小岩-125
 日曜のお昼過ぎだというのに、ここが東京か?とにわかには信じられないぐらいに人通りのない「昭和通り商店街」を進んで行く。

 通りの両隣は店舗が歯欠けのように建っていて、更地がやけに目立つ。東京では最近やけに見ることができて少々うんざり気味の外国人観光客姿はほとんどいないみたい。アベノミクスによるインバウンド需要は、東京の最東端、ここ小岩には無縁だったのか。

 つい先日、雑誌の「絶対住みたくない「やばい繁華街」」のアンケートで、堂々の二位を獲得してしまったのが、小岩。一位はどこだったかというと、あの歌舞伎町。暴力団はもとより、アジア各国のマフィアがしのぎを削っているようなバイオレンス度の高い歌舞伎町の次点だというのだから、小岩も相当なものであるのは確かなようだ。刑法犯の数が二十三区でも上位で、自転車の盗難や車上荒らしも突出して多いとか。

 その話題をマツコの番組で取り上げていたのはいいが、マツコがやたら「小岩ってただもんじゃないわよ。小岩って今、とんでもないことになってるわよ・・・」と、散々煽るだけ煽っておいて、具体的なエピソードは何ひとつあげていなかったのが、気になってしまった。沢山の番組に出演し過ぎて、話題に乗っかるだけで、受け売りの情報と印象だけを元に、中味の無い薄い話をしているだけの人になってしまっているのではないかと。

 そうではいけない。足で現場の実情を見るのだという、信念のもと、昭和の街並みを記憶にでも良いから保存して欲しいとのささやかな、依頼者の願いを聞き受け、一歩、また一歩、頭で情景を反芻しながら、糸に引かれるように、時折立ち止まりつつ、前進を続けて行くと、やがて、通りの終端に辿り着く。
 
 小岩駅前からすぐの場所にありながら、ナウシカの王蟲のような姿で横たわる、手付かず、野晒しの廃屋と対面することに。

 「昭和通り商店街」の終端は、車の往来が結構ある通りに面しているが、その道を挟んだ向かい側。

 繁華街のど真ん中といってもいい場所。

 情報提供者”えっちゃん”さんの同級生の間では、朽ち果てる「寸前」だからということで、「寸前ハウス」と呼ばれていて、同窓会があるたびに、「あの寸前ハウス、まだあるの?」と話題の中心になるほどだとか。

 昭和のすえた臭いさえ漂ってきそうな、著しく老朽化したこの建物。大勢の小岩市民の目の前で、いつ倒壊しても不思議ではない。

 年代を経るとともに、建物は揺らいでいき自立できない状態に。次第に、煙突が柱のような役目を負う。



小岩-123
 家屋の全荷重が煙突へとのしかかる。数十年後か、頼りなくも支え続けていた煙突が、突然、たまらず声を上げるように、”グキッ”と、骨折のように姿を曲げる。



小岩-124
もう20年以上前から寸前寸前と言われてますが、ツタで頑丈に支えられているのか、もともとの基礎が頑丈なのか   
 
 煙突の支える力はもう、限界に達している。えっちゃんさんの言うように、ツタが這って煙突へ抱きつかんばかりに巻き付くことで、なんとか崩落を免れているようだ。お世辞にも基礎は丈夫とは言え無さそう。









 ”ウィッカーマン”という映画がありますが、あれにも出てきそうですね。



小岩-128
 街中の無法地帯。

 歌舞伎町のような、殺伐とした空気の澱みは感じられない。これを数十年受け流し続けているという、小岩市民の寛容さが影響をしているのか。



小岩-130
 確かに、これが当たり前のように存在する繁華街に住みたいかと言われれば、答えに窮してしまう。



小岩-127
 屋敷といってもいいぐらいの規模だったと思われる。



小岩-129
 駅前の巨大空き家と共存する風景がここに。



小岩-132
 蓮コラが苦手な人は、見つめてはいけない写真。

 本来、肉眼では中は真っ暗だが、高感度耐性の強いカメラで撮っているため、壁に無数の何かがぎっしりと詰まっている様子がはっきりと見て取れる。



小岩-137
 街の一部として、小岩市民も特段驚いた様子もなく。



小岩-133
 夜中に飲食店の店主がやって来て、処分に困った立て看板を放り込んだのだろう。



小岩-126
 駅前の繁華街に巨大空き家があり、敷地のつながりには・・・



小岩-134
朽ちる寸前まではいかないまでも、似た作りの木造家屋。今では珍しい、ホーロー看板。

 どう考えても、所有者は同じだと思われる。

 さま~ずが好きそうな千円自販機は、そのオーナーの趣味か。

 さま~ずがやって来てこれを試したとして、すぐ横の廃墟には言及するのだろうか。



小岩-135
 フラッシュ・タンバリンとか、ドンキで五百円もしないような物が景品みたいです。



小岩-138
 真夏には、緑の蔓で全身を覆われることでしょう。

 ちなみに、道の真向かいには、



小岩-136
 放置したままの空き家や千円自販機の感性といい、オーナーが同一の可能性も。



小岩-139
 弱者救済という党是というか主張を際立たせたいのか、これまで見てきた数多くの所有者不明と思われる廃墟や廃屋では、共産党のポスターがほぼ必ず、抜け目なく、貼られていた。

 今回もやっぱりかよと、何気なく写しておいたら、公明党のポスターだった。このことからも、オーナーはご存命であり、並びの千円自販機も同一オーナーである可能性が高まった。



小岩-140
 このような看板がありながら、廃屋側面へ行ってみると・・・



小岩-141
 薄いトタンの波板は今にも倒れれて来そう。



小岩-146
 空き家の裏のアパートも、これまた廃墟。



小岩-143
 小岩の繁華街に居座る、寸前ハウスこと、巨大空き家の裏側。燃えたような跡がある。



小岩-142
 吊るされて数十年。



小岩-144
 ミッドセンチュリーな蛍光灯が。



小岩-145
 東京の繁華街で、これが許されているとは、住人同士が細かい干渉をすることのない、住みやすい街なのかもしれない。



小岩-147
 廃アパートにも、例によって不法投棄のゴミが。

 昔、このような、洋物タバコ・ブランドのゴミ箱や紙手提げ袋が流行りましたね。うちの家はキャビンでした。



小岩-148
 廃アパートの住人のひとり、KUDOHさん。そのままにして、去って行ってしまいました。耐えられない環境だったのでしょう。



小岩-149
 ゴミが家の半分まで堆積した、ここが玄関。

 カメラのチルト液晶を駆使して、ノーファインダーで最大限の接写に挑んだ。

 撤去費用がとんでもない値段になりそう。放置されたままの、最大の理由がこれか。


 寸前ハウスを、もう思い残すことなく堪能し、次は、ようやく、ピンクハウスへと   
 


No.003 「寸前ハウス」【退廃、空き家ファイル】

訪問困難度 ★ 繁華街に位置する

荒れ果て度 ★★★★ 名前の通り、もう寸前

付加価値度 ★★★★ 後ろにも廃アパート

退廃度 ★★★★ 荒んでいるが、見守る市民は平静を保っている


つづく…