お宿トップ-1
 バーンアウトして、冷えて固まった溶岩のようになってしまったベッド、



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それを、出火当時、血なまこになり、必死に消しただろう、奮闘後の消化器が横たわっていた。

 焼身自殺だったら、自ら消そうとするだろうか。

 いや、吹き出る黒い煙を見て駆けつけた、別の離れに住んでいた、似た者同士の仲間か。

 天井まで吹き上げる炎に恐れをなして、ふと、我に返り、思いとどまったのかもしれない。



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 単なる寝タバコの可能性も考えられる。一歩間違えれば、山火事になりかねないところだった。

 寒い冬の夜、着の身着のまま、所持金は数十円、だったら、一泊の雨露しのぎぐらいなら、どうぞご自由に・・・と言いたいところだが、社会との接点が無い、我道を行く、誰にも迷惑をかけませんよと、隠遁生活者を称するならば、せめて、火の後始末だけは、念には念を入れて用心して欲しいものだ。



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 もう一段、かじりつくようにして急斜面を登って行く。

 本来なら、交互に折返しながら上に行く九十九折りの山道があるはずだが、枯れ葉や草が大量に堆積をして道を隠してしまっているので、急勾配へ無理に正面から立ち向かうしか手立てはない。

 そんな時に、命綱となったのが、お宿名物だった、アイデア御主人渾身の作、お食事運搬ロープウェイの忘れ形見でもある、いまだ張り巡らせれた跡の残る、ワイヤーケーブル。

 このケーブルが無かったら、上へ上への探索は断念していたことだろう。

 気になったのが、大の男がぜえぜえと息を切らすような急勾配であるのに、そこを、カツ丼ならまだいいが、ラーメンや鍋焼きうどんを、ロープウェイのように運ぶとなると、安定性は確保されていたのかという、疑問が浮かぶ。

 ラーメン程度なら、多少揺れようが昔のてんやもののように、サランラップで密封しておけばいい。それでも、激しい縦揺れに横揺れで、内容物はグッチャグチャに混ざっていただろうけど。

 鍋焼きうどんの場合、土鍋の蓋を何かしらの方法で密着させていたのだろうが、空気穴から漏れる可能性はあっただろうし、ラップではあの重たい土鍋の蓋は押さえつけられなかったに違いない。

 また、食事ロープウェイの出発地点は、母屋の今は崩れている部分だと思われるが、山の斜面を真っ直ぐに登るならだけならまだしも、安定性はともかく、位置的に、ロープウェイの軌道はカーブを描かないと、母屋からこの山の中央寄りまでは来られなかったはずだ。

 お食事ロープウェイの揺れ問題、僕の浅知恵で推測するなら、今では見なくなった、出前のスーパーカブの荷台に付いていた、岡持ちの揺れを吸収する、ショックアブソーバーのような、ダンパー付きの台で、振動を抑えていたのだろう。それでも、ロープウェイの揺れは想像以上に激しいはずで、汁物の以外にも、定食類も、完全には抑えられていたとはとても思えない。

 ロープウェイがカーブをする方法と蓋の仕掛けは、どうやって解決をしていたのか、ちょっと思いつかなかった。前例がないし、ましてや、動力は手動だったのか、電動だったのかも不明である。

 技術の進んだ現代にいながら、数十年も前の手作り機械の仕掛けが想像つきにくいとは、オーナーは、よっぽど、先進的な発想の持ち主だったということが言えるに違いないだろう。



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 ちょうど欲しくなるようなところに、HI-Cのロング缶が落ちていた。

 少し前の時代の訪問者が、ここで喉を潤したのか。



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 土や砂まみれになりながらも、急峻な山を、登りに登る   



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 まさか、大の字になり、いびきをかいて、熟睡でもしているのか。



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 この瞬間には、人はいないようたが・・・



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 滞在の痕跡はある。小説を好んで読んでいた様子。

 近づく物音を聞き、慌ててドアも閉めずに、飛び出し、山影に隠れている可能性もあるが、断定は出来ない。



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 僕でも、旅の途中なら、ついうっかり一夜を過ごしてしまいそうな、快適なそうな空間ではあった。



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 上を見上げてみる。

 アイデアやシステム作りには、才能を遺憾なく発揮していた御主人だが、この土台を見ると、素人の即席手作りDIYなのがよくわかる。

 数年後、土砂とともに、ふもとに滑り落ちていそう。



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 重力に逆らうようにしての移動は困難を極めた。



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 また、九十九折を曲がり、一つ上の高みに来る。



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 パイプ状の土台に打ち付けもせずにただ乗っかっているだけ。

 男三人もいれば、持ち上げて下に落とせるだろう。



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 安くはない、東芝のボイラー。



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 次の部屋、行ってみます。



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 損壊が激しすぎて、露天風呂状態。



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 大木をくぐりながら   



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 ここだけが目立って崩れているのは、カミナリでも落ちたからなのかも。



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 この離れでは、正真正銘、ラブホテル化したことを、如実に物語る、ある、生々しいアイテムが、当時からそのままに、保存されているのを確認することとなった   




つづく…

「ご主人嘆きの肉筆」廃墟、家族崩壊のお宿.6

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