かどや ポテト
 建物周りをもう少し、周遊してみる。

 紅白に色分けされたアーチ状の庇。その下の大きなガラスの窓には、オーナーより選ばれし絵心のある従業員によるものだろうか、ジャガイモを擬人化した手書きのイラストが描かれていた。素人然としたものだが、かなりの力作だ。

 カウボーイハットをかぶった二人(二つ)のジャガイモ。片方のジャガイモの腰辺りに描かれていのが”エプロン”だろうということをふと見出し、咄嗟に、彼らが『夫婦であるのだろう』との推論を打ち立てる。

 男性的肉体労働の象徴でもあるスコップを手にしているの方が旦那か。ならば、彼の頬に付いているのは、米粒などではなくて、スコップを用いての過酷な労働作業により額より流れ落ちた”汗”ということになる。
 


かどや 夫婦
 エプロン姿の嫁は、今晩の夕食にトウモロコシを使った献立を思案中。嫁の額の垂れは、単なるペンキの液垂れだろう。

 店内にいる客に対する『ポテトクン』という、フライドポテトか何かのメニューのアピールだったのかも。その力の入れようから、一押しメニューだったのは間違いなかっただろうし、子供心を是が非でも掴んで、リピーターになってもらおうとの、涙ぐましくもある当時の必死さが”ひしひし”と伝わってくる。



かどや ポテト全景
 いまだかつて、かどやの「POTATOKUN」について、ここまで子細に言及した人間がいただろうか   



かどや きつね
 「POTATOKUN」の仕事を認められたその”彼”が、次に任せられたに違いない、キタキツネとクマのイラスト。画力が格段に上がっていて、その差は歴然。



かどや みずたまり
 そして、この『かどや』のメインエントランス上にそびえ立つ異形のオブジェ・・・ これは御食事処の象徴でもある『どんぶり』を、下のは逆さで上のはそのままに上下で底を密着させ重ねて乗せて、その姿を『X(エックス)』と読ませ、ドライブイン『かどや』の未来永劫の繁盛、無限なる可能性を表現している  という、大胆な推測をしてみた。

 うちに秘めた野望を公言することなく  さりげなく間接的な表現をもって  主張してみせた、一見寡黙でありながらも、その上昇志向はとどまることを知らなかった、野心溢れるオーナーの存在。

    そのオーナーをもってしても、この無残な結果であるのかと。



かどや ガラス割れ
 『かどや』オーナーの夢を打ち砕いたのは何だったのか。順調かにみえたドライブイン経営が頓挫した理由はいかなるものだったのか。時代のせいなのか、彼の重大な過失、判断ミスによるものなのか。

 建物周囲を彷徨うこと更に数十分。

 時流の裂け目のような突破口を発見する。ドライブイン『かどや』凋落の理由を解明すべく、加えて、自身の思い出、輝いていた頃のドライブインの栄華を懐かしみつつ、記憶を重ね合わせ追体験するようにして、店内調度品などから歴史を辿り紐解いていくことで、没入しながら遡るかのように、かつ、泰然としながらも、検証活動及び、それに纏わる記憶の残照との摺合せを試み、真実の『かどや』に、万難を排して、一歩でも近づこうと、誠心誠意、尽き果てるまで   今、廃墟探索者が、重き腰をあげ、ようやく、第一歩を、歩みだそうかと、メインエントランスの前で、待ち受けるかのごとくの磯の腐敗臭が漂ってきそうな店内の”漆黒”を、今が飛び込み頃かと、かれこれ数分、凝視し続けている   



つづく…

「昭和のマトリックスと白樺」 昭和の栄華、廃墟ドライブイン『かどや』の夢.3 

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