澪は悲劇の少女キョーコの娘だった!・・そしてその澪の口からキョーコの辿った数奇な運命が明らかにされる

[登場人物]
キョーコ(菊田京子):道東の廃屋に40年前の日記を残した少女。

しのまい:キョーコの姉。イノセントなこころの持ち主。

白河:廃墟探検家。廃屋の日記を本人に返すべく現在のキョーコを追う。

サブ:情報屋。キョーコを追うため白河と行動を共にする。

三田澪:廃墟好きの女子大生。その正体はキョーコの一人娘だった・・。


ジャパン-1
「3月30日・・その日は旅行の2日目でした。私達は札幌駅前で遅めの朝食を取ると、南一条にあるデパートへショッピングに立ち寄りました。」

 澪はここで言葉を止め、白河へ一歩近づいた。白河の目を正面から見据えながら、挑むように訊いた。

「ねえ先生、先生は運命って信じますか?運命って一体何なのですか・・?」

 戸惑う白河。澪の声のトーンが上ずり、言葉が少しずつ早口になっていった。


エレベーター-1
「ねえ、白河先生、なんで私はあの日母をあのデパートに連れて行ったのでしょうか?どうしてほかのデパートでは駄目だったんでしょうか?どうして、よりによっていつも見るピアスでなくて、指輪なんかに目をくれたのでしょうか・・?」

 頬に皮肉な笑いが貼り付けたまま、澪の口調は次第にヒステリックになっていく。

 白河は小さく眉をしかめたが、何も答えなかった。おい澪、とサブが咎める。澪ははっと正気づいて、小さく俯いた。

「・・ごめんなさい、白河先生、サブさん。ただ私・・悔しくて・・」

 かすれるような声だった。白河は黙って頷くと、力づけるように澪の肩に手を置いた。続けた澪の声は、微かに震えていた。


パール-1
「・・母に似合うって思ったんです。銀の台座に小さなパールを一点乗せたリングでした。店員さんと一緒に母の指にはめてあげました。
 その時、母が額を抑えて突然フロアにうずくまりました。母は苦しそうに言いました。『このお店、来たことがある』って・・」

 澪の額にはいつの間にか粒のような汗が点々と広がっていた。澪の呼吸が激しくなると、心配そうな表情のしのまいが彼女に寄り添って、両手で彼女の手を握った。澪は気を取り直すようにしのまいに微笑み返すと、続けた。

「母はその場で卒倒しました。店員さんと私とで母を抱えて医務室に運びました。母は・・」

 澪の顔は青ざめていた。サブには額の汗までが凍り付いて見えた。

「・・私の顔を識別できませんでした。“あなたは?”と訊いたぐらいですから。そして医務室のベッドの上で、ここに来たことがある、という言葉を繰り返しました。
 そんなはずはありませんでした。だってそのお店はもちろん、それまで母は札幌、いえ北海道すら訪れたことはなかったはずですから。ただ・・・」


グルグル-1
「・・ただ、失った18年を別にすれば・・」


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