[登場人物]
キョーコ(菊田京子):道東の廃屋に40年前の日記を残した少女。
しのまい:キョーコの姉。イノセントなこころの持ち主。
白河:廃墟探検家。廃屋の日記を本人に返すべく現在のキョーコを追う。
サブ:情報屋。キョーコを追うため白河と行動を共にする。
三田澪:廃墟好きの女子大生。その正体はキョーコの一人娘。
「しのまいさんは母と会った翌日に養護施設の寮を引き払い、自分の名義で遠払に母と2人の為の家を借りました。母は記憶と現在とのギャップに苦しめられて、ベッドに伏したまま外出することもできなかったそうです。」
遠払・・・白河にはその地名に聞き覚えがあった。そしてすぐにそれがキョーコの日記に記載された、海岸沿いのある秘境と呼ばれる地であると気が付いた。
その時、初めてしのまいが口を開いた。
「昔ね、父ちゃん母ちゃん京子と、四人で遠払へ花壇作りにいったの。赤い花をたーっくさん植え替えたんだ。そいで、4月に京子と行ってみたの。花壇はもうなかったけど、石碑にちゃんと家族四人の名前が残ってたんだよ・・。」
幸せだったころの思い出を、満面の笑みで誇らしげに語るしのまい。サブが思わず鼻をすすった。澪は啜り泣きながら涙でぬれた顔をしのまいの肩に押し付けた。
未来は過去によって決まる・・だから過去のことには十分気をつけなければいけない、白河はにじんだ視界で、昔どこかで読んだそんな格言を思い出していた。
「・・しかし澪、一体どうやってお母さんとしのまいさんの居場所を突き止めたんだ?」
サブは手の甲でごしごしと目の縁を拭うと、おもむろに訊いた。
「それは・・サブさんが、サブさんが私に母達を見つけるヒントを教えてくれたんですよ・・。」
澪が赤い目でサブに微笑みかけた。
「俺が・・・ヒントを?」
「ええ、仙台行きの前日、サブさんが当日5月30日の日記について教えてくれたこと、覚えていますか?(第8話参照)」
記憶を辿るサブの目が細められる。
「あれは確か・・・あの日の天気のことだっけ?」
澪は笑顔のまま静かに首を振った。
「いいえ、サブさん。あの日記の記述で大切なのは、天気のことではなかったんですよ・・・」
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コメント
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更新が楽なようにさらに進化させてツイッターのタイムラインを埋め込んでみましたが、スマホ版では表示されないというがっかり感。スマホの方はすぐにやらなくなりそうです。