富士見ヶ丘レタ-62
 背中のカメラバッグを引っ掛けてしまい、ギギギッと、弓の弦(つる)のようにしならせ杭を若干傾ける。ここでオロオロしていてはひと騒動になってしまうので、プチンと背中で弾けて舞う砂埃が左頬を舞うのを感じるやいなや、体はそれより先にというぐらいに、必死に誰かから逃げるようなえらい速さで脇目も振らずに、気づくと竹林の中を突き進んでいた     



富士見ヶ丘レタ-147
 21世紀の東京の23区内において、名の通った活気のある街道沿いに、こんな時代錯誤のうらぶれた空き家が肩を並べる異様な光景・・・



富士見ヶ丘レタ-69
 一時の恥をしのび、大人げもなく走っていった先には、街の喧騒から隔絶された昼でも薄暗い竹林。

 人の視線から完全に開放される場所だ。

 埋もれつつあるママチャリもポツンと。



富士見ヶ丘レタ-66
 うっすらと、それも複数   



富士見ヶ丘レタ-68
 まだ使えそうですが、ここまで捨てに来るということは、おそらく盗難車でしょう。

 頭を持ち上げると・・・・・・



富士見ヶ丘レタ-67
 ありましたよ、



富士見ヶ丘レタ-65
 杉並区の街のど真ん中に、誰に知られるでもなく、ひっそりと眠る空き家が、次から次へと、あるところには、あるもんです。



富士見ヶ丘レタ-64
 それを期待していたとはいえ、まさかここまでのモノがあるとは思わなかったので、街ブラ散策気分の装いで半袖でやって来てしまうことに。

 こんな都会の見過ごされた森にわざわざ踏み入る暇人は、半年か一年にひとりぐらいか。ネコさえ来そうにない寂しい場所。久しぶりの生き血によっぽど飢えていたのか、おびただしい数のヤブ蚊の襲来と遭遇する。

 耳元で高周波ノイズを掻き鳴らしつき纏い、カメラを構える腕に容赦なくたかる。スプレーなんか用意していなかったので、対処のしようがない。一旦森から出てそこを押さえられたら撮影終了なので、蚊を理由に一時的に退避するわけにもいかず。

 されるがままにしておいたら、腕はみるみるうちに、血色の悪そうなゴーヤのようにデコボコに腫れ上がってしまった。



富士見ヶ丘 90
 痒みをこらえ、正面へと。

 肩が強く戸に触れようものなら、一斉に瓦解して下敷きになりそう。



富士見ヶ丘レタ-70
 スプレー書きの卑猥なメッセージなどはないようだ。



富士見ヶ丘レタ-71
 昭和の息吹を閉じ込めた永久凍土のようなガチガチこんもりとした瓦礫の山に一歩も引くこともなく、両手で軽妙にバランスをとりながら、頂上では蛍光灯に頭をぶつけながらも、用心深く登って行く   



富士見ヶ丘レタ-72
 物がぶちまけてあるのは、家を後にした本人か、侵入者か、自然の成り行きであるのか。足がずぶずぶと物と物の間に沈み込んでいく。



富士見ヶ丘レタ-73
 この先の部屋では、勉強机とともに、独身男性の生きた証と思われる、様々な品を発見することになる。その中には、オカルト的な勉強法に傾倒したのではと思われる怪しげな痕跡も見受けられた。



ボートs
 家の中の物品類や写真の時代背景を考証すると、ここは昭和四十年代頃で時間がパッタリと止まっている様子。

 さらに深くえぐっていくことで、大都会の真ん中で取り残された昭和の空き家の謎と、消えた主人の行方を僅かでも解き明かすことができないかと、旺盛な意欲で、暗い室内を奥へ奥へと進んで行ってみることに   



傘と仲間たちs
「橋の上で」

 

つづく…

「封印された家主の青春」都会の秘境、森の中に眠る空き家群落.5

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