チニカ山荘 男子トイレ
 もはや、廃墟におけるルーチンワークとなった、トイレ確認。

 旅行施設それぞれのオーナーが、旅人をいかに愛しているか。それはトイレの快適さでわかると言っても、過言ではない。

 思えば、夕張財政破綻を招いた張本人、以前の夕張市長の肝いりで、夕張市内に複数設置された、「爽やかトイレ」だけは、素晴らしく立派で感激し、今でもあの清潔で暖かくぬくもりのあるトイレのことを、時折良き経験として思い出し、うっすら笑みがこぼれるぐらい。『朝五時に起きれば、それまで誰も来ないだろうから、ここで寝ようかな・・・』と一瞬でさえ思ったほど。

 自動ドアに、真冬に完璧な暖房。無機質だが、会議室のように綺麗に整頓された室内。光沢を放つ、毎日磨かれているだろう、便器。「爽やかトイレ」横で車中泊をしたことは言うまでもない。あの市長の、旅人をもてなす心だけは、間違っていなかった。

 外側から考察した通り、ガラス窓下部が覆われていることにより、化粧室内におけるほぼ完璧なプライバシー保護が確立されているようだ。繊細な心遣い。その”風貌”からは”がさつ”な印象を当初受けたものの、チニカの奥へと潜入して行くにつれ、徐々に考えを改めさせられていくことになる。

 白と水色にそれぞれ彩られた、壁掛け小便器、通称「朝顔」が四据え、色違いに交互に設置されているという、オーナーによる、遊び心の演出意図があったと見る。

 さあ、風呂場へ行ってみようかと、暗い廊下をひとり孤独に突き進んで行く   



チニカ 小便器
 液垂れする部分に、僅かばかりのアンモニア痕を発見してしまう。



チニカ山荘 流し
 これだけの蛇口があれば、我先にと争いケンカをすることなく、朝の歯磨きに集中できたはず。



チニカ山荘 日めくりカレンダー
 2004年、11月24日・・・まさにその日が、運命の日。

 ガムテちぎり破りに感じる、オーナーのダイナミズム   



チニカ山荘 石
 グロそうな、石の置物。

 何か載せていたみたいですが、年齢に見合わず、かなり渋い趣味を持っていた?



チニカ山荘 上からの石
 上から。

 流しの横にあるのが気にはなっていた。まな板として活用していた可能性も、あのガムテの大胆な裂断痕を見る限り、無くはないか。



チニカ山荘 ろうそく
 微妙な立ちバランス。

 水兵さんの服を着た、片足立ちの「くまのプーさん」ローソク。



チニカ山荘 卓上
 宿泊客は居間でわいわいと談笑。チニカオーナーは気を使い、流し横のテーブルにて、隠れるように売上管理の書類を作成。

 夜、急にうがいがしたくなった、とある宿泊客。流しへ行った時、そこには、うなだれて苦悩するチニカオーナー。オーナーはたと気づき、顔をもたげる。その瞬間、オーナーからの鋭い眼光に射すくめられたその刹那、たじろぐ宿泊客に、彼はあわてふためき、なだめるように接し、咄嗟に営業スマイルに切り替えるが、素のオーナーを知ってしまった宿泊客は、まだ動揺が収まらない。前払いをしてしまったため、それからの三日間オドオドと、その宿泊客は、以降、夜の流し場には決して近寄らなかったという。



チニカ山荘 コップ
 僕とチニカオーナーの共通点を、流しの下より発掘。ホーロー製のマグカップ。

 僕が海外バックパッカー旅行へ行く際には、これを常備している。中国の路上で、三十円ぐらいで買った、白地に花柄模様のカップ。深さはもっと浅い。

 冬の中国で、ぬるいお湯をもらい、ホーロー製のコップに入れて、ストーブに乗せ、熱々のインスタントコーヒーで体の芯から温まり、つかの間の安らぎを得た経験がある。他の素材のコップでは、できない芸当だ。

 ミニマムパッカーとしては、コップを運ぶ際の中の空洞が気になることろ。コップが空のままだと、空気を運ぶことになるからだ。靴下を入れたり、タオル、Tシャツ、500mlのペットボトルの底付近だけとか、いろいろ試したが、どれもはみ出したりして中途半端。

 そんな中、インドのゲストハウス「久美子ハウス」にて、ある関西人のバックパッカーが、女性のバックパッカーに講釈を垂れていて、まさに僕の悩みを解決するような、マグカップへの有効収納方法を見出し、説明をしていた。僕としては、衛生観念上、考えつきもしなかったが、カップの中には、まだ履いていないパンツを入れておくのだと、彼は『これぞ新発案   』といった風に堂々と説明をしていた。早速試してみたが、なるほど、ピッタリと収まる。無駄が一ミリも無い。下着ということに抵抗がある人がいるかもしれないが、洗って乾かしたのなら、何か問題でもあるのかと、言いたくもなる。以降、使用方と携帯収納方法における完璧な形のコップとして、世界中に持ち出し、時には国内でも大活躍をしている。



チニカ山荘 ヒーター
 チニカ山荘とあのオーナーには、無骨なアラジン・ストーブがお似合いだと思っていたが、予想に反して、近代的な灯油のヒーターが。



チニカ山荘 城
 城マニアではないので、何の城かはわかりませんが。

 ロンブーの淳はともかく、十代そこらの女性アイドルで、城マニアとか公言しているのは、大抵事務所に言わされている、ビジネスマニアでしょうね。
 


チニカ山荘 テレビ
 古新聞の厚みでテレビの見え具合を調整する、チニカのオーナーらしさを、ここでも見つけて、なぜか微笑ましくも。

 下の金庫みたいなのは、スピーカーの線がでていることから、アンプなのだろうか。



チニカ山荘 デニム
 おっさん臭く思われたくないので、「デニム」とか普段ブログでも言ってますが、僕はジーパンの次の、ジーンズと呼ぶ世代です。

 ブログに書くのが決まっていたら、メーカー名ぐらいは調べるべきだった。次があった場合は、前ポケ、後ろポケも、徹底調査をすることでしょう。



チニカ山荘 流し
 かつてここまで、このなんにも無さそうに見える、チニカの流し場を、丹念に探索をした廃墟散策者がいただろうか。

 まとめサイトに、情報垂れ流しサイト。よっぽどのこだわりでもないと、個人のブログはその他大勢に埋没してしまう。

 今の方針で良いのだなと、揺るぎない確信を持って、チニカのオーナーとの共通点を見出し、味方にでもつけたような気がして、後押しでもされているよう力強さを感じつつ、次のエリアへと、繊細に、時には破天荒に、勇ましく、オーナーの意思を汲み取り、しおらしくも、チニカの現実を体全身で受けとめて行く   



つづく… 

「廃風呂で汲み取ったモノ」 廃墟、『チニカ山荘』荒くれ探索.9 

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