18
 日記の更新が歯抜けになっていた理由は、彼女を突如襲った風邪とそれに伴う激しい頭痛が原因だった。朦朧とした意識の中、必死になって震える手で、そこまでして・・・何かを悟っていたのか、自分の足跡を遠い未来へ残そうと・・・いやそんなつもりはこの時点では全くなかったのかもしれないが、どこからともなく湧いてきた、底知れぬ義務感が彼女のケツに鞭を打たせ、後ろからの見えない添い手があるかのように、多少抗う気をほんのちょっぴり感じさせつつも、ヨタヨタと這いつくばった日記を取り憑かれたように最後までどうにか執筆してみせた、気高くもあるキョーコさん。

 そういった状況で書かれた日記の文字は、まるで字を覚えたての幼児のよう。字だけではなく、いつもは読み手に甘く問いかける体(てい)の(無意識ながら、仮想金山君に読み聞かせしていたのだろう)文体の日記が、「です、ます、した」を多用した、学校の先生に提出する、小学生の作文のようになってしまっていた。頭痛により鉛のように重たい頭では文章の構成もままならず、出てきた言葉をただ紙に置いて並べることしかできなかったのか。

 病に犯され、ベットの上で泡も吹かんばかりにもんどり打って悪夢にうなされるキョーコさんを、母親は気づかないはずはないと思われるが、なぜか放っておいたばかりか、起こすこともしない。おかげで彼女は、余裕のお昼過ぎ登校の憂き目にあってしまうかに思われた・・・・・・

 さすがのキョーコさんもこれには母親に不信感を持ち、唇をツンと尖らせ「なんでなの?お母さん・・・」と心細く疑心暗鬼にもなる。しかし結局それは彼女の勘違いであったものの、病状の気配を察知してくれなかった母親との距離感に、以前にも増して不安感を抱いたことは間違いなかった様子。

 風邪からくる頭痛に七転八倒しながらも、己を正常に保とうと努力をするが、ついには病魔の前に屈する結果となり、病床に伏することになる、彼女。
 
 だが、そのもがく床に、史之舞がやって来てくれて(見舞いのつもりではなかったようだが)、例のお見合いの続報、  裏ではあんな醜態が親に筒抜けながらも  それも吉報に近い知らせをもたらしてくれることになったのだった   



27
 1 9 7 8  ,  9月 2 7 日   (*水)  2 8 日 0: 27
 
 今日 は 集体 が あ り ま した   .    まあ お もし ろ か った 。
女子 は ハ ン ド ボ ー ル だ っ た 。  But  ゲ ーム は
 や らん か っ た  . 文化祭 が 近い なあ , で も 一週間
の び たんだ って さ  .  文化祭    . 並 木の文化祭
いき た ナァ      !  何々 だ  !!! 今日 の A N N は
 タモリ な の よね  .  ア タ  ** ヤ ン  ( アタ ッ ク  ヤング )は
 千春 だ しね  .  は たして 3:00 まで お きて られる
 か しら ね  .  千春  お も し ろ い よ   .  アタ・ヤン   3 0 分 聞き
 の が し て  しま っ た .  この 日記か い て て  お も い 出 した の
 あ せ る な あ ,   明日は   歯 医者 に 行く 日で すぞ!
 わ か っ て ん の  ?  何 々 だ  !・明 日 は まず .
 毛ぬ き  .   ア ー モンド ・チョ コ レ ー トの  パ ン に ぬるやつ
み ょう じ ょ う  . 食 い 物 を ..   . . .  ね 。
 さあ  .  明 日 は  明 日   ,  今日 は 今日 ね。
何 々 だ  . ・千春 は  も う すぐ  23才に なる んだ って.
 23才の 人 って多 い の ね . 世 良さ ん も  23才だ し. ....。
 私は まだ  1 5才 の お とめ れす. そ ん で はおやすみ
 
この時まではまだ病気の気配もなく、字の乱れも全くない。呑気に文化祭や街での買い物のリストの話をして盛り上がっている様子。

>で も 一週間の び たんだ って さ  .  文化祭    . 並 木の文化祭 いき た ナァ      !

