ゴミ屋敷 横
 ヒストリーチャンネルで「お宝ピッカーズ」という番組がある。アメリカの地方都市のアンティークショップで働く男が2人が、トラックを運転して、飛び込みで個人宅に押しかける。家の中や倉庫、庭などに転がっている、ともすればゴミにしかみえないような品々の中から、彼等の琴線に触れた物(ブツ)をピックアップし、査定をして、買い取るという内容のリアリティー番組。

 個人宅といっても番組に出てくるのは、田舎に住む広大な敷地を所有する農家の人達などだ。敷地内にトラックのコンテナを何十台も設置し、その中へ拾ったりした廃品をごっそり詰め込んでいる人や、東京ドーム数個分のスペースがあるような庭に、スクラップ同然の車やバイク、自転車などの本体からハンドル、ボルトに至るまで、ありとあらゆる物を野晒し状態で放置していたりする人もいる。

 アメリカらしいスケールの大きい人になると、古くなった銀行やドラッグストアの建物をそのまま自分の土地へ持って来て街を作る。それぞれの建物に分野ごとのコレクションを並べて、私設ミュージアムにしたり、ひとり悦に浸ったりする。趣味の街を自前で作るのは、一人や二人のレアケースではなく、かなりの頻度で似たような人達が次から次へと毎週のように紹介されている。アメリカ人の物を決して無駄にしない節約の精神には本当に頭が下がるし、収集家の裾野の広さには今更ながら驚嘆をする。

 多少のアンティーク趣味がある僕からしても、ゴミにしか見えないような物にコレクター市場が存在していて意外な価値があったり、それに伴う無駄なウンチクを吸収できるのが、この番組の面白いところだ。

 ただ、番組で毎週紹介さをれる人々は、まさしく、アメリカ版ゴミ屋敷主人である。アメリカだと物を大事にする倹約家兼収集家なのに、それがここ日本だと、犯罪者に等しい、ゴミ屋敷主人として、地域から糾弾され村八分にされてしまう。

 空き家対策特別措置法により、瓦解した空き家を修繕、もしくは解体へと積極的に、行政側が家主へと働きかけられるような、法的環境が整えられつつある。

 ゴミ屋敷も同様である。アメリカのように広い土地でなら家主の思いのままだが、東京のように狭小な区画に於いては、1mmのはみ出しも許されない。息苦しいまでの衆人環視社会では、物を最大限にいたわっているだろう”ゴミ屋敷主人”に、安息の地は無いも同然なのだ。

 空き家同様、条例により行政が介入しやすくなったゴミ屋敷問題。

 歴史的な建造物でもある大規模レトロ団地が、老朽化を理由に解体が決定。住民が立ち退きを迫られたが、一部が反対をして居座り、都と紛争になっているという記事を僕は少し前に書いた。

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 廃屋とゴミ屋敷。老朽化した団地。これらを国は負の遺産として、東京オリンピックに向けて増え続ける外国人観光客の目から、遠ざけようとするのが目的なのではないかと僕は睨んでいる。途上国で開催されるオリンピックでも都度行われる、スラム一掃と同じである。

 家屋解体は全国津々浦々で行われるから、建設業界全体が潤う。更地になった土地は、国や市で有効活用されるなど、副次的理由もいいことずくめだ。

 隣家や歩行者を危険から守るだとか、老朽化を理由にするが、確実に、様々な理由を後付にして、廃屋やゴミ屋敷は、東京オリンピックまでに一掃されてしまうのだろう。

 そこで僕は、時代の流れに抗えずに、消えゆく「ゴミ屋敷」を、思い出のアルバムに留めておこうと思い立った。この先、増々貧困化する日本の未来の人達に、物を人一倍大切にする”ゴミ屋敷主人”の倹約・節約精神を、伝え残していかねばならないと   



ゴミ屋敷 ハイブリッド車
 場所は西武新宿線の下落合駅からほど近い新目白通り沿いにある。往来の激しい通りにはマンションやが立ち並ぶが、その間隙に一軒だけたたずむ、異質な老朽化したアパート。

 行政が大義名分を振りかざし、過剰とも思える工事用のバリケードを備え付けている。バリケードで覆うことで、「撤去への第一幕が始まりましたよ」とでも言いたいのだろう。年金や税金などの督促用紙の色が段々と変わっていくように、段階を経ながら心理的に圧力を加えていく常套手段。

 このブログのトップページ最下段にあるタレコミ・メッセージ欄より、ゴミ屋敷情報は日々募っていた。それをみたある勇敢な若者が、僕の提唱する「”究極の清貧の館”主(あるじ)の尊い精神を未来へ語り継ぐプロジェクト」に賛同してくれたのか、どうなのか、ある有益な一報をもたらしてくれた。同時に、そこには非常に気になる一筆も書き添えられていた。『ああ、そうか。なるほど・・・』 確かに僕が過去に書いた記事の内容にもそれは妙に符合する。そのような関連性があるとは思いもよらなかったのだ。

 数々の情報提供をしてもらった”サブ”さんには、この場を借りてお礼申し上げます  



ゴミ屋敷 近所
 手前の黒い鉄門扉は隣のマンションのもの。

 希望もしないのに、このような壁を築き上げられたら、屋敷の主人は増々周辺一帯のコミュニティーから孤立してしまう。そして→主人に被害者意識が芽生える→己の行為の正当性を認めさせようと、アイテムを増やす→更なるゴミ屋敷化

