裏廃屋-67
 近所にある、およそ数十年間は封印されていただろう廃屋に忍び込む。

 表立って語られることのない、都市部の空き家の実態を調査するべく、かつてない詳細な検証を続けるに至る   



裏廃屋-70
 大瓶用のビールケースがある。背後の壁際にはバトミントンのラケットも。

 ビールは先立たれたお爺さんの痕跡だとしても、バトミントンのラケットは、老夫婦が使っていた物ではなく、孫か、巣立っていった息子の所有物だったのか。



裏廃屋-72
 ポストには、クラシアンのような水まわりの修理業者のチラシが入っていた。その業者が来たのかは定かではないが、蛇口を替えたのは確かなようだ。



裏廃屋-73
 食材が入ったままの鍋まであった。

 ガラス蓋を開けてみる   



裏廃屋-71
 カッチコチに固まっていて開かない。

 傾けても内容物はそのまま。中味は食品サンプルのように固形化している。

 ガラス蓋から透けて見える色味からして、カレーのようだったが・・・まさか、最後の晩餐(結果的に)は、カレーの予定であったのに、その前に息絶えてしまったのか   



裏廃屋-76



裏廃屋-85
 洗濯機導入など考慮されずに建てられた古民家。ホースで水を外の水道から引っ張っていた。

 真冬もこの状態だったら、家の中は凍え死ぬぐらいの寒さになってしまうから、冬はその都度ホースを引っ込めていたと考えられる。

 つまり、絶命を迎えたのは、冬季以外の時期と見るのが妥当   



裏廃屋-77
 職人の技が光る細部のつくり。



裏廃屋-82
 山荘風なのはもはや疑いようもない。



裏廃屋-79
 育て上げたはいいが、行方不明だと思われる、息子の学生カバンが。

 どこで何をやっているのやら。立派な家をそのままにして。



裏廃屋-81
 すぐ横にあったこれは、自然な流れとして、息子の革靴ということなのだろう。



裏廃屋-80
 小ぶりなスコップ。



裏廃屋-86
 峠の釜めしで有名な「おぎのや」の釜飯の釜。

 ちなみに、益子焼。

 横川駅までわざわざ行ったのではなく、新宿が結構近いので、京王デパートの駅弁祭りで買い求めたのではないだろうか。



裏廃屋-69
 一年に一回開催される、年末の一大イベント、京王デパートの駅弁大会   

 その当日には、ご老体に鞭打って、最大限のお洒落をし、新宿駅まで持病の腰痛を堪えつつ、出かけるのを何よりの生きがいとしていたお婆さん。



裏廃屋-68
 駅弁をこよなく愛した老婆の家の終着点。

 行き止まりに物置。



裏廃屋-75
 空き家問題解決の糸口にでもなればと・・・適当な言い分を自分の中で復唱し、戸に手をかける   



裏廃屋-84



裏廃屋-74
 映画「死霊のはらわた」の地下室への蓋を思い起こさせるような戸と隙間。

 戸としての機能はすでに失われている様子。微動だにせず。

 壊してまで開けてみようとは思わなかった。



裏廃屋-88
 下宿人がいたこともあったのか。



裏廃屋-98



裏廃屋-103
 打痕跡からすると、右利きであり、グリップ力をあげるために、ビニールテープを巻くなど、細かな工夫をする女性であったことが推察される   


 特に得るものもなく、気が重くなるだけの廃屋だったので、これからの廃屋の選定には充分な時間をかけ、何かしらの感動を自他共に呼び起こさせるようなものにしなければならないなと、自戒をしつつ、不動産会社の調査員風を装い、何食わぬ顔で門を背にして、猛ダッシュで廃屋から離れて行ったのだった。



終り…

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