家主の家-30
 あと五年は再訪問をしないだろうと、廃屋の熟成具合をそっと見守っていこうとしていた物件ではあったが、コメント欄より、気になる報告を受けることになった。

つい先日行ったのですが、廃屋のひとつが完全に解体されていました。もうあの廃墟を拝むことはできないのですね…

 東京オリンピックを控えて、世の中は好景気で不動産の開発ラッシュに沸いているようでも、ここの空き家群落は杉並区でありながら、奥まった住宅街ということもあり、世の潮流から取り残されているものばかりと勝手に決め込み、よって、謎めいている青年家主の廃屋も、永遠に存在し続けるのだろうという希望的観測を漠然と心の片隅に抱き続けていたところ、突然、横っ面を叩かれたような、驚愕する一報を聞かされ、居ても立ってもいられなくなってしまう。

 親戚の子供の成長具合を気にかける叔父さんのように、時折、数年ごとに、廃屋群落を訪問し、その成長過程(朽ち具合)に愛でるような眼差しを向け、かつ、謎も少しずつ読み解いていけたらなと、悠然と構えていたが、どうやら認識が甘かったのかもしれないようなのである。

 解体済みとは、教科書のあった一番奥の損傷の度合いが一番激しかった、あの空き家なのか、それとも、手前の三軒長屋の空き家か、もしかして、青年家主の空き家であるのか・・・

 ちょうど、新しいカメラバッグを買ったばかりで、その利便性を確かめてみたかったこともあり、知らせを受けた翌日、朝食もそこそこに、現場へ行ってみることにした   



家主の家-57
 到着してから、約三分ぐらい、不動のまま。言葉も無かった。

 手前の森とそれに覆われていた、三軒長屋の空き家廃墟群が、一切合切、土もろとも、消失してしまっていた。



長屋前
 ちなみに、同じ場所の以前の写真。

 大規模開発が、始まろうとしている、前兆なのだろうか・・・
 


家主の家-58
 以前なら、このロープさえ背中にした後なら、手前の森と三軒長屋が死角となり、ひと目を気にすることなく、思う存分活動ができたが、眼前の状況だと、生き恥を晒しながら砂利道を横断し、特に、裏庭ではこの通りからは丸見えになってしまう。



家主の家-59
 かろうじて、無事で何よりだが、直接晒されている、青年家主の家屋。

 難易度は、以前とは比べ物にならないぐらい、跳ね上がっている。



家主の家-1
 ロスコのカーゴパンツに、作業着ブルゾン、カメラリュック、という装い。地質調査風のうつむき加減で、大股で砂利道を横断し、その間、祈るように耐え忍び、這う這うの体で、成年家主家屋横の死角に飛び込んだ。見られてはいない。



家主の家-2
 建物はほとんど変わっていないと思う。竹の密度が増したぐらいだろうか。



家主の家-4
 奇跡の廃屋が拝められるのも、今年一杯なのかもしれない   



家主の家-3
 お土産で貰った、お菓子の缶ケースでしょう。中を拝見させてもらいます。



家主の家-6
 封書が20円で送ることができた時代。手紙はいろいろあったが、宛名は彼のみなので、独身住まいだったことは、ほぼ間違いない。

 名前は、「I」さんでしょうか。



家主の家-7
 美術の会合が開かれる旨の手紙。



2
家の前で


 新たに発掘された、貴重なお写真。門の前で気取ったポーズをとる、I(アイ)さん。

 もしかして、今いるこの廃屋の前なのではと、一瞬、思った。そうだったなら、そのあまりの変わり様に驚愕するところだったが・・・
 
 昔のカメラなので、遠近法が狂っていて、二階部分は、道路を一本挟んだ、向かいの家なのではないかと。



門
 門柱の頭の部分が違うので、別宅の写真のようだ。だとすると、写真の家は実家しか考えられない。



家主の家-5
 こちらからは入りにくい。



家主の家-8
 前回と同じく、居間より   



家主の家-9
 違いは感じられない。僕と、唐沢弁護士(コメント欄ネーム)さん以外、訪問客はいたのだろうか?



家主の家-10
 前回気になっていた、折り鶴を大写しで。

 長期療養の果に、そのまま・・・なんてことも、あったりするのだろうか。タバコのパッケージで作った傘もある。



家主の家-11
 残りの手紙など、そっくり残されたまま。



家主の家-12
 前回、冷蔵庫の中に麦茶が残されていたのを発見して、家主が家を出て行ったのは、夏のことだと推察したが、どうやら、当たっていたようだ。これは炬燵用の電気コードだろう。冬に備えてしまっていたに違いない。



家主の家-15
 湿度が無い分、同じ山でも登りやすかった。



家主の家-16
 今の独身者なら、新聞を取らない者も多いが、家主の時代なら、当然のように購読していたことだろう。



家主の家-19
 醤油瓶に、麦茶のペットボトル。前と同じだ。



家主の家-17
 独身男性の哀愁が漂う、裸電球。



家主の家-20



家主の家-18
 こんなに山と盛り上がっている理由を考えてみた。

 閉じられていた、中が満杯の押入れ。年月により、襖が中味の荷重に耐えられなくなり、ダムの決壊のように、内より物が押し出され、居間にぶちまかれたといったところではないのか。



家主の家-22
 前の訪問時には、じゅくじゅくして触るのも嫌だったが、今回はカラッとしていることもあり、台所の横の倉庫に積み重なっていた、漫画雑誌を丹念に調べてみることにした。

 ジャンプのみならず、あらゆる漫画雑誌を読み込んでいるような、無類の漫画好きであったことが判明をする。



13
これから飯盒炊飯


 漫画の山を調べ終えた後は、これが最後になるだろう、成年家主の書斎探索に取りかかることになる。

 出身大学、大企業就職、偽りではなかったオカルト学習法への傾倒、蔵出しとなる残りの写真一挙掲載、驚きの定期券、他、彼の記録が地上から消却されてしまう前に、なんとか寸前で捕獲をし、ご紹介できる運びとなった   




つづく…

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