多摩湖-121
 バブルが崩壊して破綻した別荘地に放置されたままのコテージのような、とある一室に入ってみた。



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 一番上の通信カラオケのあった棚は空(から)になっている。転売可能だったのだろうか。その下の細い枠の中はミキサー。そして、VHSのビデオ・デッキ、有線放送、と並んでいる。

 たかだか、十年前頃の機械なのに、今では全くの無用の長物と化している。若者の旺盛な好奇心を満たすため、次から次へと新しい機器の導入を迫られるこの商売、ギリギリの資本で個人が細々とやっていけたのは、通信カラオケが出現する前ぐらいの、のんびりとした、昭和の時代までの話だったのだろう。



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 アリスがPOPアートをあしらったグラフィカルなタイルなら、こちらは落ち着いた、出しゃばり過ぎない花に、高揚感を色で表現した、タイル。

 ホテル名や世界観が似通ってしまっているので、僅かな違いを見出そうと、こんなところにも細かい気配りを忘れなかった、オーナー。



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 僕はあくまでも、オーナーへのねぎらいや、この先への提言を主目的としているのに対し、破壊行為をしたり、落書きのような承認欲求、示威行為を残して行く者が多いのも悲しいことながら、また事実。

 二週間前に撮られたプリクラ。彼らは小学生にも見えるが、プリクラの撮影時間が夜の八時過ぎ、その足でここに来たとして、夜九時は経過しているだろうから、そんな時間にブラブラしている小学生の一団はちょっと考えられないので、中学生の一、ニ年であると見る。せめて、ただ見学するだけにしておいてくれ、その一言を伝えたいがために、あえて、そのまま掲載することにした   



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 長期間セロテープを保管しておくと、徐々にせり出してくるのは知っていたが、このように、上へ出てくるものだったのか。



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 荒れ果てた、駐車場。



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 精力的に、次から次の部屋へと。



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 間違いがあってはいけないと、念の為、裏の確認も怠らずに。



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 こんな裏の死角スペースでも、見逃してはいけない逸品があった。王冠デザインの電燈カバー。やはり、「ホテルクイン」は、女王をコンセプトとしていたようだ。イギリス王室に憧れを抱く、お婆さんあたりが、オーナーだったのか。



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 炬燵まである部屋。他からマットレスが集められている。不法滞在者が、長逗留していたに違いないだろう。



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 一拍ゼロ円の部屋で、新しい人生をはじめるにあたり、極力、倹約するために備えていたのか、それとも、世の中の全てに絶望をし、そのベッドで仰向けになり、自分を映す天井をじっと見つめながら、来る日までの、カウントダウンをしていたのだろうか   



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 内も外も、息苦しい終末感が漂う。



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 正式名「AIRCASHIER」。無駄でしかなかった、割高な装置。



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 全面ガラスシャワー室、レースのカーテンは端に寄せられたまま。



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 花とクィーンで統一されたコンセプト。その円盤には、オーナーの優しい人柄が  殺伐とした戦場のような中で  まるで映し出されているかのようだった。



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 女王の寝室といった演出か。飾り柱が目を引く。



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 メディア端末機の上に置かれていたコントローラー。プレステ2あたりを模した、偽物コントローラーだ。おそらく、何十種類かゲームが入った、偽ファミコンゲーム機が設置してあったに違いないだろう。



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 ドアを開けて確認する。空でした。



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 纏わりつく蔦を振り払いながら尚も進むと、その行き止まりには、オーナー家族が住んでいたらしき、住居棟がドンと控えていた。

 何か戦利品はなかろうかと、ベッドの上にうず高く積み上げられた残置品の山を探っていると、奥より一本釣りのように引き出したのは、あの、誰もが知る、スーパースターと並んで記念写真を撮る、女性オーナー、その人の、朗らかさの滲み出る、貴重な大判写真を発掘することに、見事、成功をする   


 

つづく…

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