分校規模の自分の中学校ではそもそも文化祭は行われないのか、あったとしても規模はたかが知れているので、地域で一番大きい中学校の文化祭に期待をしているとか。いや、金山君のいる文化祭だから待ち遠しくてしょうがないのだろう。「K・Y・M条」を自分に課してから日が浅いこともあり、学校で言われた夏休みの決まり事をまだかろうじて守っている夏休み始めの小学生のように、金山発言をぐっと堪えて我慢している、いじらしくもある彼女。

>ア タ  ** ヤ ン  ( アタ ッ ク  ヤング )は 千春 だ しね  .
 

個人的には知らなかったが、東の「オールナイトニッポン」、西の「ヤングタウン」、と並んで、北海の「アタックヤング」として津軽半島より上の北方面で絶大なる人気を博していたらしい、深夜ラジオ番組だったようだ。

キョーコさんが日記を書いていた時期はまさにアタックヤングの黄金期。1970年からつい最近の2016年まで番組は続いていた。様々なパーソナリティを排出し、松山千春や田中義剛といった、後に全国区になった人も少なくない。

>千春  お も し ろ い よ   .

日毎に深まる、松山千春へのアイドル愛。所とタモリと比較していまいち”つまらん!”と吐き捨てていたのは、もう遠い昔のことのようになっている。

>明 日 は まず . 毛ぬ き  .   ア ー モンド ・チョ コ レ ー トの  パ ン に ぬるやつ み ょう じ ょ う  .

そんなに昔でもない頃、日本でありながら、北の外れの過疎地に住む中学生とはいえ、たかが、毛抜きやチョコクリーム、アイドル雑誌を買うのに、半日がかりであるばかりか、前日に紙に書いてまで予定を作って、しかもそれが待ち遠しくてそわそわしてしまうなんて、こんなにも慎ましい生活が間違いなく存在していたのだという、今となっては信じ難い、事実。

今なら、北海道だろうが沖縄であろうが、ダイソーに行けば事足りることだろう。

ダイソーが北海道の隅々に店舗を拡大した後に旅行をしてみた感想は、とにかく、物を予め買っていく必要がなくなったということに尽きる。車のちょっとした部品が欠ければ、ダイソー。指を切って絆創膏が必要になれば、ダイソー。稚内駅を出てすぐ右側にあった雑居ビルの一階がダイソーになっていたのを見た時は、思わず歓喜した。ちょっとの滞在でも、もう無敵だなと。数年後、結構有名な政治家の選挙事務所に変わっていてガックリし、また数年後、ダイソーになって、更にその後、北海道の衰退を象徴するように、もぬけの殻の空き家となり、いたたまれなくなったが、それからまた数年、結局、現在は再開発で稚内駅前の旅情が破壊され、辺りは一変してしまったようですが・・・。

僕が幼き頃、初めて北海道を旅行するにあたり、札幌以外では入手できないんじゃないのかと、カメラや液晶製品に使う、丸いボタン電池と単4電池を、しこたま東京で買い込んで遠い北の地まで持って行った記憶がある。しかし、当時でさえ、電池ぐらいは稚内だろうが根室だろうが、余裕で買えることがわかり、あまりにも北海道をバカにしていたことを、恥ずかしく思ったほどであった。

>千春 は  も う すぐ  23才に なる んだ って.

この日記を読んでいると時間の観念が薄れてきて、そんなに昔のことでもないような話にみえてきてしまうが、松山千春がもうすぐ23才だなんてことが文中から発せられると、あぁ、二階で日記を書いていただろう、あの家も、今は持ちこたえるか、持ちこたえないかの、瀬戸際にあるのは、それ相応の時が過ぎてしまっているのだなぁと、あらためてしみじみ思わずにはいられない。

>私は まだ  1 5才 の お とめ れす. 

