霞ケ丘団地 公園入口
 2020年の東京オリンピック開催に伴い、代々木にある国立競技場は建て替えになり、そのすぐ横の公園にはパラリンピックの会場が新たに建てられる。この公園は週末になると、国内でも屈指の規模を誇るフリーマーケットの会場としても使用されていた場所。

 まだネットがそんなに普及していない頃、僕はこの公園のフリマへ足繁く通っていた。 任天堂のゲームウォッチが100円で売っていたり、朝一で行くとかなりのお宝がせしめられたからだ。

 時には戦利品で荷物が山盛りになることがあるので、自宅からは車やバイクで行くのだが、車の場合、駐車をするのは公園横の道と決まっていて、警察は朝9時までなら”黙認状態 ”でいてくれていた。

 駐車をしている道を挟んだ向こう側に 、廃墟みたいな団地があるなと、当時は深くも考えず、ただ眺めていたりした。

 フリマの場所でもあった公園にパラリンピックの会場が出来ると、国立競技場ともあわせて、大勢の人達の”たまり場”がなくなるというのが、東京都の言い分らしい。 

 その新たな溜まり場となるのが、2月1日より解体工事の始まる「霧が丘アパート」。

 はじめは板ぶき屋根の長屋だったが、1964年の東京オリンピックに伴い、コンクリート製の団地に建て替えられた。年月を経て老朽化をし、現在は昭和遺産ともいえるような、瓦解一歩手前の様相を呈している朽ちかけの建物群。

 取り壊される寸前に、記憶にとどめておこうと、早速、代々木へと向かうことにした。下車駅はJRの千駄ヶ谷駅。

 ただ、報道によれば、解体工事が始まるのが2月の1日。初日だと報道陣がいたりして、気兼ね無く撮れる可能性が無い。

<新国立>建設で退去期限…2世帯、転居先決まらず


 ならば、一日ずらせばよかろうと、次の日に行ってみたものの    相当やっかいな目にあうこととなる。



霞ケ丘団地 リス
 霧が丘アパート併設の公園にいたリス。西新宿の「ひろゆきハウス」付近にあった”奇妙な間”にも同様の物があったが、あそこのは子供が触りまくって角が取れて変形してしまったのか、ミュウツーにしか見えなかった。これなら、比較記憶補完もすることでリスだとなんとか断定できる。

西新宿のひろゆきハウス4 「奇妙な間」


 
  リスが見つめる先の道の向こうがパラリンピック会場予定地。もう高い壁で囲まれていて工事中だった。



霞ケ丘団地 ブランコ
 ダイナマイトで一気に破壊するわけでもなく、まだ、所々をバリケードで囲んだり、数人の作業員が、階段入口を封鎖したりしていた。
 
 昭和40年頃は賑わったに違いない公園、ブランコ、その背後の古寂びたコンクリ団地が物悲しい。



霞ケ丘団地 すべり台
 横にあった比較的新し目のすべり台。壊される優先順位筆頭の予感。

 これを撮ったあたりから、複数の中年男性が遠目に僕を見ているような、まとわり付いているような、とにかく、やたらと横を通り過ぎて行く。画面右端の男性他。



霞ケ丘団地 車
 4号棟付近。治安のあまりよくない地域の公営団地などには、よく不法放置車両があったりする。先に見えるは、もしや・・・



霞ケ丘団地 車リア
 アメ車のようだが   



霞ケ丘団地 車フロント
 「クライスラー ストラトス」。ただでさえ日本では不人気のアメ車。中でもマイナーな車種なので中古の引き取り需要も無く、部外者が深夜にやって来て、乗り捨てていったに違いない。



霞ケ丘団地 車運転席
 運転席はゴミ入れ状態。



霞ケ丘団地 防犯
 住民は見かけない。が、生活臭のする掲示板。つい最近まで活用されていた様子。また、中年男性がやって来る。毛玉のびっしりついたジャージ姿。報道の内容を鑑みても、住人ではないだろう。僕に用があるわけでもなく、かといって、関心が無いわけでもなく、入れ替わり立ち替わり、複数の人間が監視でもしているかのように通り過ぎていく。



霞ケ丘団地 ポスト
 映画「クロユリ団地」の舞台になった仙川団地もこのような感じで、ポストというポストがガムテで封印されていた。ここ、霧が丘アパートはまだわかるが、都会の団地の深刻な限界集落化で、どこもこのような状態のようだ。

