失踪したしのまいとの、あの日の会話を、彼女は僅かな記憶を手繰り寄せ、訥々(とつとつ)と語りだした・・・・・・


屋根6
「・・何か思い出したでゴワスか???」金城が訊く。

 母親は思わず出した叫びに赤面しながら、小さな声で続けた。

「ごめんなさい、大きな声を出して。つまらないこと、全く意味の無いことかもしれないんですが・・。」

「奥さん、今は奥さんだけがたよりです。どんなつまらないことでもいい、その日の会話を思い出してください。」

「ええ。あの、そのとき、私、訊いたんです。妹さんがおられることを以前に聞いていたので。”妹さんも見えるんですか?”って・・。」

「・・それで・・!?」『妹』の一言に、一堂に緊張が走る。金城が勢い込んだ。

「それが・・。あの、変に聞こえるかもしれませんが、確かあの時しのまいさんは、こういわれたんです。”妹はもう三角形なのでかえってこない”・・って。」


二人2
「・・三・・!?」白河と金城が同時に声を上げた。

「妹・・と確かに言われたんですね?確かですか?それで・・”三角形”とは??」

 金城を制して、白河が訊く。母親は目をつぶって一生懸命思い出そうとしている。

「ええ、そうなんです・・・・いえ・・違いますわ!正確には・・」

「奥さん、お願いします。そのとき、言われたとおりの言葉を思い出せますか・・?」

 白河が食い下がると、母親はイライラしながらその言葉を手で遮った。

「ええ、やっていますわ・・・今やっています。・・ええと・・。」

   瞳を閉じて再び額に手を当てる。


写真2
「・・・”妹は、もう三角ちゃんだから、帰ってこない。”」(ここで大きく目を見開いた)「・・ええ、確かにそう言いましたわ!」

「”妹は、三角ちゃん”・・・?」金城が呆けたように繰り返す。

「おかしい、とお思いになるでしょう?私も聞き違いかと思って、”えっ?”とたずねたんです。するとしのまいさんは何かご自分だけにわかる気の聞いた冗談をきいたみたいに一人で笑ってらしたわ。すこし寂しげな表情で・・。・・ええ、間違いありません。あの”妹は三角ちゃん”という言葉に対して笑っていたんですわ。」

 白河は黙って窓辺に歩み寄った   


三角2
 『妹』とはもちろんキョーコさんのことに間違いない。・・・だが「三角ちゃん」とは一体・・。地名なのか??それともいまキョーコさんがいる状況を表す何かの比喩なのか・・?

 病室のドアが開き、幸子をつれたサブが白河に目で問う。白河は黙って頷いた。

「おじちゃん、今度はアイス。約束だよ!!」

 幸子の前にかがみこんだ澪が、サブに代わって幸子と指切りを交した   




こんな記事も読まれています