豪徳寺-29
 横から、ネームプレートをただ引き抜くという、たった1アクションで済むことを、なぜやらなかったのか。



豪徳寺-28
  廊下には、布団が敷き詰められていた。ホームレスがその場しのぎで、寝床にでもしていたのだろう。

 東京に実家が無かったとしたら、僕も紙一重でこういう場所に寝ざるを得ない状況がありそうな時もあったので、これから先のことを考えると、笑ってばかりもいられなくなる絵でもある。



豪徳寺-31
  塗料は剥げ落ち、金属部分からは錆が吹き出ている。老朽化著しい、廃アパート。

 向かいの家の主人は、先程まで洗車をしつつ、”チラチラ”とこちらをうかがっていたが、その後、何処かへ出かけた模様。

 二人の大の男が、廃アパートの屋上に登ってきゃっきゃ浮かれているところを、あまり見られたくはなかったので都合が良い。



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 屋上には、昔流行った、狭い庭などに建てられる、受験生用の勉強部屋のような建物があった。

 子供の頃、家族で熱海に行った時のこと。現地の住宅街を歩いていると、ちょうどこのような、狭い庭に建てられた、プレハブの勉強部屋と遭遇。当時はまだめずらしかったので、僕をはじめ、家族も食い入るように思わず興奮状態に。これが近頃、情報番組とかで特集をしている、お一人様勉強部屋かと。

 建物としては異様に小さいが、子供用の勉強部屋だということなので、それならば自宅から独立しているし、悪くはないなと、好意的な目で眺めていると、その部屋内部から聴こえてきたのは、『デッデッデ、デ、デ・・・』というインベーダーゲームの音。少しすると、ギャラクシアンに変わり、ムーンクレスタのような音も流れていた。

 喫茶店にあったような、テーブル筐体からの音ではなく、ラジカセをわざわざゲーセンまで持って行き、録音したゲーム音を、BGMとして流しているのだろうと思われた。

 ゲームのような機械音を音楽として楽しむということがまず理解できなかったし、ましてや、勉強中に流すなど、『こりゃ、気持ち悪いな・・・』といった感じが、当時の家族の感想だった。ゲーム好きの僕でさえ、怪訝に思ったぐらい。まだナムコが、日本初のゲームミュージックのサウンドトラックアルバム「ビデオ・ゲーム・ミュージック」をリリースする前の話しである。

 今日では、ゲーム音楽はひとつのジャンルとして認められ、交響楽団による、演奏会まで催されるまでになった。

 今思えば、あの熱海の庭の人は、なんて先進的であったのだろうと、驚かされるばかりだが、このエピソードの次に、庭の勉強部屋を意識させられることになったのが、宮崎勤による、あの連続殺人事件である。

 いつか見た熱海のと同様に、庭に独立して建てられた、犯人・宮崎勤の部屋では、プライバシー保護の高さ、その秘匿性ゆえ、日本犯罪史上でも特異な殺人事件の重要な現場として、活用されることになってしまう。

 熱海のゲーム音楽少年のような、先駆的な感性を育むことに貢献する一方で、一歩間違えれば、宮崎勤のような、猟奇的な殺人鬼を生み出す場所にもなり得るのが、この、勉強部屋のような建物   



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 そんないわくつきの勉強部屋のような部屋には、大家さんの受験を控えた子供か、あるいは、ご家族で住まわれていたのか。管理人の住まいのようなたたずまいも感じられる。

 その怪しげな姿も相まって、多大な期待を抱いてノブを回してみるが、固着でもしているかのように、誤差の分さえ動くことはなく、無駄に壁を引っ張っているような虚しい気持ちになり、それぞれの指の腹には刺すような痛み、ジンジンとした腹立たしい痺れでうっ血寸前。



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 横には縦型の小屋。

 ガラス戸を開くと、洗濯機が設置されていたような形跡。



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 屋上の片隅には、燃えカスのようなダンボールを主としたゴミ。

 さっきの部屋のホームレスが、真冬に暖をとったとは思いたくないですが・・・



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 芸術っぽく、撮ってみました。



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 金属なんて、脆いものですね。



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 知っていそうで、知らなかった、和風電灯の中味は、長い蛍光灯の一本入り。



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 洗濯機さえもなく、ここまで来て手ぶらでは帰れないと、暗闇ゆえ途中退却したあの部屋へ再度行ってみようという話しになる。

 北海道廃墟探索ならヘッドライトや懐中電灯は常に装備しているが、都内ではまさか想定していなかったので、Nさんがスマホのライトで照らしてくれることに。



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 引っ越し寸前で取捨選択をし、いらない物を残していったのか。



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 場末のフリマでも売れないような物ばかり。



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 業務用のスポットライトか。



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 スイバル方式のシャープの8ミリビデオ・カメラ。

 エロ動画でも撮ってあったらと気にはなりますが、そこまでの検証はしなかったです。



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 折りたたみ椅子が複数。業務用ロッカーも。座るタイプの、酸素カプセルのようなものもあった。

 一般家庭ではないような感じが。



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 リコーのコンパクト・フィルムカメラ。

 シャープは今や台湾の会社。リコーはカメラ事業の撤退が報道されたばかり。アベノミクスの果実は、どこにあるというのか。



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 せめて、片付けのできない住人の正体を突き止めてやろうと、アグレッシブに踏み込む   



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 クリスマスツリー。



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 「SINCOL」の文字。

 シンコール株式会社という、インテリア商品の専門商社のようです。

 その実は、



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 平成二十三年の年賀状。宛名無記名の年賀ハガキがそのままに。

 この部屋の主(あるじ)は、整体治療などをやられていたようです。

 もしかして、ここの治療室を経営されていた方がアパートのオーナーで、突然のご不在(失踪や死)により、廃墟化していったのではないかと、整合性のある、もっともらしい結論をとりあえず、導き出す   



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 オーナーが不在であるということは、当分の間、この廃墟は、その劣化して崩れかかった汚い姿を、街の観光地でもあるような緑溢れる公園の横で、晒し続けることになるということである。



終わり…

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