
街中の廃アパートを漁るという、意欲的な記事カテゴリーをせっかく設けたものの、これが意外と捗らない。主旨としては、他のブログやネット等、メディアに紹介されていないオリジナル廃物件を自分の足で見つけ出して、差別化を図りたいということ。
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街角、廃アパート漁り~東京
自分の行動範囲内で、遠回りでもして普段通らない道でも巡ってみればそこらにあるだろう、と軽く考えていたけれど、どれも微妙に新しかったり、よくみたら一軒家だったりで、わざわざ記事にするほどでもない案件ばかり。
近場にないなら、下町まで行って徘徊でもして見つけ出せばとも思ったが、縁もゆかりもない土地で無駄にぶらぶらしても、行き当たりばったりで途方に暮れ、結局ありつけずに時間の浪費になる可能性が大きい。
そんな中、かねてから目をつけていたあるスーパー。1階が営業中のスーパーで2階がアパートになっている。建物全体の老朽化が著しく、特にアパート部分は崩れていたりしていて、住人も居ず廃墟同然の状態。店部分も同様に崩壊気味で、営業をしているのが奇跡といってもいいくらい。
Xデーも近づいているなと、時折その店の前を通りながらうきうき心待ちにしていたところ、遂に、シャッターが閉ざされて一定期間が過ぎたのを、この目で確認する。
あわよくば、2階部分の封印された廃アパート内部へと・・・ 心をときめかしつつ

この「みゆきストアー」兼、「みゆき荘」。場所は東京の調布市。京王線の布田駅から数十分の奥まった住宅街の中にある。新規客が飛び込みで入れるようなたたずまいでも場所でもなく、昔からのなじみ客でなんとか営業を続けていたに違いない。涼し気な顔のお婆さんは実は、みゆきストアーがやっていると思って来たものの、「廃業してしまったのかい」と至極残念無念で、うなだれながらこの先の西友まで更にコロコロを転がしながら、力を振りしぼって、よろよろと歩いて行った・・・ のかも。

側面へとまわってみる。2階には違法建築と思われる継ぎ足しの部屋。錆びて塗料が剥離したコカコーラの看板。窓の並びから察するに、もう数十年は住人達はいないのではないか。周囲はそこそこの小奇麗な一軒家が並ぶ住宅街。このアパートの存在は異質としか言いようがない。僕の背後を通るカップルなども「窓が全部あいたままだ」なんて会話をしている。

入ることができるのは、猫かハトぐらいの部屋。

極左勢力に乗っ取られた掲示板。一部屋だけかろうじてサッシへと改修をしているが、まさか、この有様で、人が住んでいるというのだろうか。以前訪れた森の中にあった完全なる廃アパートでも、一軒だけ集合ポストに表札を掲げていた部屋があり、占有屋でも住んでいるのかと冷や汗をかいたことがあったが、さて
都会の森に埋もれた廃アパート

雰囲気だけは古民家風。

白いのはコカ・コーラliteだったからではないはず。

個人スーパーでここまでの品揃えのお店は、もう役目を終えたのでしょうね。

みゆきさんが仕切っていたのだろうけど、ご危篤とかでなければと案ずる、買い物をするどころか、会ったことも話したことも見たこともない、一介の廃墟探索者

今にも崩れ落ちそうなくすんだモルタルの壁の朽ちかけ具合が、「入ってみろよ」と誘惑を醸成しているような、抗えないような・・・

実は、少し離れた並びにもう一軒、細々と営業中の八百屋さんがある。この札はそこのものと思われる。こんな細い道の住宅街になぜ2軒もお店が存在するのかは謎だが、廃業をしたスーパー兼アパートを撮影するにあたり、その八百屋さんの存在は非常にやっかいである。八百屋も負けず劣らずの店構えなので、それを背にしてみゆき荘を撮るのは非常に気まずい。お店の形態上、道路にはみ出して野菜などを並べ、店主は店先に出ずっぱりだ。それらを背にして廃墟アパートをパシパシ撮影をする強靭なメンタルが、やっぱり僕にはない。「そんなの撮ってどうすんの、お兄さん」なんて声掛けをされたら、足元は確実にすくんで動けなくなる。
数日間この八百屋前を通り調査をしたところ、定休日は日曜だけということが判明。よって本日は、気兼ねなく撮影のできる日曜日、ということになる。

先日、ただのインフルエンザで入院したものの、すわ脳卒中だとCNNやBBCにも号外を流された、オノ・ヨーコさん、風のご婦人が通過中。

頭上の追加違法建築部屋はおそらく、巣だった子供たちから開放され身軽になったみゆきさん夫婦の終の住処であったと推測。

これをみて確信する。みゆきストアーはやはり完全廃業をしたのだと。蛇口の取っ手が外されている。未来永劫、この場所に於いて、水を使用することはもはやない、ということを意味しているのではないだろうか。
日曜の住宅街ということで、思いのほか人通りがなく、「何やってんのあの人」といった蔑みの市民の目も極力抑えることができているということもあり、覚悟を決めた僕は、いよいよ、昭和の塵芥でみだりに乱れた店建物裏庭への探索を開始。そして、廃墟と化した2階アパート入口へと続く、錆びた鉄パイプの階段を、強度を確かめつつ、登っていく。
つづく…
「未来の裏庭」 廃アパート・廃ストアー 『みゆき』、拘り探索.2
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コメント
コメント一覧 (2)
muさん
どうも、はじめまして。
住宅街で廃墟の店構えで頑張っていたみゆきストアー、いつしか更地になっていました。いざ無くなると、喪失感は大きいですね。ご近所にあったならこじんまりして何でも揃う優良店だったかもしれないですね。
>3つの幸せを祈って名付けたんだそうです(三幸)。
なんか、結婚式の定番スピーチ「三つの袋」みたいな。muさんに教えてもらえなければ、一生知り得なかった豆どころじゃない知識かな。。
>今となっては永遠の謎です。
心のどこかにかえって引っかかって、ずっとみゆきストアーのことを忘れないでいそうです。
>当時からアパートはおそらく誰も住んでいませんでしたが
10年前でそうだったんですか。まぁ、見た感じ居住スペースは店以上に荒廃が進んでました。
>お店はそれなりにお客さんも入っていました。
あの辺、後楽園及びマルエツまではちょっと距離がありますからね。
>こんなきっかけをくれたカイラスさんに感謝です。
こちらこそ、ブログをある程度続けているとこんな話も聞けるもんだなと、驚くような良かったような。ことらこそどうもありがとうございました。
みゆきストアー、つぶれてしまったんですね。
10年ほど前、当時私は大学生でこの近所に住んでおり、よく利用していました。
みゆきストアーは実はみゆきさんが経営していたお店ではないのです。
3つの幸せを祈って名付けたんだそうです(三幸)。
1、お客の幸せ
2、お店の幸せ
3、??の幸せ
なんでしょうね(笑)
3つめは当時お店の人も忘れてしまっていました。
今となっては永遠の謎です。
当時からアパートはおそらく誰も住んでいませんでしたが、
お店はそれなりにお客さんも入っていました。
割高ではあったものの、肉も野菜も新鮮で美味しかったです。
懐かしいなぁ。色々思い出してきてしまいました。
こんなきっかけをくれたカイラスさんに感謝です。