トロピカル-157
 壊れていたスクーターが、半年以上ぶりに無事、故障から復活を遂げたので、試運転も兼ねて、どこか近場で手頃な物件はないものかと探してみることにした。

 エンジン内に溜まった煤を一気に吹き飛ばせるような、ある程度のストレートを気持ちよく快走できるような道程であること。

 建物内部に潜入できること。

 加えて、世の潮流から逆を行く、インスタ逆映えするような、荒涼とした情景が切り取れる対象物はないものかと、熟考を重ねてみる。吹けば飛びそうなこの廃墟系ブログが、有象無象の中で埋没しないためにも、ブームに乗っかり、対抗マウンティングをするのは自然な流れであると言える。

 そのようにしてして、勘案の上導き出した結果が、第三京浜を横浜まで行って港北のインターで降りてすぐの所にある「ホテルトロピカル」という廃墟ラブホテル。

 最上階の四階には、夥しい無数の血手形紋の乱れ飛ぶ部屋があるとか。相当な逆映えが期待できる。



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 虫酸が走るようなインスタ映えブームに切り込むかのような、廃墟でのインスタ逆映え活動と同様、反骨心の象徴ともいえるのが、このスクーター。

 プリウスやテスラなどという、低燃費をうたうエコカーの真逆に位置する、2st、180ccのイタスク。もちろん高速道路にも乗れる。

 もう長いこと所有をしていて燃費は悪いながらも、エコだと言いつつ次から次へと買い換えるよりは、よっぽど経済的。

 ビンテージバイクならともかく、今どき、環境性能を全く考慮していない、2スト中型クラスのエンジンが載ったキチガイみたいなスクーターだ。

 朝の一発目の始動は、周囲数十メートルは排煙にまみれるので、住宅密集地での所有は難しいだろう。



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 100km/hまでの加速なら、TMAXやシルバーウィング600といった、大型スクーターより速い。

 250ccクラスのフォルツァや、原付二種のアドレスやPCXに乗っている人達からはなぜか憎悪剥き出しで絡まれることがよくあるが、全く勝負にならない。向こうはこれを台湾製の原付きとでも思っているのかも。

 本日、プライベート・サーキットでの加速では、車を追い抜きざまにメーターをみると、130km/hは出ていた。まだ余裕があったので、発売当時の雑誌や他の所有者のデータと同じく、最高速度は140km/hぐらいは行きそうだ。ちなみに、これは初期型なので、いわゆるハッピーメーターではなく、実測に近いと言われている。

 高速道路は年に数回乗るか乗らない程度なので、これだけ速度が出れば文句はない。

 十年以上前に新車で買ったものの、道中で壊れそうなこともあり、長距離はほとんど乗らず、まだメーターは一万キロも行っていない。



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 ホームセンターで売っている汎用パーツを組み合わせたナビスタンド・システムとしては、一番完成度が高いといわれているのがこれ。

 なかなか他で見られないのが、ナビの中央鎮座。おまけに、高さがあるから、メーターを塞がないという利点もある。これには、やっとの思いで探し出した、”乙型金具”の背の長さが絶大なる恩恵をもたらしている。

 ホルダーの位置が高いということは、視線移動が少なくて済み、視認性と安全性が高まる。

 アドレスとかで真似をしたいという人は、どんどんやってみて下さい。



トロピカル-197
 フルフェイスがメットインスペースにすっぽりと入るのもポイントが高い。ベスパの250は半キャップがギリギリという使えなさ。

 自分以外に装着している人を見掛けたことがない、頭の上まで覆う超ロングのユーロ・スクリーンは、雨が降ると水滴で視界が遮られて何も見えなくなるので、絶妙な高さでカット。ナックルガードも兼用。ハンドル・グローブはバーエンドのネジで直止め固定。

 アマゾンのカメラリュックはGIVIのリヤボックスにぴったり入るし、もう、完全体ではないかと自惚れてしまうほど。

 おっさん仕様のフル装備だが、非対称の配色や、グラマラスな造形など、イタリアンデザインの優美さで相殺するどころか、相まって昇華されてしまっている。

 同じことを、ヤマハやスズキのスクーターでやってしまうと、それはもう、バイク便か新聞配達のスクーターにしか見えない。



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 どうでもいいスクーター自慢はさておき、愛車を第三京浜の高架下に駐車をし、目的の「HOTEL トロピカル」前へやって来た。



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 重く降ろされたシャッターには、入れそうな隙間が見当たらない。

 破壊された窓や落書きなど、紛れもない廃墟物件。



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 背後には、シューマイで有名な「崎陽軒」の工場があった。

 下調べと違い、一見して、侵入口は無いように見えるが・・・



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 まさか、昔あったビルを登るテレビゲームのように、壁を覆う蔦を伝ってあのベランダから入るというのはちょっと非現実的だし、白昼堂々、それはあまりにも無謀。



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 そんなに値段は高くもなく、車での利用なら、港北インター下車ですぐなのに、こんな無残な姿となってしまったのはなぜなのか。



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 長年の研ぎ澄まされた嗅覚により、僅かな綻びさえ見逃さなかった僕は、車の途切れた頃合いを見計らい、蟻の一穴より、一気に内部突入を果たす。

 少なくとも、脇の道には車両が無く、間近で目撃されるようなことは避けることができたはず。

 大通りからはおそらく、射るような視線が背中に突き刺さっていたのかもしれないが、刹那的に通り過ぎる人は、案外深くは追わないものだということは、今までの経験上からそれとなくわかっていた。



トロピカル
 本来なら、車を停める場所なのだろうか。なだらかなスロープがあり、暗い空間が奥に広がっている。



トロピカル-2
 手前のドアから、鼻先を擦るようなかすかな冷気が漂ってきたような気がした。

 懐中電灯を取り出し、奥へと入って行ってみることにする   



つづく…

戦場のようなフロア」血紋だらけの廃墟ラブホに行って来たよ.2

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