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 最近、僕が特に注目をしているのが、都市部の住宅街を歩いている時などに、忽然と目の前に出現する、土地から収まりきらない濃い緑の茂みがまるで上へと噴出でもしたかのような豪快な姿を見せる、それでいて物寂しげな都会の街の中の孤独な森の存在。

 荒んで険しそうで服を痛めつけそうな様子の森にはあまり関心を示す人はいないらしく、中に何があるのだろうか?と、興味津々、覗いてみる好き者は僕ぐらいのようだ。

都会の森に埋もれた廃アパート

都会の秘境、森の中に眠る空き家群落

 先頃、安室奈美恵が引退を発表。世界中で人気を博したとテレビで紹介されていたが、それは言い過ぎだろう。2000年前後頃に彼女がアジア圏でアイドル的な人気を誇っていたのは(その頃僕はその界隈をよく旅行していたので)確かである。

 今回、僕がひょんなことから入り込んだ都会の森の中で、あるタイムカプセルを発見する。

 タイムカプセルと表現をしたのは、その中で発見した品々は、彼女があの「アムラー現象」を巻き起こして社会現象にもなった時期のその当時の空気とその時代の産物がそのままに残されていたからである。

 時を同じくして、そこにバブルの残骸を発掘したのと、日本経済が輝いていた頃を象徴するような人の引退発表があったのはただの偶然かもしれないが、その後遺症の犠牲者と言ってもいい、”痕跡”をそこに見たのは、紛れもない事実だったと言えるだろう   



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 まだ駅前再開発工事途中だと思っていたら、予想以上に出来上がっている。

 ついでに写真に収めようと思っていた、駅の真正面にあったボロボロの廃屋は、既に真新しいタイルの更地となっていた。



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 気を取り直して向かった先は、西調布駅前から徒歩で5分もかからない距離にある、床屋さんの前のとある駐車場。

 いや、元は庭だったのかもしれない。

 数ヶ月前の寒い時期に訪れた時には、背後の茂みはここまでのボリュームはなく、今立っている場所からでも中の家の姿が確認できた。



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 寄ってみた。



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 以前見た時はまだ人が住んでいる可能性も考えられたが、この様子では完全な廃屋と断言できる。

 夏の木々の旺盛な繁殖力によって、そこそこ大きかった一軒家が、完全にスッポリと埋没してしまっている。



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 右の木造アパートが壁になって拡大を必死になって阻止しているかのよう。



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 こちら側は専用の壁を立てて防御中。

 東京の街中でここまで”緑の館”化をしているのは、なかなか無いのではないだろうか。

 日曜の昼にやっているTBS「噂の東京マガジン」の御近所トラブルのコーナーで取り上げられて、笑福亭笑瓶あたりがレポータでやって来てもおかしくないような案件。

 車が出入りするような大きな門は草むらの中に埋まっていて、横の通用門だけが露出した状態に。



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 どこにもつけ入るスキがない。どう攻めるか、床屋の店先にて、しばし考え込む。



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 裂け目のようなものが・・・



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 ひしめき合い過ぎている。ここまでの茂りようは想定していなかったために、服装は軽装のまま。

 本気モードのカーゴパンツや新調したばかりのブルゾン作業着は着込んでこなかった。



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 今日のところは断念をし、またの再会を心に誓いながら、後ろ髪ひかれる思いで、緑の館をあとにした   



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 歩くこと僅かに数分。

 住宅街の中に、まさに求めていた森が出現。



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 以前通った時は、森の入口から二メートぐらい先が見渡せていたが、今回はその入口がほぼ塞がりかけている。



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 秘密基地探検気分の小学生ならともかく、成人年齢を遥かに越えたおっさんが、ここを突っ切って行くには、かなりの恥と覚悟が必要とされるに違いない。



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 入口。

 分け入って進んでいくと、想像以上に長い森が続いていた。途中には打ち捨てられた廃屋と廃車まであった。始終薄暗い中、更にその先には竹林とけもの道がまっすぐに向こうへ伸びていた   



つづく…

「森の中に横たわるもの」都会の森、横たわるタイムカプセル.2

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