入舟-1
 十五年目に突入をした僕の車の車検などがあり、益々支出が多くなり懐具合は寂しくなる一方の近頃、最近では奥多摩の方まで足を伸ばして廃墟巡りなどをしているが、もっと、手頃に、格安に、どうせだったら、自宅から片道五百円の乗車賃ぐらいで行けて、なおかつ、廃墟らしい廃墟   最近また廃墟系の写真集をみて思ったが、どうも「古い物を撮ったもん勝ち」競争の呪縛に囚われてやしないかという自己嫌悪に陥ってしまったことががまず一つ・・・

 資本力があり、それが仕事でそれだけに時間を費やせるプロがいるのだから、模倣どころか、同じレールに乗っかってしまい、数段落ちることをやっていたら、僕の存在意義などはどこにあるのかという、自分の行くべき方向を見失いつつあった、昨今   

 古くは赤瀬川原平、近年ではみうらじゅんのような、街中面白スポットのインスタ映え列挙を、おまえも仲間外れにならないように、どうせ廃墟とか普段似たようなことをやっているのだから、人寄せにやらなくていいのかよ?という、同調圧力に屈しなくてはならないのかという、迷い。あれって、誰にもできて耳目を容易く集められるので、やらないよりはやってみればいいのだろうけど、キリがないし、いくらやっても、みうらじゅんの手柄になってしまうような気がして、ましてやツイッターで披露など、鼻をかんだティッシュのように、クスッとされてポイ捨てで終わってしまうのは明らか。肝心のブログに思ったほど誘導できないのは、偽装かもしれないが、やたらフォロワー数が多い割には、ブログのアクセス数が日に30~100ぐらいしかない人をみても、お察しの通り。

 やはり、自分の芯を改めて見つめ直すべく、普段からこだわりを持っている、廃墟に眠る人のストーリーの掘り起こしを主眼として、やるべきなのだなという、見失いかけた意義を再確認し、そんなものがありそうな都内から気軽に行ける廃墟なはいだろうかと、悶々としていたところ、実に盲点ではあったが、ありました。

 山手線内ばかりを調査していたが、もう大型物件はそう残されていなく、あってもセンサーやらなんかで、要塞化されているのばかりだ。



入舟-172
 都内ではないが、地理的には東京都にある奥多摩湖なんかよりはよっぽど気軽に行けるお手軽さがある。

 横浜市、東急東横線「綱島」駅から早歩きで二分もかからない場所にある、廃墟「割烹旅館入船」。

 割烹旅館の表門にはバリケードが築かれている。

 今ではタイムズの駐車場になっているこのスペースは、かつては、旅館の駐車場だったに違いなことは、不自然な門の存在感、旅館の離れのあずま屋の立地の違和感から、容易に想像できることだろう。

 廃墟と現代の歪(ひずみ)を一つにおさめた決定的な一枚だと自画自賛したくなったが、記事を書く前にチラリとネットをみたところ、ほぼ同じ構図で撮っている人がいたばかりでなく、雲の形まで酷似していて、並べてよく見ないと、画像の流用疑惑まで問われかねないぐらいに似ていたカットがあった。

 余計なバイアスがかからないように、情報を遮断していつも書いているが、似てしまわないように気づかうのか、それとも、「俺のやる事がオリジナルだ」ぐらいの気概を持った方がいいのか、自分にまだ自身が無いだけに、難しく迷いどころでもある。

 さて、どっから行くかなと、駐車場を見回すと、あのあずま屋の前に、二十代後半の女性が立ったままで、動かない。スルッと開きそうな木戸の前で、それを塞ぐ門番のように、立ち尽くしている。

 駐車場の車と女性とは関係が無いだろう。あんなに離れた場所にいるということは、駐車中の車には触れないし、弄らないし、全くの無関係ですよという意思表示でもある。

 彼女がなかなかどかないので、バス停の方へ行ってバスを待つフリをしたり、駅まで行きかけて戻ったりを繰り返したりして数分を費やすが、彼女は敷地の外れの廃屋前にずっと立ったまま。

