4階
 更に上へと    4階に来た。



ホテルニュージャパン 4階避難経路
 4階の避難経路図。訪問者達の足跡が残されている。非常階段は建物の両端にあるということが確認できた。もし万が一、この瞬間に火事になったとしたら    ということもあながち無いとも言い切れないのがこの廃墟「ホテルニュージャパン」。

 しっかりと避難経路を記憶しておくことにする。

 ちなみに、僕がバイトをしていたホテルニューオータニの非常階段脇には、救命用の担架が備えられていたが、バイト仲間の学生の青年の一人は、担当の部屋の清掃が終了すると、担架をベッド代わりにしてひと眠りするのをルーチンとしていた。担架は死角に位置しているし、お客はまず非常階段など普段使用しないから、うたた寝をするのには好都合な場所なのだ。

 ある日、来るはずの無い時間に熟練バイトのおばさんが、低層階の清掃を終え、スイートルームへ見回りにやって来てしまった。遠くから「キャ~ッ!」と野太い女性の悲鳴が聞こえたので駆けつけると、怒り気味のおばさんが、救命用担架で寝ていたバイト仲間を、その場からひきずりだしていた。熟練バイトのおばさんは「数十年やっているけど、ここで寝たバイトの人ははじめて。この担架はお客さんの死体を運んだこともあるのに」と、怯えたようでもあった。

その後、一週間ほどして、彼の姿を見なくなったので、どうしたのかとおばさんに尋ねたところ、「間接的に辞めてもらった」ということだった。事のあった直後に渋谷にあったボーリング場で、好成績を出して屈託なく喜ぶ顔を見たばっかりだったのに、熟練バイトのおばさんとはいえ、かなりの実権を握っているんだなと、バイト仲間達にも改めて周知され、その後終了まで、無茶な行動をとる人間(僕を含め)などいなく、皆、やるべきことを粛々とこなしていた。

 バイトを終えるにあたり、リネン室よりニューオータニのネーム入り浴衣を二つほど失敬。アメリカのロサンゼルスでホームステイをした時に、巨漢アメリカ人夫婦へお土産として進呈した。おじさんは全くの無関心だったが、おばさんの方はたいそう気に入り、毎晩、バスローブ代わりとしてニューオータニの浴衣を着こなしていた。

 そんな、ホテルとはなにかと縁深い、現在は北の廃墟探索に勤しむ僕が、当時の経験をいかしつつ、隅々までをつぶさに見回る、今回のホテルニュージャパン徹底検証   



ホテルニュージャパン 4階廊下
 荒れてはいるものの、まだ、火災跡のような痕跡は見られない。



ホテルニュージャパン 自販機4階
 ここでも同様の自販機が。あと数年このホテルが頑張っていたら、有料放送用プリペイドカード自販機が、その横にあったかもしれない。



ホテルニュージャパン 設備
 電源設備かなんかの部屋だろうか。



ホテルニュージャパン 暗がり
 ビジネスホテルらしく、シングルの部屋ばかりが並ぶ。



ホテルニュージャパン マッチ
 今となっては貴重な資料ともいうべき、ホテルのマッチを発見。

 もしや、上層階にあるという火災の惨劇を作り出した原因は、この、マッチ?
 擦過痕が幾重にも重ねられているのは注目に値する。



ホテルニュージャパン マッチ裏
 マッチ裏の表記は、「食事処 志園」とある。1階にあった食事スペースのものだろうか。



ホテルニュージャパン 残骸
 前衛芸術のように微妙な均衡をかろうじて保ちながらもしなだれている家具類。



ホテルニュージャパン ゴール
 窓という窓が破られているからか、老朽化している建物の強度の問題か、実は、この瞬間、窓方向へと、その後方へと、ホテルニュージャパン全体が、グ~ラ・グ~ラと大きく、たゆたうように揺れている。

風によっては震度5はあるだろうか。決して大げさではなく、大の大人が怯えるくらいの揺れがある。ただ、振動というよりは大きな振幅のある波間のようなうねり。

 窓より見下ろすと、付近に見えるのはコンビニとガソリンスタンドぐらい。どちらも目新しい。例によって不審者通報を避けるため、窓付近に堂々と近寄ることはしていない。



ホテルニュージャパン マットレス
 いいおっさんが、大きな揺れに足元がすくみ萎縮をし、市民よりの視線を避け半身で窓より外界下を何度も女々しく、誰か登ってこないかと、確認をする。大型廃墟施設「ホテルニュージャパン」に現在たったひとりなのを改めて認識させられ寂しくもなり、「何のために上へと行かねば・・・」と心が折れそうになりかける   

 これまでの期待とは違う、胸騒ぎのする次の階へと、進みだす。



つづく…

「炭焼き臭」 廃墟、死灰の『ホテルニュージャパン』.5