小岩-94
 『退廃、空き家ファイル』という記事カテゴリーを華々しく新設したものの、その登録数はいまだ、たった一件だけにとどまってしまっている。

 いざ自分の足にて空き家を探す活動をしてみると、『退廃、空き家ファイル』の001に選出されたような、味わい深い廃屋はなかなか無いものだ。ただ壊れている家で良いというわけではなく、ご近所の人に長きに渡り愛され、歴史が染み込み発酵でもしているかのような、熟成具合が欲しいところ。

 そんな中、当ブログへと、情報提供を申し出る、ある方からのメッセージを受け取る   

『はじめまして。静岡在住のえっちゃんです。 いつも真剣に拝見しています。 私は東京の江戸川区東小岩の出身で。帰省する度に、小岩に廃屋化が進んでいます。   

 静岡県のえっちゃん様、わざわざありがとうございます。

 下町になら空き家はたくさんあるだろうとは思っていたけど、縁もゆかりもないし、土地勘もない。

 以前、古びた昭和からのおもちゃ屋さんを巡る旅をしていたことがあり、その頃に、昔からの在庫を余らしていそうな東京中のおもちゃ屋へは行った経験がある。しかし、それは旅というより、ピンポイントでおもちゃ屋さんだけに行っていたので、観光や散策をしたわけではない。駐禁をを取られてはたまらないので、店前に車を停めて、おもちゃ屋で買い物をしたら即退散   

『現代の生き昭和、小岩も開発の波が押し寄せています。 解体される前に、是非見て下さい!   

 おもちゃ屋巡りをしていた頃の紙の地図をみてみると、新小岩駅付近には「ダイマル」「横井」といったおもちゃ屋の名の書き込みがある。小岩駅周辺には何も書いておらず。行っても一瞬だったので、記憶はほぼ無い。

 えっちゃんさんは、なおも言葉を続ける。

『車の通りは多いですが。通行人はまばらです。 通称ピンクアパートは、敷地内には何気なく 入れると思います。   

 通行人がまばら・・・ピンクアパート・・・ 何かに突き動かされたような気がした・・・

 撮影環境はは良好そう。

 ちなみに、えっちゃんさんは「ピンクアパート」と「ピンクハウス」の二通りの名前をおっしゃっていたので、「ピンクハウス」の方で統一したいと思います。ローカルな廃墟スポット系の名前としては、なぜかスタンダードなので。

『怪しむご近所さんもいないと思いますが、「古いアパート写真に残しているカメラマンです」と言えば、小岩のお人柄かスルーされると思います。   

 この決めセリフは、今後の街中廃墟撮影にも活かせるかも。有無を言わせない、万人を納得させる説得力がある。

 下町の人情に触れる空き家巡りの旅も悪くない。少し調べたところ、他で紹介されているということもなさそう。

『小岩駅徒歩7 ピンクハウス 柴又街道沿い   

 駅からそう遠くない場所。

 えっちゃんさんには、他にもうひとつ、ナウシカの”王蟲(オーム)”みたいな廃屋の存在も教えてもらう。地元小岩の同窓会でも話題になるような、伝説的な空き家でもあるそうだ。

『小岩にはまだまだ沢山の廃墟があります。 私は、人が生活をした形跡のある昭和育ちの住居を見るのが好きです。 いつかは形無くなる前に、記憶に残しておきたい物でもあります。 是非ご覧になってみて下さい。   

 教えてもらった二つの空き家だけではなく、裏路地を歩くなどして他にもいろいろ見つけられそうである。

 申し出て下さった方の想いを胸に、早速、総武線の千葉行きに飛び乗り、東京都小岩へと急行した   



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 JR小岩駅で下車し南口へ。

 駅正面に「昭和通り商店街」という名の、昭和の面影を・・・という手垢の付いたありきたりの言い回しをつい使おうと思ったが、もう古いお店は僅かばかりしか残ってない。
 


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 商店街をほんの少し進んだところに、早くも廃墟が出現。

 全体を無数の蔓に覆われた、錆びたトタンの雨戸が乱雑に並ぶ、閉鎖病棟のような木造家屋。

 行き交う子供連れの家族やカップルの人達も、見て見ぬ振りなのか、素通り気味。

 この廃墟は昭和通り商店街に面しているが、入り口は裏通りの方みたいなので、そちらへと回ってみる。



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 東京の23区に位置する駅の南口からすぐ近くというのに、この荒み様は圧巻ですね。しばらくは缶コーヒーでも飲みながら、立ち止まってみていられます。

