[登場人物]
キョーコ(菊田京子):道東の廃屋に40年前の日記を残した少女。
しのまい:キョーコの姉。イノセントなこころの持ち主。
白河:廃墟探検家。廃屋の日記を本人に返すべく現在のキョーコを追う。
サブ:情報屋。キョーコを追うため白河と行動を共にする。
三田澪:廃墟好きの女子大生。その正体はキョーコの一人娘。
「なんだって!それじゃあ、キョーコ・・いや君のお母さんは18歳の少女の記憶に戻っていたというのか!」
そうです、と消え入りそうな声で澪が答えた。
「・・でも、でも一体どうしてそこに気づいたんだ!?」
サブが勢い込む。
「幸子ちゃんのお母さんが教えてくれた、しのまいさんが廃屋を訪れた日付からです。
・・・その日は母が失踪した日と一致していました。」
何か言葉を発しかけたサブを、肩にかけた手で白河が留めた。
「・・そこでふと、ひょっとして母も同じ日に同じ場所に行ったのではないか、と思いついたのです。そう考えてみると、全てのつじつまがぴたりと一致しました。
もし母が突然札幌の地で18歳の記憶の自分を見出したとしたら、混乱しながらも、まずは自宅へ帰ろうとするのが自然ではないでしょうか・・・。」
「するとその日、キョーコさんとしのまいさんが・・。」
信じられないという表情で首を振るサブ。
「ええ、母としのまいさんが、廃屋となったかつての自宅跡で40年ぶりに再会した・・・。それが二つの失踪事件を結び付けたに違いないと、私は直感しました。」
皮肉な運命が持つ空気の重苦しさを感じ取ったかのように、澪にしがみついていたしのまいもいつの間にか静かになっていた。
「夜逃げ・・いえ、逃亡生活の果てに最愛の妹を失ったしのまいさんが、40年の時を経て当時の記憶に戻った妹を、再び取り戻したとしたら・・・。」
一瞬澪の声が詰まった。
「・・もう二度と妹を失いたくない、誰にも奪われたくないと考えて、彼女を連れて逃げようとするのは、寧ろ自然なことではないでしょうか?」
澪の頬を伝わる涙を、しのまいがポケットから取り出したキリン柄のハンカチで優しく拭った。
つづく
つづく
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コメント
コメント一覧 (4)
廃屋日記とサブさん執筆の小説ともども、絶賛していただき、ありがとうございます。数多の廃墟サイトに埋没しないよう、「廃屋生き仙人コーナー」など、攻めの姿勢を崩さないところが、ルーチェさんのようなマニアの方から評価されたのではと思い、方針は間違っていなかったのだと、しみじみ、噛みしめております。
>神奈川県のトロピカルの前を通り(私は横浜に住んでます。)、ググったら、こちらに辿り着きました
地価の高そうな横浜では、もうそんなに廃墟は見られないかもしれませんね。高速から目立つトロピカルは、貴重な存在かもしれません。
>廃墟に落ちてる日記や履歴書、手紙、アルバムって、めちゃくちゃ好奇心くすぐられますよね…。
廃墟残留物、いつしか僕も虜になりました。そのためにわざわざ、マクロレンズを買おうかと思ったほどですが、結構なお値段で、諦めましたが。
これからも末永くお願いします。
今日、神奈川県のトロピカルの前を通り(私は横浜に住んでます。)、ググったら、こちらに辿り着きました。そこから日記のページに来ました。廃墟に落ちてる日記や履歴書、手紙、アルバムって、めちゃくちゃ好奇心くすぐられますよね…。楽しく読ませてもらってます。
キリン柄のハンカチは今シーズンのマストアイレム(スペランカーか)deathね!
(・・サクラ、サンキュゥ!)
一発目に写真に吹きましたw
しのまいさんハンカチの柄もヤバいよw
ちなみに私のハンカチは…ていうか忘れたっていうね…。
そのほうが、レディとしてどうなのよ。
しのまいさんに色んな意味で乾杯(完敗)
結末気になります!