夕張廃墟 アパート
 かつて、「炭鉱から観光へ」を合言葉に、巨額の予算を投じてテーマパークや大型スキー場を建設。「ゆうばり」の名を冠した国際映画祭まで開催をして観光客の誘致に努めたが、それらがかえって財政を圧迫し、夕張市は2007年に事実上の財政破綻となった。

 僕が夕張の街に降り立ったのは、もうすぐ初雪が降ろうかという、吐く息は白く、足の指先があまりのしばれる寒さで痛みを伴う収縮を起こしそうな、初冬のある日のこと。

 夕張には何がある。夕張メロン農園か。農園はあるだろうけど、冬に見学するものではないだろう。一応、夕張メロン城とやらには行ってみたが、単なる物産センターでしかなく、それ以上でもそれ以下でもなかった。メロンを買うなら、スーパーの売り場で購入をするのが良いと、少し旅慣れた人だったら、そのぐらいの知識は身についているはず。

 田中義剛の生キャラメル工場は今はどうなっているだろうか。あれだけテレビで宣伝してもらって、あっという間に撤退してしまったのか。あったとしても、数個で800円というボッタクリ価格なので、店頭で土下座をされても購入する気はない。東京でも店舗は一切見かけなくなったし、田中義剛自身もテレビで見なくなったような気がする。

 そんな旅の行き先問答を頭の中で巡らしながら、目的地もなしに、夕張の街を適当に車で流していると、視界に入って来たのが、数件の崩れた家屋の連なりだった。まぁ、”適当に”というのは言葉のあやのようなもので、大体のあたりはつけてあったのだが。

 車で辿り着いた「大夕張」と称される一帯、夕張市鹿島地区は、ゴーストタウンになっていた。

 錆びてレールが歪んだ、この先永遠に開かれることのないシャッターのペイント表記には、旧ナショナルのマーク。店頭には壊れてウン十年の、今では貴重な乾電池の自動販売機。もちろん、中身はとっくに抜き取られていた。外殻のみ。
 
 他にも、薬局、時計店、スナック、民家    どれもこの界隈から人が去ってから数十年は経過しているようだった。全てがもぬけの殻の廃墟の状態。

 季節外れのいち観光客から、早速廃墟探索者へと行動を切り替えて、いつもの活動に取り掛かろうとしたのは言うまでもないが、車で夕張の街を徘徊していくうちに、ふと気がついたことがあった。

 廃墟嗜好的視点で俯瞰をしてみたところ、私的に興味のありそうなエリアが、まるでゾーン(区画)のようにして方々に点在していた。まるでそれはテーマパークのようでもあるのだが、全体的には夕張市というただの街なので、ゾーンとゾーンを結ぶのは、市道だったり国道である。

 税金や国からの助成金などをつぎ込んで、「ロボット大科学館」のようなキワモノの大箱をわざわざ造らなくとも、角度を変えてみれば、映画の「ウエスト・ワールド」のように、夕張という大きなな市の土地が一つの”総合裏廃テーマパーク”となっていつしか形成されてしまっていたのだ。

 映画「ウエスト・ワールド」とは、ジュラシック・パークの小説でも知られる作家「マイケル・クライトン」が初監督作を努めた映画。広大な砂漠に建設されたテーマパーク「デロス」の中の「アメリカ西部開拓時代」ゾーンで起きる事件、客とコンピューター制御されたほぼ人間のようなロボット(ユル・ブリンナー)との壮絶な闘いを描いた映画。



 架空のテーマパーク「デロス」にはその他に「古代ローマ帝国」や「中世ヨーロッパ」のゾーンがあり、客はそれぞれその区画内でその時代を疑似体験できるという設定。続編「未来世界」では、まだ計画途中の「東洋世界」から、酒屋の服を着たサムライや商人姿の相撲取りの精巧なロボットの参戦もある。

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ピーター・フォンダ



 期せずして、廃テーマパーク「ユウバリ」の「大夕張ゴーストタウン」ゾーンに足を踏み入れた僕は、チケット代を払うこともなく、もぎりのバイトにへつらうでもなく、真正面からメインストリートへ堂々と、入場を果たすこととなった。
 


大夕張 ストリート
 ホスト(精巧なロボット)はもちろん歩いていない。自分ひとりきりだ。

 どう見ても、石炭産業の斜陽化とともに人々が去って行き誰も残ることなく、放置された建物が朽ち果てるのをただ待つのみの、見た目も寒々としたゴーストタウンを再現しているようにしか見えない・・・というのは言い過ぎか。



大夕張 ビクター
 色褪せ具合でわかる、外されたビクターの看板の跡。

 旅先で出会った、自国の工業製品をやたらと自慢する愛国主義者のスウェーデン人が、「JVCはヨーロッパのメーカーだろ?」と言うので、「JVCとはジャパン・ビデオ・カンパニーの略で、日本のメーカーだよ。パナソニックの子会社でもある」と説明をしたら、彼は白目を剥きそうになり、「日本て凄いんだな・・・」と茫然自失としてしばし無言になってしまった。ハイテク立国日本人として誇らしく優越感にうち震えた、遠い昔のあの日のことを思い出す   

 ビクターはケンウッドと合併をしたようだが、そのどちらとも市場であまり見かけることがなくなったのは、寂しい限り。
 


大夕張 ビクター2
 つばめ電器として営業をしていたようです。



大夕張 ルビー
 炭鉱労働者のグチを夜な夜な聞いてあげていたルビー・ママ、今何処・・・

 映画「ウエストワールド」では、客のひとりとユル・ブリンナー演じる「ガンマン406号」が酒場でいざこざを起こす。ただそれは中央管制室からのプロット通りのお客を楽しませる仕掛けであったが、ふとしたコンピューターの故障で「ガンマン406号」は制御不能になり暴走をし始める。彼は客を殺そうと広大なテーマパークの果ての果てまで客を追い詰めて行く。
 


大夕張 積み重ね
 耐久性が低そうなプレハブは潰れてしまっている。

 無料でこの荒涼感を味わえる・・・しかも独り占めだという。

 ユウバリ廃テーマパークに、感謝   



大夕張 つどい
 ひと気があるような、ないような。本来なら管理人室とでも呼びたいが、それは僕の頭の中の妄想だけにとどめておいた方が無難だ。


 これより先では、無差別・無分別廃屋孤独探訪を実践し、そこでは、SF文学少女の生きた証を発見することになる。

 廃ゾーン探索としは、枯れたスキー場や放置車両、侘しい飲み屋街、発電所など、終始借り切り状態のたった一人探索を敢行し、夕張の現実を目の当たりにすることとなった   

 

つづく…

「破綻した城と雇用問題」 夕張廃墟世界、孤独探索.2 

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