本物の『クロユリ団地』に行ってきた



霞ケ丘団地 案内図
 これが取り外される日はもう、すぐそこ。



霞ケ丘団地 軒下
 荒涼としたベランダ下。昭和の団地の風景が好きで、遠回りしてでも敷地内を見て回ったりすることがあるが、ここまで乱れているのはちょっと無い。前述の仙川団地などは、特筆に値するほど整理整頓されていた。

 このカットを撮り終えた後、高齢の女性より、罵声を浴びる。大声でまくし立てているので、何を叫んでいるのかわからない。僕の後ろに誰かがいてそちらへ声をかけているのかと振り向くが、違うようだ。

 近寄って言い分を聞いてみる。怒声の高齢女性の傍らには、先程から僕につきまとっていたうちの一人、中年男性もいた。寝癖があり皺だらけのジャージに、ごつい一眼レフカメラをぶら下げている。

 「動物園じゃないんだから撮影はやめてくれ」とか「まだ人が大勢住んでいるんだから勝手なことをするな」といったような主旨のことを女性はがなり立てていたようだ。

「2世帯だけがまだ残っているとかいないとか、2月1日を過ぎたようですが、まだいるんですか?」

と聞くと、新聞の報道は全て嘘でまだかなりの住人が残っていて、追いだそうとする行政のやり方に困惑しているそうだ。具体的に何人ぐらい残っているのか聞いてみたが、「たくさん」というだけで、詳細な人数は教えてくれなかった。

 大体の輪郭が読めて来たので「都は強引に行くあての無い人を、工事などの既成事実を積み上げていって、追いだそうとしているんですね」と踏み出して言うと、呼応するようにその高齢女性はとめどもなく、「石原が、猪瀬が、舛添が」と、憎悪表現をもって、歴代の都知事を批判しだした。

 横にいる寝癖の中年男性はカメラを持っているし、年齢的に住人でもなさそうなので、「取材かなんかですか?」と聞いてみた。サブカル系の雑誌記者がこの女性を面白がって記事のネタにでもするのだろうかと思ったからだ。

「住人です!」とのこと。この会話中にもカメラをぶら下げたアマチュアカメラマンらしき人が何人かうろついていた。時には男女混合の騒がしい団体撮影者達もいた。これなら高齢女性の怒りもわからなくもない。

「東京都のホームページから「住人が憤慨している」とクレームを出しておきます。当事者では相手にしてくれないかもしれないけど、僕は部外者だから効果はあるかもしれませんよ」と、社交辞令的なセリフを残すことで、その二人から、なんとか開放される。



霞ケ丘団地 ゴミ
 高齢女性や複数の自警団のような見回り中年男性達の監視を掻い潜り、撮影を続行する。この場は公共の場で、僕は都民である。ここは本来、もう全ての住人が立ち退いていなければならない場所であり、逸脱をしているのは、どちらかといえば向こうの方ではないか    という見方もある。

 布団には廃棄物処理のシールは無し。そのまま投棄して次の住処へ行ってしまったようだ。こんなところに、人間本来の姿が出てしまう。



霞ケ丘団地 紋章
 洗濯機も、この紋章の付いた飾りにもシールは無し。この棟の人間関係は極めて荒んでいたろうと、推測する。良好だったならば、後に残る人達に迷惑のかかるような不法投棄などは、決してしないだろう。



霞ケ丘団地 外苑マーケット看板
 昨年末で既に営業を終えた外苑マーケット。



霞ケ丘団地 外苑マーケット建物
 階上は住居棟になっていた。



霞ケ丘団地 外苑マーケット全景
 徒歩1分で全てが済む環境は、ご老人にとって大変有用だったに違いない。



霞ケ丘団地 外苑マーケット表
 最後まで営業をしていたのは青果店だけ。最盛期には時計まで売っていたマーケット。



霞ケ丘団地 給水塔
 団地のシンボル、給水塔。ここで、またもや見回り隊の中年男性の巡回行動と遭遇。それほど神経を尖らせるようなことなのか。



霞ケ丘団地 給水塔アップ
 これより、廃業をした外苑マーケットの裏手より、昭和の置き土産を発掘。階上の外苑マーケット回廊の独房のような佇まいを堪能。私的に好物の廃スクーター数台、高齢女性に是非贈りたい昭和の蔵書を発見するなど、更に「霧が丘アパート」の深層へと踏み込んで行く   



つづく…

「高齢女性との共闘」 五輪解体、期限直後の『霞ケ丘アパート』へ行って来た.2

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