 もしや、彼氏が廃墟マニアで、あの小屋から中へ侵入を果たし、彼女は見張り番として、立たされている最中なのではという考えが、ふと、よぎる。



入舟-166
 ママチャリを伴って、もう一人の二十代後半の女性が歩いてきて、門番のようだった女性と会話を始めた。パートへ行く待ち合わせだったようだ。

 女性らが去った後のあずま屋に早速近づき、戸の具合を確認するが、微動だにしなかった。正攻法では無理だということだ。 いや、そもそもが、正ではないのだけれど。

 外周を確認してみることにする。



入舟-167
 横浜の街の、ほぼ駅前といっていい場所に、武家屋敷みたいな廃墟が広大な敷地内に、数棟はあるだろうか。



入舟-168
 塀が一段低くなっている。小道を挟んだ向こう側は、半分が取って付けたような駐車場。もう半分は柄の悪そうな作業員が頻繁に出入りする工事の真っ只中。

 周辺が再開発をされている様子なので、この物件も遅かれ早かれ、取り壊しになるのではないだろうか。



入舟-169
 強固なバリケードが続く・・・



入舟-170
 割烹料理屋がなぜこの規模?と疑問に思うが、昭和四十年頃、この付近には温泉旅館が数多くあったようで、この入船はその時の名残の一軒だったようです。



入舟-171
 裏門にも当然、厳しい管理が行き届いている気配。



入舟-173
 水車の意匠をあしらった正門の飾り。

 ここを登ろうものなら、ポキポキ折れるのは火を見るよりも明らか。



入舟-30
 無事、着地することができた。

 ここまで清々しく街中で登ったのは、初めてではないだろうか。少し前の廃墟ラブホテルでもやったが、あれは多摩湖の湖畔という、人恋しくなるような殺風景な場所だったので、訳が違う。

【読んでおきたい】湖畔の廃墟ラブホテル訪ね歩き
  
 居座りホームレスなどいなさそう。
 
 外からも見えた、この雨戸で閉じられた建物に入ってみることに   



入舟-2
 戸をガラガラとやると、台所と、脇には置いていかれた小道具など。



入舟-3
 まぁ、置いていくだろうなという物ばかり。



入舟-5
 こういうのは一番処分に困りますね。

 前の大垂水峠の廃墟やその他でもそうだったが、日本人形の置かれ廃墟率はとてつもなく高い。

【併せて読みたい】廃墟、家族崩壊のお宿



入舟-157
 子供が怖がりそうなので、持ち帰ることも出来ず。



入舟-159
 廃墟の暗がりでこれを並べて撮っている人間もまた、どうかと思う。



入舟-161
 サファリパークの土産物売り場でもないだろうし、どこで売っているのか不明な、ライオンの温度計。



入舟-4
 隣り合った押入れ部分は、ひどく損傷が激しい。



入舟-6
 移動してみます。



入舟-7
 この長い廊下は、締め切られて連なっていた雨戸の部分。



入舟-8
 足跡は無いみたい。



入舟-9
 宴会で使用されていた大広間でしょうか。



入舟-10
 見上げると、金箔の天井に鶴の絵。



入舟-11
 隣の部屋は崩壊が進行中。



入舟-12
 配電函と書いてある。ブレーカーのことのようです。



入舟-13
 行き止まりまで来て、振り返る。



入舟-15
 オン・オフのスイッチは本体にあるのに、コンセントを介して伸びたスイッチがあるということは、蛍光灯の紐みたいな役割なのだろうか。



入舟-16
 バリケードのあった正門をくぐると、この玄関前に来るようだ。お出迎えするのが屏風絵。



入舟-17
 僅かな断片を残すのみ。



入舟-18
 正面玄関を左に折れると、トイレがあった。



入舟-19
 映画「ポセイドン・アドベンチャー」並の障壁を越えて進んで行く・・・


 かつてない長時間探索を敢行し、数々の離れ部屋、従業員部屋にハイカラな社長室、大厨房に風呂施設、その他、本邦初になるだろう、オーナー夫妻の肖像画を公開予定   




つづく…

「塞がれた洋風部屋」駅前に眠る、廃墟旅館.2

こんな記事も読まれています