六本木-121
 こちらの終端には、まるで森に隠れているかのようなモルタル造りの家。

 飛び込もうと思ったが、窓辺の様子や気配から人の営みを感じとり、あわてて引き返すことに。



六本木-126
 アメリカのモーテル風の廃アパートの連なりがある路地を奥へ進んで行ってみる。



六本木-127
 びっしり。

 長いこと閉ざされた、雨戸。



六本木-128
 廃屋超密集過密地帯が続く     

 先の奥の暗がりの手前付近で、静けさの中、残響音のようなハトの鳴き声が漏れてくる。

 いるのは一羽や三羽ではない。十数羽はいそうな響きだ。



六本木-129
 ゴーストタウンの路地終点付近のデッドスペースに、誰かが勝手にハト小屋でも設置したのかなと、暗い小さな森に踏み込むと、十羽ぐらいの鳩の群れが中央で円をつくって羽を休めている奇妙な光景と遭遇。

 僕が土の地面に足を一歩下ろすのと同時に、鳩が一斉に羽音をバタバタと勢い良く飛び立って行った。咄嗟のことだったので、すばやく条件反射のように後方に身を引く。

 廃墟の果ての暗黒世界のようなこの場所を写真に収めようと思い、カメラを構えると、十数羽の鳩は全て去っていったように思われたが、そのうちの一羽だけが僕の頭上五メートルぐらいでホバリングをしていて、土の地面に僕が踏み込むと同時に、急下降をしてこちらに向かって来て、頭の先数センチを風圧とともにかすめていった。

 鳩が上昇していった直後に、土の地面に踏み入ってまたカメラを構えるが、鳩はすぐに戻って来て同様に僕の頭の先ギリギリまで近づいて急旋回、右おでこ端にふわっと、風をなびかせていく。三回目も全く同じに、かすめ風圧行為をやってのけた。

 どうやらここは、人の気配がなくなってから数十年、鳩達の安息の地、サンクチュアリのような場所になっているようだった。境界線を越えると、テリトリーに入るなと、威嚇をしてくるみたいなのだ。

 これ以上ダラダラと繰り返していると、そのうち怒った鳩が嘴で僕の目を突き刺しかねないと思い、バッと聖域に入って同時にしゃがむことで鳩との距離を少しでも稼ぎ、急いでシャッターを押し、来る前に、その場から全速力で逃げてきた。



六本木-130
 鳩の聖域があった路地を抜け出し、また違う別の細い路地の奥を行く。学生ばかりが住んでいそうなレオパレス的な廃墟アパートがあり、その前の階段に置かれていた、怪しげな紙袋。

 紙袋の中を確認しなければと、妙な義務感を抱き、中をガサゴソ     



六本木-131
 港区のど真ん中で、レンタル落ちのエロDVDが四本・・・

 立ち退きのためにアパートを去った学生が・・・いや、レオパレス風のアパートとはいえ、慎ましい年金暮らしのご老人の可能性も大いにある。今時、無料でHD画質のセクシー動画がいくらでもネット上で視聴できるご時世に、お金を出してまでエロDVDを購入する若者がいるのかは、はなはだ疑問だ。事実、裏DVDの通販は高齢者を中心に人気があり、最近でも闇通販業者の大掛かりな摘発があったばかり。

 単体の女優作品ではなく、いずれも、大勢の女優が大挙して出演する総集編的な、いろんなアダルト女優が楽しめて大変お得だという、セコい”魂胆”がこのラインナップからは透けて見える。

 よってこれは、ネット環境を持たない、倹約志向の強い、孤独なご老人が捨てていったと、推測   

 ちなみに、DVDは元通り紙袋に入れて、同じ場所にそのまま置いておきました。



六本木-132
 真向かいの家。古いニス塗りの木造家屋。縦型クーラー。



六本木-133
 置き去りのままの、猿の人形が寂しげに。



六本木-134



六本木-135
 レインボーカラー時代の古いアップルのステッカーが貼ってある。



六本木-136



六本木-137
 細い路地を出てから少し歩くと、大通りの手前へと     



六本木-143
 大通りの手前には側道があるので、車の往来は激しくない。

 この大層立派な「タワープラザ」も区画区域内らしく、廃墟マンションとなっているらしい。



六本木-138
 まぎれもなく、全ての人が過ぎ去った後の、廃墟マンションであった。

 相当な高級マンションだったようで、捨てていったと思われる残留物も、メルカリで即、売れそうな逸品ががチラホラ。

 六本木まで来てバカじゃないだろかと思いつつも、詳細に検証してみることにする   




つづく…

「廃墟猫と共存共栄する会の言い分」 港区虎ノ門、廃墟集落を行く.7

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