紆余曲折ありながら、60話を越えてだいぶ成長を見届けたと感じながらも、彼女は中学三年生のたったの15歳。開始当初より年齢をまだ一つも積み重ねていない。人生における初期の荒波にぶつかるのはこれからのことであり、積み重なった残りの日記帳の山の向こうに、この先、話が相当長く続くだろうことを見て思い、ほぅと・・・大きくため息をつく   



29a
29b
29c
 1 97 8  ,   9 月 2 9 日 (金 )  9: 2 6

 昨 日 、  日 記 書  かず に ね ま  した。
 今日 は  ,  学校 の* 授業は  お昼 で
 終 り で した。 昨 日 は歯医者  に 行きました,
 今日 は  、 朝 から   ち ょ う しが  良 く な いと 思っ
 た ら カ ゼ  を   ひ い  て  い  ま し た。  社 会
 の  時 間 に  頭 が  い  た く て  コ マ ッ タ
 なあ.  と思 ってたら **あんのじょ う  、
 . . .. 帰 っ て 来 て か ら  ベ っ ト の  上 で  *  横
 に な る と  知  ら ぬ ま に ね む   って  い ました
 気が つ い  て お き る と  ,  9 時 に な っ て  いた
 ように 見えま した  、  ”な んで お か あさ ん起
 こして くれなか っ た の か なあ” と 思 う と ・・ ふくを
 きよう としまし た ( 学 校  行 く 時 の ふく に ・・)
 ず い ぶ ん お く れ た  と   あせ り  ま した 。
 はっ き り  言 う と   ,  時 計 の 時 間 が 何 な
のか よ くわ か  りま せ ん でし た  。  さ し て い る 方 向
 は , はっき り わ か  る  け ど  .  何 時な の か   なぜ か

よ み 取 る こと が  出来 ま せ ん で した。   **
 ただ ,  学校に お  く れた ! ど う しよ う
と 考 え る だ け で した 。  ふ く を  き  が  えよ う と
した 時 今日 学 校 昼 で 終 り だ  っ たんだ と 気 が
つく と  下 に お り て  時 計 を 見 ると  3時 で した
ど  う し て よ み とる こと が  出来 なか っ た のか
不思 議  でした。  そ れ か ら は .  も う だるくて
 だ る く て  .   きっ と 昼 ね を し たか ら たろう と思い
 まし た 。  7 時 ご ろ に な っ て , 頭 が ボ ー として
少 し いた み ました 。  8時 ご ろ に なっ て、   なんだか
 も う  た だ  すわ っ てい ることが  出来 なくて.  どうしよう
も なか っ た  で した  。  9時 に な る と  頭 が ガンガン
い たく  息 が あつ く .  さむ け が 。  私 を おそっ
て  も う  ど う し よ う  もな か っ た。 * ね つや
 かぜ  の *  しょ う じ ょ う が 出 ない  せ い か
 と う と う  息 血が 出 て来まし た。   今 も 、
それ ら にたえな が  ら  日 記 を書 い て
 い ます  ,    ウワサ の チャンネルも ,  赤 いなントカ
も 見 てい ら れ ま せ ん  _ どうしよう  もない

 の だ 。  **  ただ  だ る い  あ た まが
  い たい ・ とい う こ と  で す 。
 も う  つ ら い  . 一言  ,  い っ  て み たい   .
 K・Y・M  の や く そく も  や ぶ っ て し ま い
 そう だ .  もう だ め . く るし い  、   おやすみ、
                      。

突如激しく乱れる、キョーコさんの筆跡。とにかく一日の出来事を絞り出して、つらそうに言葉をただ並べているだけなのがわかる。アルジャーノン状態と例えたが、これは正常から異常な状態に陥り、やがて元の正常に戻って行くので、正確に言えば、逆アルジャーノン状態か。

>昨 日 は歯医者  に 行きました,  今日 は  、 朝 から   ち ょ う しが  良 く な いと 思っ た ら カ ゼ  を   ひ い  て  い  ま し た。

歯医者に行くついでに、デパートで毛抜きなどを買おうと街でのショッピングに前の日からウキウキだったが、病気が辛くてそれどころではない様子。

> . . .. 帰 っ て 来 て か ら  ベ っ ト の  上 で  *  横 に な る と  知  ら ぬ ま に ね む   って  い ました 気が つ い  て お き る と  ,  9 時 に な っ て  いた ように 見えま した  、

