登戸-1
 十二月二日の午後五時半頃、川崎市の多摩川で、全裸状態の十八歳の少年が溺死状態で川に浮いているのが見つかる。

 場所は、小田急線の登戸駅から近い水門付近の入江。職業不詳の十八歳の少年が仰向けで浮かんで死亡しているのを発見されたという。

 警察は事件に巻き込まれた可能性があるとみて現在も鋭意捜索中。




問題の場所の詳細な地図です。



 川崎市の多摩川で遺体発見と言えば、記憶に新しいのが、当時わずか13歳、中学一年だった”カミソン”こと上村遼太くんが度重なる仲間からの暴行の末、殺害され多摩川の河川敷に放置された忌まわしい事件。

 愛くるしい笑顔でクラスの人気者だったカミソン君の発見現場でもある河川敷には、僕も訪れたが、即席の手作り献花台が設置され、物凄い数の花束やお供え物であふんばかりに。あまりに数が多いので、ホームレスっぽい人がボランティアと称して自主的に片付けをしているようだった。テレビ局が取材に来ると、その人は撮影に協力して、サクラとして献花台の列に並んだり、ADのような雑用係として奮闘。僕が訪れた時もそうやっていたし、その後のニュースの特集などでも、画面横でチラチラ映っているのを何度か見かけた。

 かみそん君の遺体発見現場は普段は昼間でも人通りがほとんど無い場所。実際に現場を訪れてみて思ったのは、死体の発見をできるだけ遅らせて、その間に何かしらのアリバイ工作を仕組んで、あわよくば逃げ切ってやろうという、犯人側の強い意志を感じ取ることができた。

 今回の少年はどうなのだろうか。なんでも、今年の秋頃に、若い男女が少年の行方を尋ね歩く様子を近所の人が目撃していたとか、「最近、家に戻っているか」と彼らが聞きまわっていたり、何らかのトラブルを抱えていた様子があったようだ。

 現場を見てみれば何か原因究明につながるような事が発見できるのではと思い、誰に頼まれたわけでもないが、こんな自分が少しでも社会貢献ができればと、あわせて追悼の意を込めつつ、遺体発見現場まで行ってみようと思い立つ。

 遺体が浮かんでいた水門前の入江では、花束や供え物の数こそわずかだったものの、遺体そのものと勘違いしてしまうような亡骸のような衝撃的な”お供え物”を発見してしまい、それから十数分もの間、アゴを小刻みに動かしながら、空をいつまでも眺めていたくなるいたたまれない気持ちになる。

 加えて、遺体が浮かんでいた場所からほんの三メートル付近にいた、いや、住んでいる、とある守護天使のような人間との遭遇    まるで少年が乗り移ったかのような、現場付近でじっと警察の捜索を見守る、猫の存在も・・・
 
 遺体発見現場で手を合わせるだけと軽い気持ちで行ってはみたものの、実に数多くの収穫を得ることとなった。



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 最寄り駅は小田急線の「登戸駅」だが、自宅から自転車で行ける距離なので、強い風の中、自転車のギアを最大限に軽くして、腿の痛みに耐えながら進んで行く。

 多摩水道橋を渡っていると、ちょうど橋の下辺りで、スキューバやボートで捜索しているのを確認。

 橋の上から写真を撮ろうとしたら、橋上に二人いたうちの片方の女子警察官の人から、「捜査中なので写真はやめてください」と、注意を受ける。

 川に潜っているチームや、川岸にも大勢の捜査関係者いる。総勢、四十人以上はいるだろうか。

 カミソン君の事件現場へは、遺体発見からかなり時間が経ってから行ったので警察官の姿は見かけなかった。今回は、事件が報道されてからまだ数日で、真相解明もされていないということもあり、大勢の捜査関係者の姿を見ることに。

 警察専用のバスが橋の下の工事用駐車場に駐められていた。



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 警察が捜査をしていたのは、遺体が浮かんでいた水門付近ではなく、少し離れた上流の橋のたもと。

 テレビ局が撮影に来ている。カメラの横を確認すると「フジテレビ」のマーク。カミソン君の時も、同じくフジテレビのクルーと遭遇したが、明らかに彼らはシニア・タレントのような人を連れて来ていて、その人達を指図をしながら献花シーンを撮ったり、例の自称ボランティアを小間使いにサクラにと、庶民は無知だと軽く見てやりたい放題。その後のフジテレビの低視聴率による凋落ぶりを予見させるような、いい加減で手抜きの制作過程を間近で見せられたのである。

川崎中1殺人事件の現場へ



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 奥に見える橋が「多摩水道橋」。

 一度、反対側(更に上流)に回り、藪の中から突き抜けて川岸に出て撮っていたら、強い調子で警備の警官から注意を受ける。フジテレビの人達も同様に。それで揃ってこちら側にやって来た。すると、急いでカラーコーンと非常線をここでも用意される。



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 海に潜って遺留品でも探しているのだろうか。



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 少し離れた場所に、「スズキ・アドレス V125S」のフロントカウル。

 バイクが壊滅的に売れないこの日本で、数少ない人気車種なのがこのスズキのスクーター「アドレス V125」。原付二種なので原付のように二段階右折が無く、スリムなのですり抜けがしやすい。軽いから加速が良い。お値段もライバル車種より安価。そんな、引く手あまたの大人気スクーターのカウルがなぜこんな場所に。ヤフオクで売りに出せば、速攻で売れるような品だ。

 まさか、18歳少年を酔わせ、裸でスクーターに乗せて、多摩川へダイブさせる。アドレスは川岸で沈み、泥酔して意識朦朧の彼は溺れながら川の流れとともに下流方向へ。しばらくして動かなくなった少年はプカプカと、それほど離れていない水門の前の入江に引き寄せられる   



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 素人妄想推理の危うさにはたと気づき、目の前の現実だけを注視することに心がけるようにする。

 本日土曜日ということもあり、この二人は「Mr.サンデー」の取材班ですかね。



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 遅々と進まない海辺の捜査状況に見切りをつけ、フォーカスを拡げ大局的に物事を見るのが必要だと考え、目下の疑惑の中心から少し遠のいてみる。

 寒風吹きすさぶ中、丸くなり微動だにしない猫を発見。

 近寄ってみると・・・



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 下は枯れ草なのでかなりの足音がするにもかかわらず、僕が目の前に立ちはだかろうとも、瞼さえ開かない猫。達観しているというか、信念があるというか、まるで少年の霊が乗り移り、『早よ解決しておくれ』と傍らで操作状況を見守っている風にも、バカげてはいるものの、そう見えてしまった。

 猫がたたずむこの場所は、18歳少年の死体発見現場の入江と、捜査関係者が重点捜査中の橋のたもとの、ちょうど中間地点。



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 鼻先二センチまで寄ってみたが、”その時”が来るまで黙して語らずといった、悠然たる面持ちで始終、無と向き合っているかのような孤高の存在にも見えた猫。


 猫に意識下で『水門前の入江では何かしらの成果をあげて、一ミリだけでも彼に貢献したいのだ』と囁くように伝え、いよいよ、亡骸の辿り着いた問題の場所へ、想いを背に受けて、乗り込こんで行く   
 


つづく…

「死の手掛かりと廃車群」 追悼訪問、多摩川18歳全裸遺体事件の現場へ行く.2 

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