自販機といったら、石鹸・シャンプーの自動販売機だろうと、推測。
これはもう、立派なホテルのカウンター。数十年前、ここに立っていた人は、遠くもない未来に、アジア人で溢れる北海道を想像しただろうか。
押し売りお断りの看板。バブル期には、パキスタン人がいきなり飛び込みで入って来て、カーペットを売り込むという商売があって、かなりの儲けがあったそうだ。実際、そうやって美容室に来たパキスタン人と知り合いになり、結婚をして、ペシャワールの実家に嫁いだ大阪生まれの女性と、現地で会ったことがある。
由仁町お墨付き、食品衛生指導済の看板。
健康診断も受けていて、全てにおいてぬかりがないしっかりとした経営状態だった。
オーナーの心象風景でも表現したのか、水墨画のようなタッチで描かれた山。この頃はまだ従業員にも余裕があったにことをうかがわせる。
健全な経営をする中から起きた突発的な惨劇。ようやく、遠回りをしてやって来た。お湯のない湯船に、”ザブン”と、浸かってみることにする
つづく…
「浴場の結界線」 死の浴場、薬膳旅館『山楽荘』.5
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コメント
コメント一覧 (2)
この断片的な表示では僕の経験からして、押し売りぐらいしか思い浮かびませんでした。ツケをやんわり断るために、このような遠回しの表現の看板がかつてはいろいろな店に掲示されていたんですね。
大変参考になります。ありがとうございました。
「押し売りお断り」の看板(掲示板)ではありません。
『現金仕入れつき掛け売りお断り』の看板(掲示板)です。
昔はどこの店でもありました。
「次回来た時に払うからそれまでツケておけ」ってヤツがいたんです。
で、食い逃げをする・・・・
ですから最初から「現金で払え」と表示していたんですよ。