こちらの終端には、まるで森に隠れているかのようなモルタル造りの家。
飛び込もうと思ったが、窓辺の様子や気配から人の営みを感じとり、あわてて引き返すことに。
アメリカのモーテル風の廃アパートの連なりがある路地を奥へ進んで行ってみる。
びっしり。
長いこと閉ざされた、雨戸。
廃屋超密集過密地帯が続く
先の奥の暗がりの手前付近で、静けさの中、残響音のようなハトの鳴き声が漏れてくる。
いるのは一羽や三羽ではない。十数羽はいそうな響きだ。
ゴーストタウンの路地終点付近のデッドスペースに、誰かが勝手にハト小屋でも設置したのかなと、暗い小さな森に踏み込むと、十羽ぐらいの鳩の群れが中央で円をつくって羽を休めている奇妙な光景と遭遇。
僕が土の地面に足を一歩下ろすのと同時に、鳩が一斉に羽音をバタバタと勢い良く飛び立って行った。咄嗟のことだったので、すばやく条件反射のように後方に身を引く。
廃墟の果ての暗黒世界のようなこの場所を写真に収めようと思い、カメラを構えると、十数羽の鳩は全て去っていったように思われたが、そのうちの一羽だけが僕の頭上五メートルぐらいでホバリングをしていて、土の地面に僕が踏み込むと同時に、急下降をしてこちらに向かって来て、頭の先数センチを風圧とともにかすめていった。
鳩が上昇していった直後に、土の地面に踏み入ってまたカメラを構えるが、鳩はすぐに戻って来て同様に僕の頭の先ギリギリまで近づいて急旋回、右おでこ端にふわっと、風をなびかせていく。三回目も全く同じに、かすめ風圧行為をやってのけた。
どうやらここは、人の気配がなくなってから数十年、鳩達の安息の地、サンクチュアリのような場所になっているようだった。境界線を越えると、テリトリーに入るなと、威嚇をしてくるみたいなのだ。
これ以上ダラダラと繰り返していると、そのうち怒った鳩が嘴で僕の目を突き刺しかねないと思い、バッと聖域に入って同時にしゃがむことで鳩との距離を少しでも稼ぎ、急いでシャッターを押し、来る前に、その場から全速力で逃げてきた。
鳩の聖域があった路地を抜け出し、また違う別の細い路地の奥を行く。学生ばかりが住んでいそうなレオパレス的な廃墟アパートがあり、その前の階段に置かれていた、怪しげな紙袋。
紙袋の中を確認しなければと、妙な義務感を抱き、中をガサゴソ
港区のど真ん中で、レンタル落ちのエロDVDが四本・・・
立ち退きのためにアパートを去った学生が・・・いや、レオパレス風のアパートとはいえ、慎ましい年金暮らしのご老人の可能性も大いにある。今時、無料でHD画質のセクシー動画がいくらでもネット上で視聴できるご時世に、お金を出してまでエロDVDを購入する若者がいるのかは、はなはだ疑問だ。事実、裏DVDの通販は高齢者を中心に人気があり、最近でも闇通販業者の大掛かりな摘発があったばかり。
単体の女優作品ではなく、いずれも、大勢の女優が大挙して出演する総集編的な、いろんなアダルト女優が楽しめて大変お得だという、セコい”魂胆”がこのラインナップからは透けて見える。
よってこれは、ネット環境を持たない、倹約志向の強い、孤独なご老人が捨てていったと、推測
ちなみに、DVDは元通り紙袋に入れて、同じ場所にそのまま置いておきました。
真向かいの家。古いニス塗りの木造家屋。縦型クーラー。
置き去りのままの、猿の人形が寂しげに。
レインボーカラー時代の古いアップルのステッカーが貼ってある。
細い路地を出てから少し歩くと、大通りの手前へと
大通りの手前には側道があるので、車の往来は激しくない。
この大層立派な「タワープラザ」も区画区域内らしく、廃墟マンションとなっているらしい。
まぎれもなく、全ての人が過ぎ去った後の、廃墟マンションであった。
相当な高級マンションだったようで、捨てていったと思われる残留物も、メルカリで即、売れそうな逸品ががチラホラ。
六本木まで来てバカじゃないだろかと思いつつも、詳細に検証してみることにする
つづく…
「廃墟猫と共存共栄する会の言い分」 港区虎ノ門、廃墟集落を行く.7
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コメント
