多摩湖湖畔沿いの周遊道路は、一車線しかなくてしかもエライ細っそい廃道のような静けさの中、昭和からのラブホテルがどうにか生き長らえているというのが実情である。近年では次々とそれらがもう限界だとばかりに、雪崩を打って廃墟堕ちとなってきているのが、今回の一連の訪問で見えてきたようだ。
こちらのホテルは、グーグルストリートビューを見るとまだ営業中ではあるが、実際にやって来て見回してみると、人の気配は無いのにいくつかの窓はだらしなく開けられたままだし、壁の所々は崩れ落ちて内部が露出。メインゲートは、大規模工事現場でよく見かけるアコーディオン式のドアでガッチリと塞がれていた。
間違い無い。
僕の嗅覚がそう嗅ぎ取ってしまっている。
ただ、若すぎるがゆえ、要塞化からのほころびをまだ見つけ出せないでいる。
呼び物が「ワイドTV」。ジャパネットたかたの社長が不自然にソニーのベガを推していた頃か。
ウェルカムの看板もまだそのままに。
数ヶ月前、ツイッターで狭山湖にグーグルマップにも載っていないヤバイ道があると、騒ぎになった件をご存知でしょうか。
呪われた道があるらしく、とあるぶどう園からその道は伸びているとのこと。
どんな風にヤバイのか具体的な説明も無しに、言葉にのせられるがままに、踊らされている一部のバカ騒ぎをするツイッター民にたいして、そこは冷静にと、努めて気高く振る舞い、事の本質を捉えようとあくまでも地道に情報を入念に精査してみたところ
話を総合すると、頭のおかしいおじさんが森の中に不法占拠していて、勝手に建てた掘っ立て小屋とその入口に、骸骨や気味の悪い前衛芸術のオブジェなどを並べているようなのである。一応、古いガラケーのような画質は悪いけど、それらしき写真と動画もあった。
多摩湖からはすぐ近くなので行ってみると、「ここから先・・・」とツイッターで貼られていた画像の場所は、既に森の一部が削られていて工事車両が何台か置いてあった。
説明ではこの先に道があって、基地外おじさんの家があるはずだが、どう見てもそれらしきものはあろうはずもない環境。
おそらく、アフィサイトのアクセス稼ぎで扇動された人達が大騒ぎをしていただけなのだと思われる。骸骨の家の写真や動画は全く別の場所のものだろう。
僕がこの写真を撮り終えて道に戻ると、えらい勢いでトラックが入って行った。オカルト話を鵜呑みにしてここでうろついていると、作業員の人にどやされる可能性があるので、くれぐれもご注意を。
意外にもすんなり
この塀と壁沿いを真っすぐ。
廃墟ファッションとしては、フリースはもってのほか。木屑や枯れ葉屑がびっしりと付着してしまい、家に帰ってから泣きながらガムテで取ることになる。それも中々取れない。
上着の表面はツルツルが理想ですかね。
このゴミの山を乗り越え、カーテンを捲る。
ゴミ山の山頂付近では、塀から上半身が表に露出をするので、醜態を見られるかなと思ったが、期待はずれなぐらい、人通りは無い。
転がり落ちるように幕間から飛び出て来た。
シティホテルのような構え。
廃墟でお馴染みの、アスファルト裂けからの雑草の芽吹きすらまだ見かけない。
早すぎたのか。
フロント。
フロント兼住居棟。
荒れてない。整い過ぎている。
玄関を入ってすぐの棚。
ステンドグラス柄は、このホテルの統一されたコンセプトのひとつでもあった。
受付なのに固定ガラス窓の密閉空間。
客とのやり取りはどのように行われていたのか。
それぞれの部屋にホテルの従業員がお金を取りに行くシステムだったとしたら、そんなラブホには二度と御免だということになるだろう。
裏にマグネットを仕込んである「営業中」の看板。
机の引き出しにあったので、この日はあと数日でクリスマスイブだというのに、何が悲しくてここまでやるのかなと思いながらも、机の上に並べてみた。
中身は入ってない。従業員が一個一個手作業で入れて封をする。切り取り線があるので、客はビリっと破り、取り出していたのか。
かつて、ラブホテルのシステム機器業者をやられていたという方から教わったので知ってます。丸い口のはナショナルの「ハイハイ店番」という、センサー受信機だそうです。フェンスにもセンサーが配置してあったということなのだろう。
一級漏電火災警報器受信機。
若すぎる廃墟とはいえ、何か先人の痕跡はあるだろうと、床下収納をものぞく覚悟で、とりあえず、台所へと、進んで行ってみることに
つづく…
「廃墟での必要悪」行ってはいけない、若すぎる廃墟.2
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コメント
コメント一覧 (6)
建物自体は頑強そうで新しかったので、転用可能だと思っていましたが解体ですか。わざわざ解体するぐらいだから、別の建物が建つのでしょうね。
電気野郎さん
蛍光灯の器具を取替えるだけでも、本来なら電気工事士の資格がいるんですよね。廃業とはいえ、無闇に電気設備を撤去できないわけで、そのままになっている理由もわかるような気がします。
>最近YouTubeやTwitterでもマニアが売買しているようで...
