富士見ヶ丘レタ-67
 ネット上にあったちょっと気になる書き込みに目を奪われる。日付を見ると、数年前のものだった。

 写真には、貧素な空き家が三軒並んで写っていた。僕も聞いたことのある通り沿いに建っているという。

 背後には森。

 空き家といっても、溝口健二の「雨月物語」にでてくる焼物小屋のような、土壁の、しかも、ところどころの壁は剥がれ崩れて、中の藁が見えかけているような、東京都市部ではもはや映画のセットでしかお見かけしない、相当な年代物の建物。

 詳細な場所は示されていなかったが、いくつかのヒントは書かれていた。都内であるというところまでは隠してない。

 ヒントをもとに、グーグルのストリートビューで精査してみたところ、まんまの場所に辿り着く。

 放置され荒れ放題の竹林と濃い目の藪が形作る、森と形容しても相応な、数区画にも渡る鬱蒼とした茂みが、住宅街の真ん中に存在している。しかも、杉並区の、駅から徒歩で十五分もかからない土地に。

 もっと驚いたのは、その三軒の空き家の後方にひろがる森の中。

 ストリートビューでは、自主規制が働いているらしく、肝心の森の中の様子は寸前でスキップされてしまう。これは廃墟調べあるあるでもあり、街中の怪しげゾーンでは多い現象。どうみても自己申告による申請などではない。

 スキップゾーンの手前で目を凝らすと、森の中に取り残されたかのような空き家が、うっすらと確認できた。それも一軒だけではなく、集落のように複数あるようにも見える。肝心な所まで行くと、ワープをしてしまうので、ネット上では詳細なところまではわからず。

 界隈一帯の土地を所有する孤独な大地主が、跡取りもおらず、他界してしまわれたのか。

 メインの森以外にも、路地を跨いで、同様に森やその中にも廃墟がいくつか存在している様子。

 ざっと確認してみても、他のサイトなどでは未紹介のようである。もっとも、グーグルの深層まで掘り下げたわけではないが。

 これは行かねばと、どんよりと曇り、むんむんとした湿度のある蒸し暑い、夏の某日、早速、杉並区のとある森の中へ、周辺に最大限の配慮を払いつつ、踏み入ってみることにした。



森 前37
 駅から徒歩で15分もかからない場所に、その三軒空き家の森はあった。

 三軒空き家の森の区画の隣に、一軒のこれまた違う空き家を発見。

 こじんまりとした侘しい日本家屋に見えるが・・・



森 横
 横から拝見すると、奥に長いたいそうな邸宅であることが判明。
 


森 玄関
 自分で閉じる。

 不動産鑑定士でもない男が、昼間から何をやっているのかと自嘲気味にもなる・・・



森 廊下
 北海道の廃屋と違うのは、この時点ですでに、老夫婦とおぼしき隣家の話し声が聞こえるということ。



森 トイレ
 杉並区の住宅街だけあって、人為的に荒らされた形跡はない。



ふすま
 無防備ながら、ホームレスはおろか、


居間
犬さえ侵入した形跡は見られない。



背後
 流行りの民泊転用は無理のようです。



天井
 全壊まで、持ってあと三年ぐらいでしょう。



二階
 二階のすれすれの場所で撮影。



石
 老夫婦の会話が早口になり殺気立ってくる。

 まさか僕のことではないと思うものの、取り返しのつかないことになりそうだったので、早々に退却を決める。



向かい
 道を挟んだ反対側にも森があり、その奥に仄見える、またもや、廃屋。



奥底
 杉並区にも、こんな秘境の廃村集落みたいな場所があるんですね。



中
 四方の壁のほとんどが失われ、床板も同様、基礎のあちこちが剥き出しの状態。

 散見される一帯の廃屋巡りをした後、いよいよ、「三軒空き家の森」奥に眠る、空き家群落へと赴くことに。

 竹林の中のそれらの廃屋の数々には、昭和四十年前後のものと思われる残留物がいまだ多く残されていた。

 人目に触れられないまま、まるで樹木に覆われて保護でもされていたかのように、とはいえ、崩壊の度合いは如何ともしがたく、静かに緩やかに土に還ろうとしているようだった。



つづく…

「もう一つの森の中の廃墟」都会の秘境、森の中に眠る空き家群落.2

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