天華園 畑
 小川を越えて葉叢(はむら)をかき分けていくらか進む。草葉に隠れていた巨大な石の案内板を、目ざとく発見する。

 「畑」という文字があるが、周辺一帯に草が生い茂っているということもあり、天華園の営業当時はここで従業員が作物でも作らされていたのかもしれない。本当にそうだとしたら、かなりブラックな職場環境だ。登別のような田舎だから、職種の選択肢も他にあまり無かっただろう。超買い手市場だったに違いない。テーマパークを手掛ける大手資本の会社に、社員やバイトは言いなりになり、奴隷のように不当にこき使われた挙句、突然の解雇通告   



天華園 建物
 天華園従業員の汗がたっぷり染みこんだ農作地か、たんなる野原か。胸の丈以上ある草木を押し分けて行く。あと2時間も前だったら、下半身は朝露で”ぐっしょり”のお湿り状態のはずだったが、幸いにも、太陽が登ってからもう結構経つため、葉先の水分はじゅう分乾ききっていた。

 すると、奥から平屋の建物が出現。



天華園 建物2
 割られたガラス窓。原因としては雹(ひょう)などの自然の猛威による可能性もあるが、一様に中央から一撃にて割られた形跡があることから、廃墟探索者的見立てとしては、侵入者による破壊行為だと、断定する。

 車の鍵を握りこぶしに収めつつ、屈曲させた人差し指と中指の間から鍵の先端部分を露出させ、指の内側で挟んで固定。大方、徒党を組んでやって来ただろうその輩(やから)。集団心理で気が大きくなったうちの一人が、おもむろにその簡易凶器を使用して、「パーンチ!」とでも叫びながら、ガラスを粉砕して奇声をあげ歓喜する。

 微力かつ瑣末なことながら、ネット上で敢えてこのような糾弾をすることで、廃墟に於ける秩序を少しでも是正していきたいと、心から願い乞う、清廉潔白な、関東より遣わされた、北の大地をこよなく愛する、廃墟探索者   

 この小さな更生運動は、【雄別炭鉱・病院と訪問者の証し】の記事でも既に実践されている。侵入者達による卑猥かつ不敬なる落書きを、意図して晒すことにより、彼等の行為を戒め咎めることに、ある一定の効果を及ぼしているらしいことは、記事の閲覧者が殊に多いことからも、その一端は、窺い知れるだろう。
 


天華園 建物と案内板
 傍らには案内板がある。



天華園 案内
 「玄妙飲緑(茶室)」との表記。「玄妙」とは、『道理や技芸などが、奥深く微妙なこと。趣が深くすぐれていること。また、そのさま』。



天華園 注意
 この四方へ広がる線状痕を見れば、雹(ひょう)や霰(あられ)、または礫(つぶて)ではないことは、明々白々だ。
 
 
 
天華園 枝
 せっかくの能書きを垂れておきながら、この枝きれでぶち割ったのだと、考えを改めるようなことはあるのか、ないのか。

 ライフルの弾のような鋭く”かつ”点のようではないと、一点を撃ちぬくことはできない。そう、蟻の一穴から、あの窓ガラスのような線状痕は作られるのだ。この状況では鍵のような鋭利な先端が必要になってくる。

 この枝のようなある一定の面積を有する断面、もしくは側面部分だと、ガラス面に衝撃が加わった際に、全面に平均して力が分散されるため、面全体が割れることになる。かつ、後方にガラス面がそのまま崩れ押し倒されて落下する。中央に一穴とはならないだろう。

 よって、この枝、棍棒による、窓ガラス破壊はあり得なかっただろうと、判断を下すに至った。



天華園 椅子
 控えていたのは、三賢者の椅子か。よくある廃墟ブログのように、真ん中にでも座り両手を広げてポーズでもとろうとしたが、顔出しをして何か得するわけでもなく、自己主張するようなことも無いし、今のところはやる意味も見つからないので、意味ありげな椅子の並びの写真を貼るだけにしておくのが正解か。



天華園 茶室奥
 茶室の奥。園内隅々に様々な施設があるが、営業当時、ここへ客は訪れていたのだろうか。重複している無駄そうな建物が実に多い。



天華園 椅子2
 積み上げられた椅子。

 この地味そうで特に売りも無さそうな陰気な茶室が、客で賑わっていたとはとても考えにくい。



天華園 立て掛け
 おしゃれカフェの店頭にある手書きPOP看板の中華版だったと勝手に推測する。

 そういえば、上海にディズニーランドがオープンしました。ここを逃げるように去って行った人達は、将来、中国と日本で経済の逆転現象が起きるとは、想像し得ただろうか。

 でも中国人は地元の上海ディズニーランドでも相変わらず、行列に並んでいる子供にその場でオシッコをさせたり、植え込みに入り込んで、うんこ座りをしてスマホを弄ったり、電灯の柱に「ディズニーランドに来た」と落書きをしたり、列の横入りは勿論、園内でタバコを吸ったり、ナイフ持参でリンゴをむいて食べたり、そのニュースをみて僕は、「ちっとも変わっていないじゃないか」と、なぜか安堵をしてしまい、微笑ましくさえ思ってしまったのだ。



天華園 責任者
 茶室(カフェ)ということもあるのか、女性主導による店作りが行われていた模様。



天華園 内線
 この内線の多さで、天華園の規模の大きさが改めてわかる。経営破綻を告げられた当時の社員やバイトは、大騒ぎをしたのか、それとも、その気配は嫌というほど忍び寄っていたので、冷静でいられたのか。



天華園 ボタン
 照明の一括管理。下手をすればどこか点くかもとポチポチやってみたが、メイン電源自体がOFFになっているようだ。



天華園 回廊
 階段を降りたり登ったり、渡り廊下を通過すると・・・



天華園 五重塔 木
 遂に五重の塔が、過去最大、ここまで近づく。

 僕にとっては、上海ディズニーランドの「エンチャンテッド・ストーリーブック・キャッスル」より遥かに魅力的な存在だ・・・



天華園 鐘
 その前に、すっかり忘れていた「鐘」が、打ち鳴らしてくれよと言わんばかりに、眼の前へ現れた。



つづく…

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