入舟-88
 社長室を出るとそれほど大きくないサイズの台所があった。オーナーである社長とその妻が個人的に使用していたものではないだろうか。



入舟-91
 横浜だけに、夫妻は中華料理が大のお気に入りか。立派な中華鍋をいつでもすぐ振るえるようにと、取り出しやすい壁に掛けてあった。



入舟-89
 さらに隣には、夫妻の寝室と思われる部屋。

 ここだけ、無駄に散らかっている。

 かつてここには金目の物があり、散々荒らしまくられた結果ではないのか。手当たり次第に箱などを引っ掻き回した跡があった。



入舟-90
 唐傘。こんな傘を、夫婦で常用していたとしたら、なんて粋なご夫妻であったことか。夫が唐傘を持ち、妻を従えて、カランコロン下駄を鳴らしながら、相合い傘で駅前の喫茶店まで息抜きに。そんな仲睦まじい姿が、たかだか二十五年前に、ここ網島駅前で見られていた   



入舟-94
 玄関から続く廊下を進んで行くと、これは、事務室でしょう。



入舟-96
 割烹入船最後の日、事務員達は、特に身の回りの整頓などすることなく、いや、家でくつろいでいる最中に、廃業宣告を受けたのか、引き出しの中などは当時のまま時間が止まったままだ。



入舟-97
 事務員といっても、勤続年数数十年の、お年を召された方だったのだろう。計算機ではなく、ソロバンをご愛用。



入舟-98
 千両箱みたいなのもあったが、文房用具などが入っていた。



入舟-95
 今にも汗臭ささえ漂ってきそうな、オーナーの帽子。社長室で素振りを欠かさない、得意のゴルフにも、颯爽と被って行ったことでしょう。



入舟-99



入舟-100
 居間か、和風の応接室だろうか。昭和の美容院、パーマ屋さんにあったような、今もある?熱をあてる機械、あのローラーボールのような蛍光灯の傘が、時の流れを感じさせる。



入舟-101
 21世紀だというのに、ひょいと壁を越えると、数世紀も前のような姿が、そのままに、残されているものですね。

 奥の棚には、入れ物に入った味噌があった。一家で、この部屋で食事をしていたようだ。



入舟-102
 蛍光灯の前は、この裸電球を使っていたのでしょう。



入舟-103
 油分を失ってカラカラの箪笥。中は布切れ程度しか残ってない。



入舟-104
 お婆さんが毎日花瓶の花を替え、居間に彩りと華やぎを与えていた   



入舟-105
 壁に掛かったメモや冊子類など、いまだそのままに、数十年間・・・



入舟-106
 倒れかかっていたスチール製本棚を、この達磨が、寸前のところで支えていた。次来る頃には、押し潰されているに違いない。



入舟-107
 上の棚にあった、月虎の蚊取り線香。

 僕は全く知らなかったが、昔から親しまれているブランドで、他より凄まじく煙が出て、効果抜群の割に、値段が安いとか。現在でも一部の大手ドラッグストアで入手できるようです。



入舟-108
 様々な鍵類もぶら下がったまま。

 今になって気づいたが、閉まっている部屋や離れもあったので、これで開ければ難なく入れたということだったのか。



入舟-109
 家族団欒の居間を抜けると、旧式の大型保冷庫を備える、巨大厨房がその姿を見せる   




つづく…

「巨大廃厨房、盗癖の回想」駅前に眠る、廃墟旅館.5

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