廃墟ラーメン屋-105
 半世紀以上も廃墟化していたというラーメン屋の店内にて、遺体発見のニュースがネットの片隅でちょっとした騒ぎになったのは、一年と少し前ぐらいのことだっただろうか。

 映画「スタンド・バイ・ミー」を思いおこし、少年時代のゾクゾクするような好奇心が湧き上がりでもしたのか、いい歳をしたおっさんが、付近で『あの廃墟に遺体があるらしいよ・・・』という噂を聞きつけ、そんなら自分の眼で確かめてみようと、でも一人だと不安なので、知り合いを伴って、リバーフェニックスとウィルウィートンよろしく、廃墟ラーメン屋を訪れたのが、事件発覚のきっかけだったのだという   

 幼少の頃に近所にあった、不気味な廃屋の記憶。とてもじゃないが、怖くて踏み入ることのできなかった、廃墟米軍ハウス。廃墟までとはいかないが、クラスで皆が口々に話題にしていた、全体を蔦が纏ったあばら家に住む、キチガイおじさんの生態への興味。

 死体発見者は六十を過ぎたおじさんだったようだが、彼の老いてもなお衰えない、ともすれば、卑しい、下衆な好奇心ではあるが、内にふわっと、ほのめきはためいた、少年時代に芽生えて御歳高齢ながらいまだ消えずに残っていて呼び覚まされてしまった探究心に駆られるようにして、一般社会の常識からは外れたかに見える行動をとってしまったことは、このようなブログをやっている手前、個人的には、非常によく理解できてしまうのである。

 一報のニュースが流れたその夜には、ネットではその廃墟ラーメン屋の場所が特定されていた。埼玉県の春日部市だとか。正直、クレヨンしんちゃんの舞台になっているということ以外、特に関心を持ったことのない、東京からはかなり離れた場所にある街、ベッドタウン、ぐらいの印象しかない。

 ピンポイントで特定された場所をグーグルストリートビューで確認してみたが、草と木が全体を覆っていて、中にあるやもしれない建物を目視することはできなかった。建物はすでに解体されてしまっている可能性もあった。

 建物が仮に残っていたとしても、昨日の今日では騒がしいだろうし、規制線が張れられて警察官か警備員が常駐している可能性もある。

 しばらく、この案件は保留、温めておこうと、一旦ブラウザを閉じ、時が過ぎるのを待った   

 数カ月後、同じ場所を何となく開いて(グーグルストリートビュー)みたところ、画像は更新されており、生い茂った草木が隠しようにも、隠しきれていない、不気味な二階建ての廃墟を、そこに発見することができた。

 片道二時間以上、往復の乗車賃、二千円以上もするけれど、遺体発見おじさんの奥底に、数十年ぶりに、再び探究心を呼び起こしたその廃墟ラーメン屋、在りし日の怖くてのぞけなかった廃屋の中を僕はそこに見ようとしているのだろう、大人になりきれていない未だその手前で少年の頃の夢の輝きを見続けている自分・・・ 高ぶった気持ちをどうにも抑えることができずに、気づくと、足は遥か遠く春日部の地へと、向かっていたのだった   


 

廃墟ラーメン屋-106
 埼玉県、春日部市。国道16号線沿い。少し先に行くとファミレスやディスカウントショップが集まっているが、この廃墟ラーメン屋の周囲には工場と倉庫ばかりの寂しい光景が続く。

 一心不乱に種を植え続ける、農婦。

 最後、廃墟ラーメン屋の全てを見終わり、駅に向かおうと、建物を出て畑を突っ切って歩いていると、このお婆さんに『この人殺しがっ!』みたいな鋭い目つきで睨まれることになった。



廃墟ラーメン屋-110
 たまにどさん子のラーメン屋は見かけるものの、どこもこのような、今にも潰れそな老朽化した建物ばかり。一昔前なら、外食で味噌ラーメンを食べようと思ったら、ここしかなかったような気がするが、時代が変わってしまったのでしょう。



廃墟ラーメン屋-108
 この時、頭にあった情報は、二階建ての元ラーメン屋ということだけ。二階には、別の店が入っていたようだ。



廃墟ラーメン屋-109
 周囲をうろうろして撮影をしていると、農夫らしきお爺さんが畑から出てきた。彼は歩道に出てスタスタと歩き出すと、畑一つ分反対側に駐車してあった軽自動車に乗って、去って行った。

 自分の畑なら、畑の中を歩けば済む話だが、それをしないでわざわ歩道を使うということは、ここは、市民農園か、または、土地のオーナーが区画ごとに貸している、貸し農園なのだろう。そう思って、畑全体を見回してみると、なるほど、さっきの農婦の他にも、所々思い思いに人達が農作業をしているのどかな風景があった。

 それならば、遠慮がちに畑の脇を通って廃墟の建物まで行けば、あの農婦に罵声を浴びせられる心配も無いだろうと、踏んだ。オーナーの嫁でもなく、畑を通ろうが文句を言われて干渉されることもないに違いない。

 この脇道の行ったすぐ先にある、休憩小屋みたいな所には、その農婦がさっきの位置から移動して来て陣取っており、そこのすぐ前を通るのは、衝突リスクがあり、現実的ではなさそうである。

 お爺さんの車があった場所から歩いて畑の端を通り、位置的にお婆さんの後方、どさん子ラーメンを死角にして、開かれた口から入っていけば、すんなり潜り込めそうに思えた。



廃墟ラーメン屋-103
 歩道を歩き迂回。畑内の歩道際にあるファンス沿いを歩き、建物横の剥き出し口まで来ることに成功。あのお婆さんは、右奥の掘っ立て小屋の中で何かしているようだ。こちらには気づいていない様子。



廃墟ラーメン屋-100
 今では珍しい、テーブル筐体のゲーム機が店前に。他所から来て投棄された可能性もある。



廃墟ラーメン屋-6
 いずれの機械も、ワンレバー、ワンボタンの、年代物。



廃墟ラーメン屋-7
 縦型モニターのワンボタン式なので、インベーダーかギャラクシーウォーズあたりかと思ったが、ボタンの上のロゴがギャラクシアンぽくも見えた。



廃墟ラーメン屋-102
 探って行くと、そこのその場所で発見されたであろうことが確実な、古くからの儀式としての行いを示す、あの跡を、逸らそうとしても、嫌でも視界に入って来ざるを得ないような現場と、遭遇してしまうことになった  




つづく…

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