学校から帰って来て、風邪で頭痛がしてダルいわ、彼女は崩れるようにベッドへ倒れ込んだ。死んだように眠りこけ、起床したのはなんと、翌日の朝の9時過ぎ。いや、頭がフラフラして、時計の針がぼやけて見えて、たぶん、9時過ぎではないだろうかと、確信はない。でも、遅刻をしているのは確かなようだった。

>”な んで お か あさ ん起 こして くれなか っ た の か なあ” と 思 う と ・・ ふくを きよう としまし た ( 学 校  行 く 時 の ふく に ・・)

ここまで読んで、僕の解釈が今の今まで間違えていたことに気付く。あぁ、そういうことだったのかと。

登校時間はとうに過ぎているのに、なんで起こしてくれなかったのかと、母親に対して怪訝に思う、キョーコさん。

『服を着ようとしました(学校に行く時の服に)』などと、わざわざ面倒で無駄な補足をしているのは、「制服」という簡単な言葉が咄嗟に出てこなかったためだろう。よっぽど意識がはっきりとしなくて頭が回らなかったらしい。

> ず い ぶ ん お く れ た  と   あせ り  ま した 。

体がダルいのを考慮すると、急いで支度をしても、学校に到着するのは9時半頃だという目算がその時点ではあったに違いない。

>さ し て い る 方 向  は , はっき り わ か  る  け ど  .  何 時な の か   なぜ か よ み 取 る こと が  出来 ま せ ん で した。

ぼやけて霞んで見える、時計の針   

>ただ ,  学校に お  く れた ! ど う しよ う と 考 え る だ け で した 。

学校から帰宅してすぐ眠りにつき、夕飯も食わずに翌朝の9時まで爆睡。おまけに遅刻という大失態に慌てふためいていた。

>今日 学 校 昼 で 終 り だ  っ たんだ と 気 が つく と  下 に お り て  時 計 を 見 ると  3時 で した

   キョーコさんは、まるで読み手のためにネタバラシを先にすることなく、今日自分が体験した白昼夢を、丁寧に順序立てて、説明してくれていたのであった。

学校から帰って来てすぐ寝たのはその通り。実はその日は金曜日ながら昼で学校は終りだった。風邪で頭がフラフラする中、昼過ぎの12時30分頃に即寝入り、遠くなるまどろみの意識の中で、体内時間は完全に機能せず。牛の鳴き声でもして、気だるさとともに目が覚めると、時計の針は翌朝の9時を指していた。いや、病気に犯され、疲労の蓄積したキョーコさんの窪んだ目には、かすれてそう見えてしまっていたのだ。実際は当日の午後の三時。二時間ちょっとだけしか寝ていなかったにもかかわらず、夕飯も食わずに死んだように昼から翌朝まで寝続けたと思い込み、おまけに遅刻までして大変だと、制服に着替えようとする一歩手前で、白昼夢から醒めた、キョーコさんだった。

>ね つや かぜ  の *  しょ う じ ょ う が 出 ない  せ い か と う と う  息 血が 出 て来まし た

風邪っぽく、頭痛がしてダルいものの、発熱はなく、咳き込むことはなかったが、そのうち鼻血が出てくるという、よくわからない症状。生理痛の重いのを初めて経験したという可能性もあるのか。

> 今 も 、それ ら にたえな が  ら  日 記 を書 い て

鼻血を流しながら、それに耐えて執筆をするなんて、誰かに読んでもらおうというモチベーションでもなければ、ここまでできないのではないだろうか。彼女が日記を書き続けることに対する、実際のところの真意や思いは、まだ到底語られているとは思われず、この先で、何かしら触れられることがありそうだ。

>赤 いなントカ も 見 てい ら れ ま せ ん

これは当然、山口百恵の「赤いシリーズ」だろうと思い調べてみたら、意外なことに該当したのは、1978年6月23日から12月15日放送の「赤い激突」。この作品に山口百恵は一切関わっていない。これより前の6作品には全て出演している。

>も う  つ ら い  . 一言  ,  い っ  て み たい   .

