メガネリーダー
 東京の街中、とある住宅街の森の中に人知れず眠っていた、空き家群落。

 橋の上で唐傘を開いてバッチリ決め、写真に収まっていた謎の若者集団の一行、今度は落ち葉で埋まった公園にてご満悦の様子。

 落ち葉を巻き上げて降らしてみたものの、案外砂でザラザラだなと、手もみをするフリして付いた砂を振り払っている、中央の九一分けの黒眼鏡が、やっぱりリーダーなのだろうか。

 控えめだった紅一点の彼女はここでも遠慮気味だが、男ばかりでむさ苦しい中、唯一、おしとやかで気品のあるたたずまいを、端っこながら印象づけている。

 こんな充実した学生生活を送った、筋骨隆々ラガーマン風昭和の伊達男が、いかにして杉並の森に家と多くの残留物を残したまま消えたのか、全くの他人の僕が知る由もないが、例えば、左隅のヒョロ眼鏡の人が名乗り出てくれて、失われた家と彼の記憶を甦らせてくれるなんてことも無いことはない。

 一期一会。せっかくの縁なので、封印された森の記憶を呼び覚ますべく、より深く家内部を探索してみることにした   



富士見ヶ丘レタ-74
 台所の勝手口のようなドアがある。出入りは難しそうなので、後で裏から回ってみることにしよう。



富士見ヶ丘レタ-75
 トイレには砂埃の積もった複数のゴミ。

 小窓の下にある口の開いた鉄製の丸い筒は、ストックの入るトイレットペーパーの入れ物だと推測する。なかなかのアイデア物で、今でも使えそうだ・・・と思ったが、現代の紙質は肌触りが良く柔らかいので、上から二本分の荷重がかかると、ロール紙が引っ張りに耐えられなくて千切れてしまう可能性が高い。昔の粗悪なトイレットペーパーだからこそ、成立した仕掛けだったに違いない。



富士見ヶ丘レタ-76
 剥き出しの倉庫には未だ物が数十年、置かれたまま。



富士見ヶ丘レタ-77
 当時の庶民の憧れ、ハワイへ行き、マカデミアナッツでも買ったらしい。



富士見ヶ丘レタ-79
 ドアのある部屋が。

 手前には背広がかかっていて、その後方は壁ではなくて据え付けの衣装タンスのようになっているようなので、開けてみることに   



富士見ヶ丘レタ-78
 浴衣やスラックスなど、男性ものばかり。

 杉並区にあるこんな広いお屋敷に、あの好青年がたったひとりで住んでいたというのか。



富士見ヶ丘レタ-81
 衣装タンスの奥は背広だらけ。



富士見ヶ丘レタ-80
 すぐ右壁際には、洗面台。

 やはり、男性用のオーデコロンがある。

 おそらくコレでしょうね。絶賛発売中。


 入室   



富士見ヶ丘レタ-83
 物がここでも山のように積み重なっている。

 手前の僅かに見える平なスペース部分が、机のようだ。



富士見ヶ丘レタ-85
 入ってすぐの左、机の後ろにはスチール製の本棚。

 朝鮮人参酒、カメラ雑誌、1985年の時刻表、ケインズの経済学の本、不動産関係の本、などがあったが、ジャンルがまちまちで、”この道一本”というのが無い様子。

 

家
 発掘された写真の中で、湖で彼がボートを漕ぐのと同じくカラー写真。他は全て白黒写真だった。

 背後の山が独特の形をしているが、郷里の出身学校なのか。



富士見ヶ丘レタ-82
 蒸れてじゅくじゅくしてカビだらけの部屋は、湿った石の裏のような臭いが充満。



富士見ヶ丘レタ-84
 物が堆積した部屋に天井がこれなのだから、部屋が湿潤状態になるのも当然か。



足掛け男1
「コテージ前で」


 今回、さらに写真をスキャンしてみたところ、数十年の年月を経て、意外な事実が判明をすることになった。

 家主が岩に足をかけているこの写真。なぜか全く同じものが二枚あって「?」と首をかしげていたものの、恋人にでもあげるために焼き増しをしたのか、それとも、よっぽどのナルシストで、抜群にキマっていると思われるこの写真を、アルバム保管用と、すぐ取り出して見られるように、複数用意したのだと推測してみたが・・・



足掛け男2
 なんのことはない、目をつぶってしまい、撮り直しをしていただけだった。

 プリントをした手元の写真だけでは小さくて不鮮明で目の開きは判別できなかったので、パソコンが普及した現代だからこそ、浮かび上がった新事実に、人知れず、感慨深くもなってしまう   



ふたり
「リーダーと」



 独身貴族にしては驚くほど優雅な広さを持つ、森にたたずむ彼の邸宅を、さらに踏み込んで行ってみることに   

 

つづく…

「オカルト学習法に傾倒する家主」都会の秘境、森の中に眠る空き家群落.6

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