富士見ヶ丘レタ-60
 聞き覚えのある名前の通り沿いにたたずむ、土壁で出来た半壊気味の古めかしい三軒並びの空き家。問題の集落は、背後にひろがる森の中にあり、三軒の空き家は結果的に、人目を欺くような、デコイの役目を意図せず果していたようだ。

 わざわざ図書館まで行き調べてくれた人の情報によると、それらは昭和四十年頃には既にそこに存在していたという。

 今回、森の中の探索とはいえ、たかが杉並区の住宅街だということで、舐めてかかってしまい、大失敗を犯してしまった。

 下半身の仕様は完璧だったが・・・・・・

 かつて僕は、ニューヨークのマンハッタン、タイムズ・スクエア近くにあった、伝説の安ホテル、トランプタワーから徒歩で十分もかからない場所にあった、そのホテルに、半年ほど住んだことがあるが、当時、アメリカンドリームを掴もうと、ニューヨークにやって来た日本の若者の吹き溜まりのような場所であった”その”ホテルから数ブロックぐらい離れた米軍放出品を売る店で買い求めた、もうお馴染みのコンバットシューズ。8(エイト)ポケットのロスコ・カーゴパンツ。下だけはスキがなかったと断言できる。

 森の中の空き家探索当日は気温三十度以上の酷暑ということもあり、上半身は半袖で妥協したのが間違いだった。

 群生する竹や密度の濃い藪をかき分けて行った先の森には、久方ぶりの訪問者に群がりでもしたのか、無数の蚊の大群により、両腕はまるでゴーヤのようにボコボコに膨れ上がり、痒みからカメラをかまえることもままならなくなってしまったほど。

 冬季や、車やバイクで目的地へドアtoドアならば、格好はどんなでも良い。問題は灼熱の夏、都会への、電車などによる、人目のある公共交通機関を利用する際のいでたち。

 やはり、夏とは言えど、半袖は厳禁であると、今回思い知らされた。ヤブ蚊以外にも、凶器と化した枝や木片に露出した腕を切り刻まれる可能性が高いので、長袖は必須だ。

 純然たる上下アーミー服では、若手刑事の職質練習の餌食になり、繁華街もオチオチ歩けないのが東京である。

 冬であったなら、以前からよく着ている海外製のワークウェアでも良いが、厚ぼったいので、真夏にその長袖を着ていたら、熱中症にかかってしまう可能性がある。

 首周りへの蚊の襲来を防ぐために、襟は長めが好ましい。薄手だが長袖であって、ポケットは複数必要。汚れても叩けば落ちそうな、春夏用の作業着がそれに当てはまりそうだが、電車内や高級住宅街において怪しまれないためにも、一般人風の、こざっぱりとした、お洒落なジャケット、ブルゾンでそういう物がないものかと、探してみることにした。

 結果   

 真夏の都会での廃墟探索需要にドハマリな商品を、選び出すことに成功する。

 廃屋以上に廃屋然とした、元大邸宅で隠遁生活を送る、生き仙人との出会い時に早速着ていたが、不意の訪問にも彼が僕に警戒心をそんなに示さなかったのは、正装にも見えるこの服のお陰だったのではないだろうか。

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作業服・作業着・ワークユニフォーム春夏用 ストレッチ長袖ジャンパー 自重堂ジャウィン Jichodo Jawin 56500メンズ
作業服・作業着・ワークユニフォーム春夏用 ストレッチ長袖ジャンパー 自重堂ジャウィン Jichodo Jawin 56500メンズ

 従来のこの手の商品は、普段着でも着られそうだなと思っても、メーカーの妙な自己主張の強いマークがデカデカと右肩あたりに縫い込んであったりして、「かっこわる」と敬遠することが多かった。