コメント一覧 (10)
来年の始めから工事着工のようなので、これらもあと僅かの運命です。
>オヤジのステテコが似合いそうな木のベランダいいですね。
あれ、子供の頃はあり得ないと思ってましたが、いざ黒色になってヒートテックとか言われると、常用している自分がいます。さすがに、冬以外は履かないですが。
>夕方になると夕飯の香りとともに野球中継の声がいまにも聞こえてきそう
十五年ぐらい前は実際あったんでしょうね。今は僕かアラブ系の人ぐらいしか見かけなかったです。
>昔は河川敷や空き地によくエロ本が放置してありましたよね。妙に湿気てるやつがw
中学ぐらいになると自分で買おうとしますが、それ以前だとそんな入手方法でしたね。懐かしい。カビ臭がするので、持ち帰り厳禁みたいな、暗黙の了解みたいなのもありました。
この作りなら物干しが似合ってますね。
>共同ポストの中込さんと清水さんは、スッパリ見切りをつけて転居先で難なくお過ごしなのでしょう
ちなみに、この二人の名前が書かれているシールに言及したのは、僕がApple2というパソコンを昔、持っていたからです。MACが発売される前の機種。とてつもない高額のパソコンでしたが、親が潤っていたので、買ってもらいました。その父はその後、時代に翻弄され、お亡くなりになりましたが。ちなみに、その訃報を知ったのは、三ヶ月後のネパール、カトマンズでした。
でも都内だと廃墟としての寿命が短いですよね。
オヤジのステテコが似合いそうな木のベランダいいですね。
夕方になると夕飯の香りとともに野球中継の声がいまにも聞こえてきそう。
昔は河川敷や空き地によくエロ本が放置してありましたよね。
妙に湿気てるやつがw
昔は物干しと言ってましたっけね・・。
ベランダにあがってみたい衝動にかられます。
ちょうど1年前まで、司法書士事務所をかまえていた方や、共同ポストの中込さんと清水さんは、スッパリ見切りをつけて転居先で難なくお過ごしなのでしょう。
私なら未練がましく、懐かしさに浸りたい為に、時々様子見に来そうです。
言われる通り、魅力的な廃屋がたくさんありましたよ。
>エロDVD、雪解けの時期に路肩に落ちてますね。
北海道らしいですね。東京だと昔から川原の土手ということが、お馴染みのネタとして通用するぐらいになってます。
>僕は心の中で「リサイクルなんだぞ!」って叫びながら拾って帰って来ます
ビデオの時代、個人売買でスクーターを買って引取りに行った時、黄色のビニールに包んだエロビデオが二本バス停の裏にあったので、僕もそんな感じで持ち去りました。家で確認するとパッケージ写真には、上半身裸で中南米系のリッキー・マーティンのような男性が。ホモビデオでした。捨てるのも恥ずかしいし億劫で、いまだに家に隠してあります。
まもなくこれらが全て取り壊しになってしまうのは本当に惜しいです。
>それにしてもエロDVD…私もかつてはセコい魂胆の元、借りてましたね('д` )総集編3時間ものとか
最近は、ブルーレイの8時間スペシャルみたいですね。それだともはや倹約家ではなく、お金のかかる趣味ですが。僕の友達も総集編派だったので、あのラインナップをみてピンときました。後ろの方にあきらかに無名の外れの人がちょいちょい入っているので、僕はまとめたやつは敬遠してましたが。
>サルの人形は、ソーラーパワーで首振りするタイプのものかなぁと思います。
あぁ、ゆらゆら緩い揺らぎ方をする、植物のとかもあるやつですか。そういえば、ソーラーのパネルがありますね。日差しはあったのに、一切動いていなかったので、もう役目を終えてしまったみたいです。
エロDVD、雪解けの時期に路肩に落ちてますね。
僕は心の中で「リサイクルなんだぞ!」って叫びながら拾って帰って来ます。
それにしてもエロDVD…私もかつてはセコい魂胆の元、借りてましたね('д` )総集編3時間ものとか。
お恥ずかしい限りで…(笑)
サルの人形は、ソーラーパワーで首振りするタイプのものかなぁと思います。光の当たるところに置いて、眺めていたのかも?