天華園 鐘1
 グリュック王国でみかけた、ケタ違いにでかい銅像もそうだったが、ここまでの大規模な物になると、ちょっとやそっとじゃ撤去もできない。側溝の蓋や橋のネームプレートまで盗む鉄くず強盗も、「コストに見合わない」と敬遠気味のようだ。



天華園 永安鐘札
 その名は「永安鐘」。



天華園 鐘2
 北京市から贈られたというが、こんなに巨大で重量のある物を、わざわざ船便で送らせたのだろうか。地方のテーマパークが、そこまでやるのかなとも思う。

 ちなみに、上海の郵便局から、旅先でいらなくなった手荷物を船便で日本へ発送したことがある。内容は、チベット旅行で使用した寝袋や防寒着、ゴツくてバックパッカー旅行には邪魔だった、ブラウンのシェーバー、等。もうかなりの年月が経つが、いまだに到着してない。それ以降に送った民芸品や怪しいゲーム機などはとっくに届いているというのに。

 船便や航空便あわせて10数回以上送って未到着は最初の1件だけなので、これをもって中国郵便局の信頼性は低いとは言えないが、できれば、国際郵便作業員の琴線に触れるような品は送らない方が(特に船便では)いいのかもしれない。



天華園 鐘3
 頭にかぶるぐらいまで



天華園 鐘5
近寄り、



天華園6
背後にまわる。

 北京市國林局

 中國北京國際経済合作公司

 贈

 と、表記があった。

 ざっとだが、調べてみても、どちらも実際に該当するものがなかった。存在しない架空の省庁だったり、会社なのではないだろうか。

 政治家の適当な経歴表記が堂々とまかり通るような世の中なので、地方のローカルなテーマパークが、誇大な表現を用いることなど、他愛もないことなのかもしれない。

 登別にある個人でやっている鉄工所のお爺さんにでも発注をし、適当なそれっぽい威厳のありそうな寄贈主を捏造して文字加工する。これで、あたかも北京市のお墨付きテーマパークであるかのように振舞うことが可能となる。



天華園 プレート
 それが捏造かどうかは置いておいて、天華園が願う  願っていた  日中友好の平和思想だけは、素直に褒め称えてあげたいものだ。

 これより数十年後の現在、両国(りょうこく)の国際的地位や経済的地位は、すっかり逆転してしまう。銀座の通りで、オシッコをする中国人の子供が出現することを、この頃に1ミリでも想像できただろうか(しつこいようだが)。その昔、欧米のホテルでは、日本人がパジャマのまま館内をウロついたり、勝手がわからず部屋をロックをしてしまい、フロントまで裸のまま助けを求めに行く    などの行為をして、”ひんしゅく”を買っていた時代もあった。

 かつて僕は、中国で人民と肩を並べ、横3人、6人掛けという、窮屈極まりない向かい合わせボックスシートの列車で、よく旅をした。もちろん格安の鈍行列車で。

 通路まで人で溢れ、足元は落花生の殻屑がくるぶしまで埋まるぐらいの散らかりよう。隣り合わせた中国人と一緒になって生ぬるいビールを飲み、一緒になって飲み干した大瓶を窓から投げ捨てたものだ。

 よく言われる話だが、当然僕も満員の列車内の眼前で、フル開チン、股先割れパンツよりの、放尿シーンを見せつけられた口(クチ)だ。

 赤ん坊を背負ってトイレまで行くのが物理的に困難なほど混み合っているからとはいえ、母親が子供の腰辺りを抱いて高く掲げ、「Si~Si~Si~」と唱えだしたかと思ったら、ボックスシートの床一面に撒き散らす勢いで、”ジョージョー”と赤ん坊は小便をしだした。僕以外の人は馴れたもので、咄嗟に両足を上にY字大開脚させて、飛沫を器用に避けていた。僕は正座状態で対応したため、膝辺りに多少のアンモニア臭が残るぐらいの液を付着させてしまった。

 それだけならまだよかったが、赤ん坊がやるだけやって、一滴残らず絞り出したかなと思った二の次、今度はその母親が「Siu~Siu~Siu~」と語調を変えて、掲げた赤ん坊を右左にゆっくりと揺り動かし、かつ、”八の字”にくねらせながら、まるで行為を促進させるような、おまじないの儀式のようなものをやりだした。

 挙句の果てにうんこまで(日本から来た僕の目の前で)、させようとしていたのだ。

 だが、約30秒ぐらい母親の額から汗がにじむほどに、儀式のようなものを粘り続けてはいたが、さすがに便意までは(下車するまで)もよおすことはなかった。

 ホッとはしたが、大便を目の前でやる噂や話は聞いていなかったので、そこまでやる人達なのかと、先々、中国人達は本当に末恐ろしいことになるなと、当時からある程度の嫌な予感は人一倍、僕は感じていたのだ。
 
 こんな経験があるからこそ、現在の経済発展をした中国と中国人のことが、今もって信じられない絵空事のように思えてしまう、反面、なるようになってしまったなと、ニつの面で捉えて冷静に受けとめている自分がいる。



天華園 鐘7
 リアル中国を隅々まで旅行してきた男が、罰金まで払って未開放地区にまで侵入した探索者が、巡り巡って北の果ての登別の山の中、存在を抹消され、人々の記憶からも”儚くも”消え去ろうかとしている、中華テーマパーク「天華園」の、永遠の平和を願う鐘「永安鐘」を、その理念に賛同をした、現在は”廃墟探索者”であるこの僕が、盛大に、その音を、山中へ響かせてしまおうかと・・・ 今、決意をする。



天華園 鐘8
 縄の結び目に、今まで鐘を突いてきた大勢の人達の、残留する”気”を一身にに集める。

 後方へ引き寄せる。



天華園 鐘9
 登別一帯に、放たれた鐘の音   


 近場に管理人が住んでいる可能性もあり、かなり弱々しく突いたというのが、実際のところ・・・



天華園 鐘10
 ようやく姿をみせた、



天華園 鐘112
五重の塔。



天華園 枝木
 一体いつまで園内を漂い続けるつもりだと、自分に怒りさえ感じてきたほどだったが、遂にここまでやってこれたと、万感の思いに打ち震えながら、説明書きのプレートを塞ぐ草木を払い避けようと試みる。



つづく…

「虚栄の塔で発見した、己の中国」 廃墟中華テーマパーク『天華園』、そぞろ歩き.10 

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