 これ以降、小岩の街中にて僕がこのての廃墟系物件をカメラで撮影していると、感化されるのか、背後で一緒になって電子音を発しながら、スマホで撮りだす人が続出する。

 普段これを見てもタブーとして捉えてしまっているが、やはりどこか惹かれるものがあり、僕という存在により自己規制が取り払われるのだろう。



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 家屋の窓は人間でいうと眼のようなものだと思っている。じっと見つめて、爛々とした活力の漲りを感じられれば、そこには人の営みがあるということ。

 空き家とみて間違いない。



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 昨今の黒柳徹子を思わせる目尻のようなものが。

 つい先日ザッピング中に「徹子の部屋」を観たが、もう限界ではないかと思う。テレビ局はいつまでご老体の彼女を働かせる気かと。日本のテレビの創世記から走り続け来た人に。頭脳はまだ明晰なものの、歯の噛み合わせが悪いのか、常に”フンガフンガ”していて、言葉尻の全てが巻き舌になってしまっている。テレビ界の大功労者なのだから、最後は綺麗に一線から退かせてあげたい。

 

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 駅前にこれを放置しておくとは、ある種の寛容さがまだこの小岩には残っていると感じます。
 


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 「定食居酒屋」という、あまり聞いたことのない形態のお店。

 なるべくしてなった、駅前商店街にたたずむ、巨大廃墟か。

 『退廃、空き家ファイル』入りは、コンセプトからずれていそうなので、残念ながら見送りに。



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 昭和通り商店街から入った路地に、寂しげに立つ、朽ちゆく途中の廃屋を発見。



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 郵便受けの口にガムテは施されていない。とすると、窓に漂う気で空き家か否かを判断するわけだが・・・



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 空き家でしょう。

 駅前だというのに廃屋が次から次へと。

 アベノミクスにトランプご祝儀相場も、ここ小岩には行き届かなかったのか。

 

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 庭には大木のごとくのシュロ。

 廃屋との共生関係。

 過去記事の大多数の廃屋にて、庭にシュロが植えてあるのを確認している。腐った木材を養分にして、勝手に生えて自生したのかと思っていたが、違うらしい。昔の人は庭に植えたシュロでほうきやロープを作ったり、火おこしの火種に使用していたのだという。庭のシュロは生活必需品のような存在だった。



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 向かいの瀟洒な邸宅。石垣の上の猫。

 野良猫も空き家よりは屋敷を好む様子。



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 発展途上の廃屋とはいえ、この密集度なら十五年ぐらいは経過していそう。

 『退廃、空き家ファイル』入りはもう二十五年は必要と見る。



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 「昭和通り商店街」の終わり付近にあった、もうシャッターを閉じてから随分経っていそうな、元お菓子屋さん。

 左脇の路地に気になる風景が   



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 これぞ下町、といった家屋の並び。



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 行き止まりにあった、廃アパート一歩手前の建物。



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 見立てでは、二名ほどまだお住いか。そのうち日本中がこのようになってしまい、そして強制撤去への流れが   

 こういったのを、見られるのも、今だけかもしれない・・・



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 明かりが全く届かない暗黒。これでは靴紐も結べない。



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 一階一番奥。

 今や台湾の企業の傘下、シャープの17インチディスプレイ。お年寄りばかりだし、ブラウン管ディスプレイだったら、もうこのように野晒しにするしかない。この先短いのに、追加の引取料金まで支払ってまでするご老人が、一体全体、どこにいるのかと。

 四リットルもある、日本酒の「一風」。体に良くないと思いますが、独居老人にはこれが唯一の生きがい。



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 アロっ子の家。

 ガス警報器らしいです。



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 残った二名は二階に住んでいて、一階は全て空き部屋。

 これだけ扉が近いと、いつ出社でいつ帰宅かがまるわかり。壁も薄いだろうし。

 これはまさしく、昔版、レオパレス。

 僕も騒音問題でアパートから退去した経験がある。上の人が、松田聖子の「瑠璃色の地球」と、マイケル・ジャクソンの「Bad」を、繰り返し一日中かけまくっていて、気がおかしくなりそうになった苦い思い出。



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 情報提供よりの情報をもとに、例の空き家へと急ぐが、その途中、裏路地にて、『退廃、空き家ファイル』入り確実な、ツイン空き家と遭遇をする   



つづく…

「双建の空き家」 下町、空き家巡りの旅.2 

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