有珠山噴火 雲梯
 ここは、室内遊具室だろうか。

 雲梯やネット状の遊具が置かれていた。昼寝用の柄物マットレスもある。

 凍てつく真冬の寒さの中、暖房の効いたこの部屋で、園児達が縦横無尽に、はしゃぎまわり、その人いきれで、窓に多量の滝のような結露の流れができる。その本流から派生した幾つもの支流は血管のように窓を這い回り、やがて床へと滴り落ち、カーペットを冬の間中、湿らせ続ける。

 湿潤なカーペットは、被災を受け自然界の流入を受けるがままになったこの”とうやこ幼稚園”において、苔の加速度的な生育に、大いに寄与した。



有珠山噴火 コーラ
 図書コーナーの横には、業務用のコカ・コーラのクーラーボックス。園長さんは副業でスーパーでもやっていたのか。

 冷えたアクエリアスやQooなどを飲み、喉を潤していた園児達。

 ちなみに、冬の北海道での室内暖房は、東京より遥かに暖かくて快適。東京の冬の室内生活の方が、遥かに寒かったりする。東京の一般的な暖房器具は大抵、たいして効かないエアコンの暖房なので、薄い断熱効果の部屋も相まって、北海道より底冷えするし、朝方などは道民の人だったら、布団から出るのに辛い思いをするに違いない。

 よって、熱々の室内で始終暴れまわっていた園児のために、水分補給として、すぐ飲料を取り出せる環境づくりを整えていた園長は、実に合理的な考えを持っていた人だったと、言えるだろう。真冬の北海道は、枯れるほど、喉が渇いてしようがない。



有珠山噴火 影
 噴火の予知が知らされていたとはいえ、一斉に避難をし、見事に全員無事だったということは、優秀な園長による、神がかった英断による、最善の決断があったから、なのかもしれない。



有珠山噴火 ぬいぐるみ
 シルクハットをかぶったムーミンパパが、かつてそこにいた意味は、誰よりも園児思いの園長の分身として、皆と溶け込み、誰よりも園児達の身近にいて見守るために、置かれていたということか。園児や先生達自身の趣味では、この選択はまずない。

 ムーミンパパの横の人形は、ストリートファイター2の「サンダー・ホーク」の”デフォルメキャラ”ではないかと推測する。洞爺湖温泉街にあるホテルのゲーセンコーナーにあるUFOキャッチャーで、先生方の誰かが獲得でもして、自分の趣味ではないからと、幼稚園に寄付  そんな大げさではなく、捨てるよりは賑やかしの嵩増しにでもと、ほんの軽い気持ちで持ってきたと。それが、園長の化身でもあるムーミンパパと寄り添うにして、未来永劫、永久保存展示されることになるとは、釣り上げた本人も、満更でもないと思っているに違いない。

 たったこれだけの光景から、とうやこ幼稚園より溢れ出る深い慈愛を、細密に嗅ぎ取ってしまった、廃墟放浪者の、侮らざるべき、究明能力   



ジャングルアーチ 終
 鳥のさえずりが呼び声となり、霧のかかった風景を少しずつ、鮮明にしていった   

 長い間閉じられて、鈍重で重苦しくも腫れぼったい瞼を、眩い光の筋の断面を裂くようにして開いてみると、僕はまだ、錆びて折れ曲がったジャングルアーチに身を委ね仰向けになり、背中に格子状にめり込む鈍痛をしかと感じながらも、曇った空を見上げていた。



背面跳び 反
 よって、同様に態勢はこのように   

 ジャングルアーチの頂上付近が断絶されていて、そこに膝裏が来て足元はぶら下がった状態なので、まさにこの写真のようになっていた。



洞爺湖幼稚園 振り返る
 ジャングルアーチから降り、歩き出して振り返る。

 ふと、まだ澄み渡りきらないでいる頭の中の霞状の映写幕に、なぜか懐かしい  学校の卒業生代表の挨拶スピーチでしか、およそ耳にしない、「走馬灯」のように  情景が浮かんでは眼の前を”次から次へと”通り過ぎていった・・・



噴火遺構 カップル
 散策路での苦々しい思い出   



噴火遺構 ベストショット
 この人の中での、人生のベストショット   



噴火遺構 標識
 この一枚だけのために、ここへ来る価値は、有りや無しや   



噴火遺構 ヘルメット
 野ざらしのサイケ・ヘルメット。

 オフローダーさえ、ノーヘルで逃げ出す危機的な状況   



噴火遺構 バス路線
 もうバスが通ることはなく、廃墟探索者だけが、悠々と、真ん中を闊歩する   



噴火遺構 バス
 崩れ錆びるがままにまかせた、道南バスの車両。

 なぜ、中へ入って探索しなかったのだと、今更ながら悔やまれる物件   



噴火遺構 正門
 閉ざされたロープの張りに撓みは無い。

 一体、何を見てきて、何を見てこなかったのか。

 前進しようか、後進しようか、踏みとどまっている  優柔不断な、情けなくも、しおらしくもある  廃墟散策者は、後方に忍び寄る侵入者の影を背中に感じつつも、いつまでも自分の足元を、ただひたすらに”じっと”眺め続けていた。



おわり…

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