チニカ山荘 塀
 車で砂利道を進んで行き、辿り着いた時には想像もできなかった裏側の大惨事が明らかに。



チニカ山荘 崩壊
  管理人がいるかも・・・なんていう憶測は消し飛んでしまう。



チニカ山荘 壁落ち
  二階部分の外壁が剥がれて前方に倒れ込む。



チニカ山荘 骨組み
  台風によるものだとしたら、被害を受けた時期は夏のオンシーズンということになる。

 積丹岬を目指して余市を出発した自転車乗りの少年が、全身筋肉痛とともに夕暮れどきのチニカ山荘に到着。チェックインを済ませ食堂へ行くと、驚くことにコロッケ定食が700円もする。高校生の彼にしたら気安く払える額ではない。現金は無いが、兄からのお下がりであるキャンプ道具一式を持っている彼は一計を案じ、チニカ山荘から少し離れた空き地でお湯を沸かしてインスタントラーメンを食べることにする。食後には、ダイソーで買ったプラスチックのドリッパーで淹れた自家製のコーヒー。チニカの食堂より遥かに美味しくて安上がりのコーヒーだと、彼もご満悦。


 夜のお楽しみミーティングでは、彼なりの皮肉を込めたつもりの、コロッケの「ロボ五木」のものまねの、ものまねをして大喝采を浴びる。

「お笑いとは、時には体制批判をし、腐敗した搾取の構造を糾弾するツールにもなり得る。僕がロボ五木を演じた本当の意味がチニカの彼らに伝わったかどうだか・・・。放送作家の台本をそのまま読むだけでジャーナリスト気取りのジャニーズタレントや女優が、本来なら権力の監視の一端を担うニュース番組の司会を任せられていることへの憤り。本当に変えていかなくてはいけない。この国を。まず、ニュース番組のワイドショー化は、国民が本来知り議論すべき重要問題を意図的に遠ざける目的があり、一部の支配者層による意思決定だけで国の方向性が定められていく危険をはらんでいる。レイ・ブラッドベリの小説「華氏451度」では、国民を総白痴化するために本を禁止し、政府は低俗な内容のテレビ番組ばかりを国民にみさせようとしていた。狭いスタジオに吉本芸人やグラビアアイドルが並んで座り、暴露トークをしていくような安上がりな番組は、元は制作費の安い関西ローカルでよくあったもの。それが今やゴールデンタイムのテレビの地上波はそればかりだ。ペダルを一つ、また二つ、漕ぐごとに僕は日本を憂い、現状を何とかせねばとの思いは日毎増し続ける   

 早熟な愛国者である少年が、日本の未来を危惧しつつ、チニカの固いベッドにて、自分には何ができるのかと深い眠りの中、明日の積丹岬の澄み渡る空を一足早く夢見てほくそ笑み、もんどり寝返りをうったその瞬間・・・

 ベリベリベリ   

 目の前の幕が開かれたように、崩れた壁の間から無数の星々が煌めき出す。半信半疑、天の川に流れ出すのかと錯覚をもする少年。耳元には、猟友会の人に撃たれて絶命しかかっている子熊の呻きにも似た叫び。低くはなく、甲高く上ずっていて抜けるような音だ。

 振り返ればむさ苦しい山小屋然とした狭いチニカの部屋そのものであるのに、前方には決壊したダムから怒涛の勢いで流れ出す星の洪水。顔を撫でるひんやりとした風。時折ぶつかっていき頬を切り裂きそうにもなる小昆虫・・・いや、虫ではなくて木片の切れ端か。

「驚いたことにこれは現実。チニカの壁が崩壊したんだ。熊の鳴き声なんかではない。暴風が打ちつける音じゃないか!」


    災害当時、自転車少年がもし居合わせていたとしたら、このようなドラマがあったのかもしれない。



チニカ山荘 瓦解
 想像以上の被害を受けている。しかも、これっぽっちも再建しょうと試みられた形跡がない。



チニカ山荘 赤い部屋
 先日の安倍・プーチン会談での無残な交渉結果にきっと涙していただろう、愛国自転車少年の彼。仮に呼ばせてもらえるなら『憂人君』としておく。

 その憂人君も、増設したようなこの端の部屋だったら、直接の被害は免れた可能性も。



チニカ山荘 切り株
 積丹半島の山の緑の中の紅一点。軒先には大量の切り株。

 貴重な白樺を大量に伐採して来て何を企んでいたのか。



チニカ山荘 柱背景赤
 山の中なのに、曇りガラスを採用していた様子。山の中だからこそ、プライバシーを尊重していたとも言えようか。軽はずみなのぞきは断固許さないぞと。女性の一人旅にも心強い味方であったチニカ・オーナーの繊細な気遣い。



チニカ山荘 万国旗
 外周部のチェックを一通り済ませ、ようやく、内部への侵入を開始する。

 出迎えてくれた万国旗。

 「営業中」の看板は食堂のものだろうか。



チニカ山荘 コーヒーの看板
 法外な値段を要求するコーヒーの看板が足下に。他にもメニュー表記の板がいくつかあり、ここ自体が食堂の可能性が大きい。白樺越しに太陽の光が降りそそぐテラスでいただく一杯の珈琲。値段をあれやこれや言う僕が無粋なのかも。

 台風などの暴風で壁が崩れるのはまだわかるが、物がここまで散乱をするのだろうか。



チニカ山荘 桃岩荘
 北海道を貧乏旅行する人にはお馴染み、礼文島のユースホステル「桃岩荘」の札。

 僕は泊まったことがないが、インドのバラナシにある日本人宿「久美子ハウス」に宿泊をした時に話題が上がり、「トランス状態になった人達が夜通し行進をしたり踊ったりする宿」という説明を受けた。

 僕が久美子ハウスに宿泊した時は学生の卒業旅行シーズンだったので、数十人が大して広くない部屋に押し込められていた。もう一人の中年男性と僕以外の数十人全員がそこでガンジャを吸っていたので、桃岩とどっちもどっちだろうが・・・というのが正直な感想であった。

 桃岩荘との関係は何かあるのだろうか。どちらも”荘”が付くようだが・・・。



つづく…

「チニカオーナーの肖像」 廃墟、『チニカ山荘』荒くれ探索.5