裏廃屋-60
 一見すると平和そうなどこにでもあるミドルクラスの方々が集っているだろう多少なりともある程度の歴史の面影を感じさせる、とある住宅街   

 数十年も封印された廃屋の壁の内側を探索することになり、まず庭の調査を終える。次にはより一層荒れ果てた裏庭へと移動をしてみるが、そこで僕の目に飛び込んできたのは、小窓のガラス戸の隙間に”そっと”挟み込まれたれた金属タワシ。

 この小窓は、こういった古い家などでは便所の下の方に取り付けられているものである。用を足す時などに、ガラス戸を開いて臭いを逃したり、ほうきでゴミを外に出したりする際にに使用されていた。



たわし
 金属タワシを戸に挟んでおくことで、指先が一つ入るか入らないかの絶妙な隙間が生まる。それにより、老眼が進行したご老人でも、適度に開いたガラス戸の隙間へ指先を難なく持っていき引っ掛けることにより、容易にガラス戸を開くことが可能となる。思い切って閉めた時の消音効果もある。これがスポンジだったらガッチガッチに閉まってしまい、同じようにはいかないだろう。

   見過ごされていた、ご老人によるささやかな知恵を汲み上げたはいいが、こんな状態で数十年も放置されているのが東京の一現実だとは、東京オリンピック後はそこら中が廃墟になるのではとさえ思えてくる。



裏廃屋-53
 山荘風の装飾に、赤を主体とした彩色。



裏廃屋-58
 じっとたたずむこと、約数分間。一応の確認。動くことはなかった。



裏廃屋-50
 車のチェーンセット。

 車を所有していた頃は、雪山へスキーにでも行っていたのだろう。



裏廃屋-61
 車に乗らなくなり、やがて自転車さえも。最後にはあのシルバーカートという変遷を、目の当たりに   



裏廃屋-63
 勝手口。バールかなにかでこじ開けて壊された形跡が。

 その時に交換をしたのか、ドアノブの金属がやけに光沢を放っている。



裏廃屋-66
 読みはどうやら的中したらしい。

 晩秋のような昭和ロマン漂う家には似つかわない、防犯を意図した近代的なスポット照明。空き巣にでも入られて、防犯の強化を余儀なくされたのだろう。鍵もそっくり交換するはめになったと。



裏廃屋-64
 勝手口から、来た道を振り返る。



裏廃屋-78
 その大きさから、夫婦茶碗の”夫”の方ではないかと。

 やはり最後はお婆さんがおひとりで・・・



裏廃屋-65
 暗がりが見え隠れする倉庫へと、行ってみることにする   



つづく…

「陰鬱な廃屋」 山荘風の空き家、ぬくもり探訪.5

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