富士見ヶ丘レタ-164
 事前のネット調査では見過ごしていた、アナザー廃屋集落を偶然に発見。

 屋根から壁に覆いかぶさり増殖するヘデラの群生。

 かち割れた大木とシュロの間には大胆にも縄が張られていていて、メタリックな不燃性の車のカバーが干してある。

 車は無さそうなのに、どういった意図?

 昔ながらのこじんまりとした借家の縁側には、円卓ちゃぶ台がまるで売り物であるかのように置かれていた。近寄ってよく見ると、まだじゅうぶん使えそうな液晶テレビまである。

 あまりにも整然と並べられているので、もしやガレージセールなのではと、首を左右、辺りを窺ってみる   



富士見ヶ丘レタ-150
 ご丁寧にもゴム製のサンダルは立てかけてあり、個人のフリマなのでは?という考えが一瞬だけでも頭の隅にチラついてしまったのも無理はないだろう。

 ガレージセールとの疑いを持ったもうひとつの理由として、この廃屋の向かいの家の中から、どうやら人の気配が感じられたからだった。かすかに、時折、茶碗が小さくぶつかる音が聞こえたような気がした。

 今も向かいに住んでいるかもしれないお婆さんが不用品を廃屋の軒先に並べて売っているのではないかという考えも、あながち無いこともなさそうだが   



富士見ヶ丘レタ-151
 廃屋集落の一番奥、左側。

 たった数パーセントの疑念さえ、安全・円滑な探索のためには慎重にに慎重を期していこうとの考えから、手前の二軒はスルーをすることに。



富士見ヶ丘レタ-160
 束ねられた数本の傘と片手持ち縦型掃除機。

 ガラス戸全開。

 人通りはたまにあるが、堂々としていれば、世間の人はそうこちらを気にしないものだということは、長年の活動の積み重ねよりわかっている。

 特殊清掃人か、物件を登録するために写真を撮っている不動産屋か。人はそれぞれ都合よく解釈をしてくれているに違いない。

 絵に描いたような昭和の借家の残影がそこにはあった。

 これから先、ただのひとりでさえ、借り手は現れるのだろうかと余計な心配をしてしまった。



富士見ヶ丘レタ-162
 恒例の、押入れ拝見。

 専用カプセルを使うエスプレッソマシンがあった。最近まで人が住んでいた可能性もある。

 ドールハウスがあるので、家族で住んでいたのかもしれない。



富士見ヶ丘レタ-152
 立地は良し。広さは独身ならゆとりさえある。

 直談判をすれば、五千円ぐらいで貸してくれそうですが、どうでしょうか。



富士見ヶ丘レタ-153
 もう一軒。一番奥の向かって右側の家。

 中央には1DK借家には似合わないゆったりとした二人がけソファー。



富士見ヶ丘レタ-154
 内容としては中南米系の雑誌。日本国内で発行されている在日外国人向けの紙面のようだ。

 昭和ならともかく、ここまでの赤貧木造借家に近年住もうとするのは、長年住み続けているお年寄りか、外国人労働者ぐらいのものなのか。



富士見ヶ丘レタ-155
 先程の借家もそうだったが、なぜか旅行バッグが何個も転がっている。

 最近では消費税の免税分をかすめようとする、金の密輸グループが話題になっている。そういった外国人密輸団のアジトになっていた可能性もありえそうだ。



富士見ヶ丘レタ-156
 ド派手なデザインのスリッパは、ラテンならではのノリか。



富士見ヶ丘レタ-158
 1986年、東京ディズニーランド、三周年のステッカー。

 外国人技能実習生という甘い言葉に誘われて、言葉のわからない、遥か遠い地球の裏側の日本まで夢と希望を持ちやって来たものの、実際にあてがわれた仕事は、レタス農家での収穫作業要員、カキの加工場で一日中殻を割って中の実をただひたすらに取り出し続けるだけという、過酷な重労働の単純作業。恐ろしく低賃金で奴隷のような扱いを受け、精神に異常をきたしてしまう外国人労働者も少なくないと聞く。

 そんな中南米系の労働者が、現実逃避をすべく、束の間の夢を追い求めて縋った先が、東京ディズニーランドだったようだ。



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 日本のアニメにも慣れ親しんだ様子。キャプテン・ハーロックがお気に入り。



富士見ヶ丘レタ-145
 随分と遠回りをしてしまったが、ようやく、この三軒の廃墟の後方に広がる森の中に密かにに眠る、空き家集落を訪ねようと、森の中へ入り込む覚悟を決める。



男
 そこで僕は、ある一軒の崩壊しかかった空き家より、十数枚の写真を”保護”という名のもとに持ち出して来てしまう。

 縁もゆかりもない、何処の馬の骨ともわからない、気高そうな大学生らしき好青年風情が、仲間達と優雅に風光明媚な避暑地で合宿をしている写真だと思われる。

 一銭の得にもならない。決して金目の物ではないけれど、あの日記と同様、土に埋まって微生物に分解される運命なら、いっそ一時的にでも僕が保管をした方がまだマシなのではという、ほぼ病気にも近い、独善的な考えのもとに、いつしか僕のポケットは、写真の束で収まりきれずに膨れ上がり、パンパン状態・・・。

 その夜から、頭痛と発熱がとまらなくなる。特に考え事などをした時に、額が焼けるような熱を持った。

 こんな症状は初めてだったので、極度の不安に陥り、最初は写真が原因なのではとオカルト的な要因に答えを求めたりもして、また、ヤブ蚊のせいなのではという声を寄せてくれる方もいたりしたが、結局その理由が判明をする前に、いつの間にか病気は完治していたのは幸いか。

 残りの青年の写真を眺めつつ、奇跡的に残っていた森の中の空き家群落を写真に収めつつ、ここ数ヶ月、いや数年?人跡のない都会の中の歪のような荒れた森を突き進んで行ってみることに   



つづく…

「竹林の中の限界家屋」都会の秘境、森の中に眠る空き家群落.4

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