 「それはゴミではない。まだまだ立派に使えるだろう。俺は物を大事にしているだけなんだ」

 主人の声は市や近隣地域の住民へは全く届かずにすれ違いばかりを生む。確固たる信念を持った真のエコロジストが、今、日本から消えて行こうとしている   



ゴミ屋敷 階段2
 エコロジスト?これが?ガラクタでしょ・・・ 口の悪い人は言うかもしれない。確かに誤解を生んでもしかたがないような品々だ。でも、アイリスオーヤマの樹脂製工具箱はまだまだ使えそうだし、照りも眩しいパイプ椅子の”パイプのみ”は、部屋のタオル干しにでもなる。





ゴミ屋敷 CD
 もはや外の棚と化している階段の4段目には、「TOPS」’93-8 -NEW RELEASE AND RECOMMENDED SOUND GALLERY という名のCDアルバムが置いてあった。聴きたくなったら思い出したかのように、ここへ取りに来るのだろうか。ちなみに、このアルバム、アマゾンでは取り扱っていなくて、何故か駿河屋だけは買い取りまでやっている。



ゴミ屋敷 お婆さん
 威圧的なバリケードのせいで、白髪の老婆も屋敷を避けるようにして注意深く歩行中。ゴミ屋敷主人と市民の溝は深まるばかり。



ゴミ屋敷 警告
 これはまるでゴミ屋敷主人への当て付け。増々意固地になるのもわからないでもない。

 

ゴミ屋敷 2階ごみ
 1階には大家の家がある。アパートとしては既に機能していなくて、建物全体がいわゆるゴミ屋敷化している模様。



ゴミ屋敷 玄関
 側面には玄関がある。表札がしっかりとかかっていた。ご在宅なのだろうか。玄関ドアの上部にある明かり取りにも一杯のゴミがみえる。家の中が天井までゴミで埋まっていることは、想像に難くない。



ゴミ屋敷 玄関ドア
 地デジだろうが来たる8K放送がなんなんだと。単体チューナーでみてやるぞと、ブラウン管テレビが大事そうに玄関前に。カーペットーを被せてあるのは、雨露から守るためだろう。玄関ドアの前に置いておけば、上にある幾つもの屋根や庇が、雨から守ってくれるから、カーペットとの合わせ技で防水効果はかなり高くなる。ゴミ屋敷主人のなみなみならぬ物を大事にする強い意志を改めて感じることができた。

 ところで、パープル色のBMXタイプの自転車。チェーンが錆だらけの不動車だが、ここから近い廃屋にも訪問したところ、似たようなBMXの自転車が同じように立て掛けてあった。何かしら意味のある”マーキング”なのだろうか。



名称未設定-28-9
 僕の予想は大当たりした。奥行きのあるブラウン管テレビは、玄関ドアをしっかりと固定していた。つまり、ゴミ屋敷主人は、ブロック塀に立て掛けてあった脚立を使用して、1階窓から出入りをしていると考えて間違いないだろう。明かり取りまでゴミで埋め尽くされているのをみてピンと来たのだ。



ゴミ屋敷 アパート裏
 2階のアパート部分の窓は雨戸で閉ざされている。賃貸契約をしていたアパート住民など、清貧なるエコロジストのイデオロギーなど理解できずに、とっくの昔に逃げ出して行った。



名称未設定-31-10
 冒頭で述べた情報提供者が触れていたある現象。なんでも、ゴミ屋敷”あるある”だという。実際僕も過去の記事で偶然にもその辺りを記述している。業界では有名な話だとしたら僕の勉強不足だったのだろうか。

 それは、ここからでも確認できるが   



ゴミ屋敷 掲示板
 対比でより引き立っているせいなのか笑顔も眩しい、志位和夫委員長率いる、日本共産党の掲示板だ。

 過去の記事で冗談っぽく『極左勢力に乗っ取られた掲示板!』なんて表現の仕方をしたが、何やら秘められた戦略性や関連性があるというのだろうか。

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 政権与党でもある政府自民党は、ゴミ屋敷や廃屋を解体してオリンピックに備える方向へ突き進んでいる。要は弱者切り捨て。ということは共産党は、弱者救済、近所から村八分になっているような立場の無い人へ付け入るというか、窓口になってあげようという、党の理念を実践してのことなのか。その見返りとしての、掲示板スペースの提供。まさか、完全廃屋を確認しての乗っ取りということはないと思うが、政党とゴミ屋敷の関係性は、これからも注視していきたいところ。

 車も長期保有すればするほど、排ガスや燃費の関係で、税金が高くなるという、バカげた改正が行われた。

 本人曰くまだまだ使える「実用品」なのか、全くのゴミなのか?ゴミ屋敷主人と収集家の境界線、それに絡む2大政党の思惑。ゴミ屋敷に於けるBMXバイクマーキングの謎・・・

 これから、清貧思想実践の館であるゴミ屋敷を巡るにあたり、いろいろな課題が今回のことで見えてきた。何れにしろ、政党間のせめぎあいに流されず、限界点を見極め、物を大事にする精神が受け継がれていくような記録の伝承、「ゴミ屋敷アーカイブ」を、東京オリンピックが来るまでに、完成へこぎつけたいと思う次第である   



終わり…

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