「あるあるネタ言いたい」のような、言い回し感。いや、彼女は彼女の中で、本気で戦っているのだろう。高校に合格したら、晴れて大声で、「金山、金山、金山君!!」と大声で叫ぶつもりなのかと。

>K・Y・M  の や く そく も  や ぶ っ て し ま い そう だ .  もう だ め . く るし い、

どこまで本気かわからないが、キョーコさんにとって、その三名の名前を呟かないことは、身悶えするような、苦しみであるようなのだった   



1
 1 9 7 8 . * 10 月 1 日    11:20
    \
 昨 日 も  また .   日 記 を書 か な い で し ま っ た 。
 昨 日 は ( 30 日 )土* よう日  だ っ た .   が  し か し .
 服 通  と 頭 通 と  さ む け とが  私* を び ょう 人. に しま し て
 学校 を 休 んで しま った わ け な のです 。
 今日 で す が  まだ   ちょうし は   良 くな*ので す が 被 を 着 て
 起 き て まし た 。 ズ ッ ト ネ  .  6: 0 0  (午後)すぎ ご ろ に .
 史之舞 が  急 に あらわれて . 見合の 人 と 今 日 も デ ー ト だ かで
 あ か んだ か *  あち らの 方 ま で 行 っ て 来 たん だ  って  .  おみ
 あげ を も ら っ て しま っ た。  す ぐ に  そ の人 の車 で かえっ たけど ね.
 ウ ンチ は ピ ー ピ ー  だ け ど  た んま り と 物を たべ た ら
 か た くなっ た 。BUt  おなか が  な る の で  明 日  はず か し い。
                        オヤス ミ。

垂れる鼻血を我慢しながら書き続けた日記も病気には抗えず、休筆したばかりか、遂には学校を休む事態にまで追い込まれた、キョーコさん。

>史之舞 が  急 に あらわれて . 見合の 人 と 今 日 も デ ー ト だ かで  あ か んだ か *  あち らの 方 ま で 行 っ て 来 たん だ  って  . 

若干、十八歳でお見合いをした史之舞。常務との不倫が母親に嗅ぎつけられたにもかかわらず、見合い相手とデートを重ねているということは、母親は不倫には目をつぶってお見合いの成功をただひらすらに祈っている様子。父親には裏の事実を知られることなく、上手く事が運んでいると見ていいのだろう。ただ、これから父にバレる可能性は大いにあり、史之舞の見合い結婚の行方を占うことは、キョーコさんの高校合格の成否を窺うより難しそう。ちなみに、なんだかとかいうのは、湖へ行ってきたのだと思われる。

>おみ あげ を も ら っ て しま っ た。

物で釣られているのと姉妹愛の固い結束があるようなので、キョーコさんからお父さんに不倫の告げ口がされることはまずなさそう。

>す ぐ に  そ の人 の車 で かえっ たけど ね.

北海道なら、今の時代でも車所有がほぼ必須なので、この時代の社会人ならなおさら。車を所有しているから、就職してそこそこ地位が安定してきたうん十代という推測は成り立たない。

>ウ ンチ は ピ ー ピ ー  だ け ど  た んま り と 物を たべ た ら か た くなっ た

軟便まで併発していたようだが、病状は次第に回復傾向にある、キョーコさんだった・・・



 実は病気はまだまだ完治せず、頭痛は数日は続く様子。日記の字はより一層、判読不能までに崩れていく。

 そんな中、以前、キョーコさんの恋愛リストを盗み見たばかりか「おまえ、あたま大丈夫か?」とその紙に書いて寄こした、同級生の均君に、彼女がいるらしく、しかも尻に引かれていると、キョーコさんは手厳しく、だらしないと、叱責。

 唐突に俎上にあげられた、フェアレディZの男とは   

 体調がすぐれないばかりか、精神も不安定な彼女は、またもや、今度はクラスの女の子に対して、「クソブス!」を連呼し、錯乱状態にも近い形で、ある理由から、激しい怒りを紙面に爆発させる   




つづく…

「女音楽教師の告白」実録、廃屋に残された少女の日記.65

こんな記事も読まれています