KICX0980
 大夕張のゴーストタウンへ行く前に訪れたのが、ここ。

 乱雑に生い茂った背の高い草木に覆われようかとしている”アスファルト道路”を進んで行く。

 欄干の鉄錆はかなり激しいが、車両一台ぐらい通行しても、今すぐには倒壊なんてことはなさそうだった。

 お城のようなものが見え隠れしている。

 夕張メロン城へは既に行った後なので、メロン城ではないことは確かだ。



石炭ガラス工芸館 サニー
 ガス燈を模したようなクラッシックなスタイルの電灯が道の脇に並んでいて、その奥にはえんじ色の三角屋根が目を引くお城か教会のような建物が確認できる。

 白い車は日産のサニーだろうか。

 ひと気は全く無い。

 白い車の横を通過しながら状態を確かめてみても、放置された廃車なのかどうかは、今ひとつよくわからなかった。

 テーマパークの中を今まさに、進んで行くような気分にさせてくれるが、実際のテーマパークと違うのは、こんな華やかそうな場所へ、おっさんひとりで行こうかとしているところ。

 先の荒れた雑木林を見る限り、まさかこの施設が現在も営業中で家族連れで賑わっていたりするようなことは無いと思う。

 子供連れの家族が”キャッキャ”騒いでいるような場へ僕が作業着のような姿でカメラ片手に現われたとして、当然居たたまれなくなるので”サッ”と引き換えすのだが、それはそれで生き恥を晒すような苦い屈辱を味わってしまうことになる。

 勇気を出して飛び込みでスナックに入店してみたら、常連ばかりで、しかもその人達から無視され続けられるといったような、心が折れるどころではない、精神的に深い傷を負ってしまう可能性が非常に大きい。

 食べログ普及以前のこと。一人旅の夜、定食屋だと思って入ったら、小料理屋かどちらかと言えば飲み屋に近いようなカウンターだけの狭い店で、しかも常連数名だけで大盛り上がり中という場へ躍り出たことがある。

 熱気あふれる客らの会話は即時中断され、入り口扉前で立ち尽くす僕へ常連客達の冷たい視線が向けられる。壁にそっと目をやるとメニュー表示が無い。カウンターには大皿がいくつかあって、そこには質素な家庭料理らしきものが盛り付けてあった。飲みが主体で、ママ手作りの惣菜をつまみとしてもてなす、といった性格の店であるらしいことが、即座に判明をする。

 後ずさりをして店から出ようとする僕へ、苦笑いをする常連客達を背にしてお店のママが「ご希望があれば、お食事も作りますよ」と投げかける。周囲にはもう開いている食事関係の店は無かったので一瞬その話しに乗ろうかとも思ったが、これより数十分、よそ者として超アウェー空間に置かれ耐え続けることの過酷さは計り知れないと察し、咄嗟の判断を下しお断りをしてお店を出たのだった。

 あの時、首を縦に振りカウンターへ座っていたら、どんなことになっていたか。

 この判断は”本当”に正しかったと、今でも自信を持って言える、自分の中においての語り草にもなっている話しである。



石炭ガラス工芸館 横レンガ
 三角屋根の建物がアットホームなファミリーで賑わっているかどうかの心配は稀有に終わった。

 周囲は沈んだ重苦しい空気に支配され、闇が覗いた開け放たれたままの戸口を見るまでもなく、紛れもない廃墟。

 お城みたいな作りはハリボテのガワであり、本来は煉瓦造りの重厚な建物。しかもかなり古い。



石炭ガラス工芸館 裏
 メルヘンチックなお城調建物の裏側。

 本来の姿。

 お客に見せていなかった部分。



石炭ガラス工芸館 裏2
 今ならこの煤けて枯れた風合いの方がお客さんは評価をしてくれそうだが、それに気づく前に廃墟化してしまった。



石炭ガラス工芸館 炭礦汽船
 北海道 炭礦汽船 健康保険組合登川事務所

 炭鉱関連船会社の健康保険組合事務所の建物だったらしい。



石炭ガラス工芸館 破風
 破風部分。緻密に積み重ねられた煉瓦。



石炭ガラス工芸館 煙突
 暖炉にでも通じている煙突部分。パイプ煙突の留め金もある。



石炭ガラス工芸館 窓
 夕張一大観光地化の夢とともに崩れ忘れ去られようかとしている悲劇的な建物。



石炭ガラス工芸館 我楽多
 耐用年数は何百年にも及ぶ煉瓦造りの建物だが、再再生はされないのだろうか。実に勿体無い。

 バックヤードには廃墟ではお馴染みの光景があった。



石炭ガラス工芸館 小屋
 付け足しで作られた併設の小屋。

 冷蔵庫があるので、軽食コーナーだったのかもしれない。

 では、この建物、元「炭礦汽船健康保険組合登川事務所」は夕張市が破綻をするぐらいまでは、何に使用されていたのか。



石炭ガラス工芸館 正面
 スーマリのゴールにも見えるこの建物。

 「ラ」の「フ」部分が抜け落ちているが、石炭ガラス工芸館として使用されていた。

 小樽や函館にある港や運河沿いの古い煉瓦倉庫も一部がガラス工芸館として再利用されているが、それと同じ発想だったようだ。



石炭ガラス工芸館 入り口
 殺伐とした中の様子。

 しっかりと施錠されていた。



石炭ガラス工芸館 バーナー
 ここで実演をしていたお父さん達の雇用はどうなったのか。現在の夕張市長は、都庁からやって来たやり手の野心溢れる好青年らしいが、その手腕には大いに期待したいところ。



石炭ガラス工芸館 室外機
 廃品屋ではお金になると言われている室外機が室内保存されている。盗難を見越してのことだったら、細かい配慮がなされているということだろう。


 予想したイメージ通りの、廃墟テーマパーク化していた「石炭ガラス工芸館」の見学を終了し、次の区画へ向かうことにする    



つづく…

「世捨人が寝る廃列車」 夕張廃墟世界、孤独探索.3 

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