 この商品は位置的に腰あたりに英字の筆記体が控えめにあるだけ。

 ストレッチ素材で若干の重みもあり、がっしりとしているが、薄手の生地で炎天下でも蒸れることはなかった。

 物入れポケットはZIP製の大きいのが胸に二つ。薄いジャケットでありながら、両腕を突っ込むポケットがあるのは、作業着ならでは。ペン入れもあるが目立たない。ボタン類はホイール製で頑丈なので取れる心配はない。見た目はユニクロでも売っていそうな、カジュアルなブルゾン。これなら、電車内で一般人を装えるだろう。

 気になる点を少しばかし。

 生き仙人との熱い弾む会話で大量の発汗をし、それが乾いて塩となり筋張った線状の模様痕として残ってしまった。独特の線状痕だったので、特殊な素材が影響をしているのかも。僕はブラックを選んだので、気になる人は薄目の色がいいのかもしれない。

 襟のジッパーは先端まで行き届かせて欲しい。ボタンでの襟閉じは格好だけで面倒でしかない。


服2
 あと、この服に限ったことではないが、端の折り返しが縫っていないからピラピラするのと、補強用の型に紙みたいな素材を使用しているのがいただけない。この紙みたいのは、数十回も洗濯をすれば、破れて散りじりとなってしまい、洗濯槽を漂い、大量の白いカスが他の服にも付着するという、最悪の結果を引き起こす可能性がある。

 作業着は消耗品だし、コスト的にもこの値段だと仕方ないのかもしれないが、これだけは残念。

 とは言え、最適なツールを得て、これからの活動にも弾みがつくというもの。しかしながら、この時点では当然半袖であり、この先での樹林のような茂みの中では、大量の蚊に、悩ませられることとなった   
 


富士見ヶ丘レタ-39
 三軒空き家の奥へと行く前に   

 横の細い路地の向かいには駐車場があり、その背後にもまた森。

 建物がチラ見えするので、森を進んで行ってみると、一軒の廃屋が隠れていた。



富士見ヶ丘レタ-42
 奥なので誰も気づかないのか、落書きとかはない様子。



富士見ヶ丘レタ-46
 規模的に地主クラスと思われるが、どういった経緯でそのままにしてあるのか。



富士見ヶ丘レタ-47
 まだ23区内にも、隠れた廃屋ロマンが眠っているものなんだなと。



富士見ヶ丘レタ-48
 この空き家は、昭和四十年よりもっと古いことが確実だろう。



富士見ヶ丘レタ-49
 壁だけがかろうじての状態。



富士見ヶ丘レタ-50
 その昔の族っぽいヘルメット。

 アライでもショウエイでもなく「HA」との表記がある。

 息子さんの物だとして現在もご存命なら、相当なお年かと。



富士見ヶ丘レタ-51
 右回りで行ってみたいと思います。



富士見ヶ丘レタ-52
 こちら側は後年、ブロック塀を設置した様子。

 それでもゴミを投げ入れる不届き者が後を絶たないようだ。



富士見ヶ丘レタ-54
 腐葉土にはなりきれない品々が横たわる。



富士見ヶ丘レタ-55
 有名どころの廃墟と違い、誰が破壊するわけでもなく、都会の森の中で人知れず、静かに土に還えりつつある儚げな廃屋がここに   



富士見ヶ丘レタ-56
 赤ヘルメットがあった反対側に来る。

 打って変わって、良好な状態を保っている。



富士見ヶ丘レタ-58
 廃屋生き仙人の家にも同様な物があった。さすがにもう牛乳はとっていなかったが、実に意外なものを”とって”いて驚いて思わず「本当ですか!?」と聞き返してしまった。



富士見ヶ丘レタ-57
 中は空でした。



富士見ヶ丘レタ-165
 ブロック塀を外側から見てみようと思い行ってみると、グニャリとしていて、いつ倒れても不思議ではないのけぞり具合に。



富士見ヶ丘レタ-149
 森の中ではないものの、手前にもまた廃屋集落があった。

 縁側に物が並べてあり、ガレージセールでもやっているのかと思ったが・・・・・・



つづく…

「廃墟写真がもたらした病状」都会の秘境、森の中に眠る空き家群落.3

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