メルカリなんかは匿名売買が出来るので、限定的な市場かもしれませんが、そういった物が流通するんでしょうね。
>古い廃墟には真空管を使用した製品もあるかもしれませんし、それこそコンピュータなんかはZ80マイコンを積んでいるかもしれません。
現に僕もそれらはよく見ます。廃墟で熟成を重ねて、価値があがってくるのもありそうです。昔、ファミコンソフトのデッドストックを求めて、おもちゃ屋を巡ったことがありましたが、価値の無いスーファミのソフトには手を付けませんでした。ところが、今や、とんでもない値段のSFCソフトがゴロゴロしています。
>生産終了から時が経ったものが普通に残ってるというのも、廃墟の魅力の一つだと思います。
相対した時は、胸が震える瞬間ですね。生活日用品でも、あまり古い、江戸時代の物なんかは萎えるんですが、昭和ぐらいのだと、まだ物に人の息づかいが残っていそうで、心を鷲掴みにされてしまいます。そういったのを見つけていけたら思ってます。
カイラスさん
PSEなどの安全面で海外製品の仕様は厳しかったりもするのです。電気も危険なものなので(工事をするのに資格も必要ですし)まさに安全第一です。
>こいった製品に、レア部品だとか、あるんですか。
メロディICは確か20年くらい前だったかに主要メーカーのセイコーエプソンが生産終了したんですよね。最近YouTubeやTwitterでもマニアが売買しているようで...確かハイハイ店番にはSVM7966だったかを使っていたと記憶しています。
松下もメロディICを製造していたのですが、仕様が合わないだか何だかでセイコーエプソンの製品も採用していました。T社やP社の警報機でもセイコーエプソンを使っていたと思います。
>こういった物件、大抵オーナーがご老人だと思います。
なるほど...やむを得ず放置している感じなのですね...
そういえば、ヤフオクを見ればわかりますが、時々旧型のハイハイ店番も出品されているんですよね。
>ハイハイ店番の内部部品に希少性がある
メロディICで言うと電話機にも入っていますし、メロディICでなくても古い廃墟には真空管を使用した製品もあるかもしれませんし、それこそコンピュータなんかはZ80マイコンを積んでいるかもしれません。
生産終了から時が経ったものが普通に残ってるというのも、廃墟の魅力の一つだと思います。
電気野郎さん
無知な者としては、aliExpressあたりで安いのを買えばと思ってしまいますが、やはり、パナのような日本製がこの分野ではまだ信頼が厚くてコンビニにも採用されているんですね。
>内部に入っているのが、メロディICというまた貴重なもの。
こいった製品に、レア部品だとか、あるんですか。今、中世ヨーロッパ時代の廃墟を漁って、美術品を盗む、みたいな内容の本を読んでましたが、現代の廃墟にも、見過ごしがちなお宝が眠っているもんですね。盲点でした。
>こういう設備を売るだけでもお金になるだろうのに放置...やはり解体はお金がかかるのでしょうね。
こういった物件、大抵オーナーがご老人だと思います。やる気も無いのでしょう。
>捨てるにもお金がかかるし、売るのも大変だからだと思います。
使えそうなビデオやテレビぐらいは売ったと思いますが、後は二束三文ですからね。ハイハイ店番の内部部品に希少性があるとか、ご老人のオーナーは知らないだろうし。
ためになる情報、ありがとうございます。他の廃墟でもハイハイ店番を見つけたら、また掲載しておきます。
内部に入っているのが、メロディICというまた貴重なもの。
これが生産終了になったから旧型が生産終了になった、と聞いたことがあります。
こういう設備を売るだけでもお金になるだろうのに放置...やはり解体はお金がかかるのでしょうね。
設備に限らず、家具等も残されているのはやはり捨てるにもお金がかかるし、売るのも大変だからだと思います。