山楽荘 鏡
 自分の頭頂部を、力の限りめり込ませんばかりにと鏡へと叩き込んだのか。振り返り、あの聖人のような完璧主義者が、邪心に満ちた不敵な笑いでこちらを窺う。

 取り敢えず、ざっと見た感じでは、殺人現場によくあるような現場検証の跡、痕跡が見られないのは、確認できた。



山楽荘 入り口装飾
 建物や内装の造形を見ると、統一されたかのように鋭角的なデザインでまとめられているが、唯一、角が取れていて円いのが、付属敷設に配置された円形のデザイン窓。

 得体の知れない『薬膳旅館』の名前に、不安を募らせていた子供も、遊園地のアトラクション風の丸窓を見て、安堵を覚え笑みを浮かべたに違いない。



山楽荘 春名館
 領収書。表記は山楽荘ではなく『春名館』。よく考えたら、当時、これを持ち出されていたら、脱税に利用されていた可能性もある。まともな会社だったら一切合切処理をしてから撤退をするものだ。社員が朝出社したら、オーナーが雲隠れをしての、夜逃げ廃業パターンだったのだろうか。



山楽荘 電話帳
 風と湿気と冷気と、その他、あらゆる自然条件から耐えて凌いだ、電話番号のメモ。ハイヤーを『ハイヤ』と記していることから、これを作成した人は、当時としてもかなりご高齢の方だったろう。

 おじいさん、数十年後の未来には、腕の中で世界中の文献、記録、写真、などが、自由に引き出して見られるようになりますよ。ただ、未だにリニアモーターカーは実用化されていないどころか、ドイツの技術ながら中国に先を越され、電気自動車は北海道では使い物になりません。



山楽荘 ペンギン
 今までの廃墟散策でも見た記憶がある、ペンギン型芳香剤。毛細血管現象を利用して紙製の蛇腹に溶剤が染み、芳しい匂いを発散する。キャラ的に、においはクール系か。



山楽荘 ジャイブ
 小林稔侍が叫ぶ「粗びきネルドリップ方式」のCMで一世を風靡した、キリン『ジャイブ』。発売が1987年なので、時系列は大体あっているようだ。



山楽荘 定休日
 浴場の定休日は水曜日。北海道の商習慣では、銭湯などは水曜日が休みなのだろうか。少なくとも、死亡事件があったのは水曜日以外の日。水曜日だとしたら、それは関係者ということになってくる。



山楽荘 柱
 ローマの公衆浴場を真似たのか、真似られたのかは、言わずもがな。避けるように迂回していた浴場エリアにたどり着く。



山楽荘 長寿漢方
 薬膳旅館とはなんたるかを、証明するようなプラ看板を発見する。『長寿漢方薬湯(神仙浴)』。今も昔も、お年寄りは騙されやすい。効きもしない自然食品や、大手のブランドの名を最大限利用した如何わしい錠剤を、2重価格を示され「安い、安い」と買ってしまうのは何故なのか。聞いたことも無い成分を引っ張りだされて来て、適当なCGを鵜呑みにしてしまい、見事洗脳されてしまう。

 知らない訪問客には出ずに対応せず、知らない電話番号は無視をする。それが、詐欺から身を守る第一歩です。次に、既得権益を守るため、互助会組織のようになり同じような芸人ばかりが出演する民放の番組を控える。映画やドラマはNetflixのようなネット放送で十分。これで、ノコギリヤシのサプリや、全く吸い込まない中国製の掃除機などは買わなくなるでしょう。



山楽荘 浴槽
 僕も実際に真ん中へ腰を落ち着け、”エアー浴”をしてみる。関東圏でこれをやったら「何してんすか?」と、後から来た侵入者に小馬鹿にされそうだが、ここは北海道。体育座りで15分浸かっていても、山楽荘の広大な敷地には僕一人。なんなら全裸でも自由にお湯の無い風呂に体を委ねていられる。



山楽荘 石垣
 風呂というよりはプール並の深さ。温水プールのような場所か。



山楽荘 境目
 男性用と女性用を仕切る壁。向こう側のピンクのタイルが女性用だろう。こんな廃墟の残骸でも、女風呂に潜入中ということで、なぜか罪悪感がわいてくる。



山楽荘 すべり台
 年端もいかない女児が滑ったに違いないすべり台。外界へと実に開放的な構造になっているが、セキュリティとかは問題なかったのだろうか。



山楽荘 Y字
 不自然に奇妙な形。これを女性性器の象徴としてデザインされたと見るのは、考えすぎか。



山楽荘 注意書き
 言わんとしていることは、塩分が含まれているので、石鹸の泡は立ちませんよということ。

 手抜き工事で海水入りの水しか出ない、あの頃の、伊豆の海の家の出の悪いシャワーを思い出す。ところで、現在も夏の伊豆に人々は海水浴になんか行くのだろうか。自分が全く訪れる機会が無いのでそう思うが、下手すれば海外のパック旅行の方が安かったりするので、関東圏から中途半端な距離にある観光地の存在意義、現状に強い不安をおぼえる。

 円安貧困化少子化日本が観光地に及ぼす影響までも考察する”廃墟散策者”が、これより、束の間、童心に戻り、子供用すべり台を思う存分堪能し、その他、端から端まで入浴施設を楽しみつつも、事件の痕跡を求め、注意深く最終徹底検証を敢行する   



つづく…

「覆われた蓋」 死の浴場、薬膳旅館『山楽荘』.6

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