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 もうそれほど時間が残されていない受験生のキョーコさんにとって、極めて危険とも思える、募る一方の所ジョージへの愛。

 所さんに会いたいばかりに、ウワさのチャンネルの一員に加わりたいと、コメディアンになってやるだとか、どこまで本気かわからない発言を繰り返す。

 金山君と所ジョージへの妄想愛で明け暮れた、北の大地の  キョーコさんにとっては、実り無き短い  夏休みだったが、ついに新学期を迎えることになる。

 始業式の当日に、史之舞より電話がかかってくる。

 その内容は耳を疑うものであった。

 夜通し、豚やネコのモノマネをやり続け、施設へ入院しているような、それでもキョーコさんより年上の史之舞が、実は、不倫をしていて、相手の奥さんに密告電話がかかってきたのだという。

 お金がないのに、デパートまで出掛けていって、買えもしない所さんのLPを指をくわえてただ見つめていたような、まだ子供かと思われたキョーコさんが、突如、男女間のドロドロとした愛憎劇に巻き込まれることになる。

 なんとかこの不倫問題を解決したいと誓うキョーコさんだが、中学三年生の少女に、この時分、そんなことをやっている暇はあるというのか   



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1978  8 月 2 1 日   0:15

始業式 だった のだ 。  べ つ に な し  .
史之舞 から 電話 が あ っ た  .  ひじ ょ う に
か わ い そう , BUt まわり に はMotherがいたから
さ , 内容は 秋 か わ さん に  つ き  あ  う の やめよう と
言われたんだ っ て  . 理由 は   し ら ん人 か ら
 お くさ んに 電話 があって だんな (秋かわ さん)が
だれか と  つきあって る っ て来たんだっ て . どう いうこと
 も し かすると  とこち ゃんじ ゃ ないだ ろうなあ
 もしそう う だ っ た ら  私がな んと か しなく ちゃ  ,
どうしよう も ないけど  . . . .  .    。 も う  あいつ と
えんを き る ぜ !   金山君   ,
もうすぐ 金山君 に会える のじゃー
所さん は明日  よ   .  今日は
千春  だ   オ ー ル ナイ ト ニッポン
 でも聞か な  い  ,  明 日 も
学校 だ もん ね ~~~~ 。
さ て と  も う  ね  る
大好きな 金山友彦 と 所ジョージ へ
 ** Stap by stap  。 人生を ,  おやすみ

始業式といっても、金山君と会えるのは集体ぐらいだし、過疎の中学ゆえ、クラスメートは数名しかいないので、特に感動も何もなかった様子。

僕の中学の頃の新学期といえば、どこへ旅行行っただとか、妙な髪型にしているなど、皆大騒ぎだったので、多すぎるクラスメートというのも、悪いことばかりではないようである。

>史之舞 から 電話 が あ っ た  .  ひじ ょ う にか わ い そう

新学期早々、キョーコさんいわく、非常に可哀想だという電話が、史之舞よりかかってくる。

>BUt まわり に はMotherがいたからさ , 

携帯電話が普及する前の気苦労。母親には知られたくない内容の話しだった。

>内容は 秋 か わ さん に  つ き  あ  う の やめよう と言われたんだ っ て  .

今までの日記を読んでいると、俄には信じられないが、史之舞が「秋かわ(仮名)」さんと、つきあっているということのようだ。それで、秋かわ(仮名)さんの口から、交際を解消しようと、別れ話を言い出されてしまったと。

以前に、史之舞が施設から帰って来ると、「秋かわ(仮名)さんの話しばっかり!」とキョーコさんが少し迷惑そうに記していたことがあった。

僕としては、施設に秋かわ(仮名)さんという友達がいて、その人の面白話にでもつきあわされているのだろうという解釈だった。しかし、僕のところへ個人的にメールが来て、

「昔は、秋かわ病院と言えば、実在する有名な精神病院だったので、子供を叱る時などに『言うことを聞かないと、秋かわ病院に入れるわよ!』と隠喩として使用されていました。サザエさんにも、そのような回があるくらいです」

というような指摘を受けた。なるほどと納得することしきり。キョーコさんは、精神病院の話をまたしつこく史之舞から聞かされてぼやいていたのだと、その時は思っていたのだが・・・

どうやら、秋かわ(仮名)さんとは、驚くことに、史之舞の交際相手であり、しかも   

>理由 は   し ら ん人 か ら お くさ んに 電話 があって だんな (秋かわ さん)がだれか と  つきあって る っ て来たんだっ て . どう いうこと

史之舞の交際相手である秋かわ(仮名)さんには奥さんがいて、しかも、不倫をしていますよと、匿名の密告電話が、奥さんにかかってきてしまったと。

この内容から、男か女かいまいち断定できなかった史之舞の性別が、女性であったということが判明をする。

>も し かすると  とこち ゃんじ ゃ ないだ ろうなあ

不倫をしていたとはいえ、愛する、史之舞姉さんを貶めるべく、匿名で相手の奥さんに告げ口をした犯人の目星をある程度つけている、俊敏に鋭い勘を働かせてみせたキョーコさん。

>もしそう う だ っ た ら  私がな んと か しなく ちゃ  ,

たかだか、中学三年生の、恋愛経験もまだあまりない少女に、何ができるというのか。姉貴にやめなさいと、直言したとして、そういった会話が成り立つのかも、微妙なところである。

>も う  あいつ とえんを き る ぜ !   金山君   ,

とこち ゃんという人が、どういった立場の人なのかは不明だが、不倫を奥さんに知らせてあげた、勇気ある告発者であるかもしれないのに、我が姉貴を全面支持するキョーコさんは、縁を切るとまで、強い口調で言い放つ。言いかえれば、人一倍、姉思いの妹でもある。

金山君に問いかけるような言い方をしているということは、とこち ゃんは学校の同級生なのか。あるいは、次のセリフに繋げる意味合いから、流れからくる単なるノリであったのか。

>千春  だ   オ ー ル ナイ ト ニッポン でも聞か な  い  , 

いかつい顔が好みの彼女。当時の松山千春では、まだ美青年過ぎて受けつけないのではと思われる。松山千春の頭髪がある程度抜けきって顔つきが険しくなってきた頃、段々と惹かれていくような気がしないでもない。

> ** Stap by stap  。 人生を ,  おやすみ

スタップ・バイ・スタップ。

書き間違えている様子。注目したいのは、翌日も、例の「まけるなくじけるな」が表記されていないこと。

姉貴の不倫を心配するような立場になり、精神的に成長をしたからなのか。塞ぎ込んで自分を励ましている場合ではないと。家族や、特に史之舞を私が救ってあげなくてはと、あるひとつの少女の成長を、その文字列より、今、見届けることに相成ったのであろうか   



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 1978 年  8 月   2 3 日   (29 日) 1:00

(2 2 日)
*今日 史之舞が 来 て い た  .
そして 夜 お そ く まで   兄. 姉  . 私  で  お 話 を
し て い た .    ビール  も ち ょ っ  ぴ  りのんだのよ  。
そ ん な も  ん ね   ,   お やす み  ,
  + 所ジ ョ ー ジ のオ- ルナイ ト ニッポ ン き い た の だ  。
 (23日 )  タモリ の  たん じ ょ う 日 な の  ?
今日  .  ねぼう し て し ま っ  た  .   そして 車 で 学校 まで   ... ..
も 一つ  .   集体 が あり ま し  た  .   女子は  バスケ  .  男子は
サッカ    .  私 は  やらんか っ た  見てるだ け  .
 2: 30分 にな った ら   . 駅  に 行 くこ と  に し  た  、,
男子はサ ッ カー  を して いた  .  金山 君 が  ボ ールを
お っ か け て  い た   ,   す ご  い 顔だった . だ っ て
人の ほ う を  も ろ に   ま っ  し  ょう 面 に 向 か っ  て
走 っ て く る んだ も んね   ___________ 。
  今日 タモリ の オ  ルナイト ニッポ ン 聞 てんのよ .
 タモリの たん生日^パー ティー*だ っ て  .   今   ,  タモ リのために
所ジョージ が  3 3才 の う た  うた っ  て ん の よ   ,
 カッ コ イイ  .  お も ろい  ね ~~~~ 。
 お っ か し い  よ ~~~~~~  !  じ ゃ ね  .
          おやす み 。
  8月 23日  3 3 才

史之舞が家にやってきて、兄や母と交えて話の場をもつ。

>そして 夜 お そ く まで   兄. 姉  . 私  で  お 話 をし て い た . 

この様子だと、不倫の話はでなかった様子。姉との大人の秘密を頑なに守るキョーコさん。

>ビール  も ち ょ っ  ぴ  りのんだのよ  。

初飲酒だろうか。ここ数日で、すっかり女性への成長を意識し始めている彼女。

>(23日 )  タモリ の  たん じ ょ う 日 な の  ?

当時でも、タモリの誕生日を気にするような、奇特な女子中学生はいたのだろうか。少なくとも学校では誰もその話題に触れないので、仕方なく、日記内において確認の意味で自分に問いかけているのだろう。オールナイトニッポンで誕生日祝いをやるかもしれないから、楽しみだなと。

>金山 君 が  ボ ールをお っ か け て  い た   ,   す ご  い 顔だった . だ っ て人の ほ う を  も ろ に   ま っ  し  ょう 面 に 向 か っ  て走 っ て く る んだ も んね   ___________ 。

放課後の練習。一切手抜きなしの常に全力な金山君に、心底惚れ込んでいるキョーコさん。ここまでひとりの少女によって観察されていた金山君。数十年後の今、何を想う。

>タモリの たん生日^パー ティー*だ っ て  .   今   ,  タモ リのために所ジョージ が  3 3才 の う た  うた っ  て ん の よ   ,

今の視点で見れば、おっさん同士のむさ苦しいバースデーでしかないが、当時はふたりも若かったので、ふたりに憧れを強く抱くキョーコさんは、曜日を越えたこのビッグなコラボにどんなにか胸を熱くしていたことだろう。

欄外にまであらたまってタモリさんの年齢を書いたりと、遊びというより、本気でタモリの誕生日を喜んでいるようにもうかがえる、生真面目な彼女であった。 



 頭の中は、金山君は揺るぎないとして、後は所さんやタモリのことばかりになってしまったかと思われたが、まだまだ宮脇君や山角君への執着心も強いようだった。

 彼女独特の観察眼をもって、サッカーをしている彼らをまるで実況中継のように、それぞれの性癖などを妄想をしながら説明を加えていく。

 生活の中心がオールナイトニッポンとウワさのチャンネルばかりになっていっているようだが、ノートの日記帳がそろそろ終わりになるというのに、一向に軌道修正の兆候がないまま、日々が書き綴られていく     

 

つづく…

「国民的番組を力説する彼女」 実録、廃屋に残された少女の日記.46