都内から唯一、日帰りで行けるという、廃村に早朝到着してみたら、既に廃村集落の一部の取り壊しが始まっていた。
大規模一斉取り壊し、ほんの一歩手前といったところであった。
工事車両が数台あるが、まだ業者が来ていないのか、それとも、作業は一定期間中断中であるのか、よくわからなかったが、とりあえず、彼らが来るならその前に、出来るだけ廃屋の探索をしておこうと、まず、廃村集落に入ってすぐ手前右にあった、廃屋に足を踏み入れてみる。
建物は、前面の壁だけがなぜか剥ぎ取られていて、まるでテレビドラマのセットのように、中が露出して、外から家の内部が丸見えになっていた。
おそらく、手前の壁を取り払うと、家の中の家財道具が運び出しやすくなるので、そうしてから人海戦術で全部の荷物を運び出し、家の中を完全に空にした状態で、重機で建物をペシャンと、壊す計画なのだろう。
最後に地面に残されるのは、建物の屋根や壁だけの至ってシンプルな残骸なので、片付けの後処理も楽であると。
これがもし、建物の中に家具やら冷蔵庫が入ったまま取り壊し作業にかかったとしたら、鉄や板が入り乱れた大量のカオスな廃棄物の山となり、その撤去作業は無駄に時間がかかり困難極まりないものとなるに違いない。
解体業者の見事な知恵に感心しつつ、またそれを推察し導き出した自分を褒めてあげたい衝動に駆られるがそれを抑え、少年の部屋の探索を続けていると、見覚えのあるといより、記憶にあるゲーム機の箱を発見。
一部の廃墟マニアが、頻繁にここを訪れていた時期、この家に残されたファミコンは、まるで通過儀礼のような、第一の見物スポットアイテムのようになっていた。
当時誰もが見て手を叩き一様に感嘆の声をあげていたのだ。
『うわぁ、懐かしぃ・・・』と。
その頃は赤と白のファミコン本体とカセットがほぼ原型を保ったまま、机の上に置かれていたが、あれから十数年、すっかり中身は持ち去られ、汚れにまみれた箱だけが残されていた。
1990年代にNECのPC9800シリーズを所有していた中高生ということは、比較的裕福な家の子だったようです。
この頃、一般家庭なら、精々頑張ってMSXがいいところでしょう。
コレクションでもなさそうだし、なぜか、お菓子の空き箱で一杯の引き出し。
ラムネの容器の中には、グリコのアイスのスプーンが。
夜にむしゃむしゃと、甘いものを我慢できない。スイーツ好きの少年だった。
丸ボタンファミコンの箱。
甘党少年は、剣道部所属だったようだ。
1979
あけましておめでとうございマス
~~~~~~~~~~~~~~~
今年もよろしくネ
クラブでもガンバンベ
赤の他人が今読んでも心温まるような年賀状。剣道部の仲間からでしょう。
蛍光ペンなので色褪せて判別できないところがあるが、ハンサムがどうとか書かれている。
自分と同じくらいだと思われる年代の子が、同じ干支の年賀はがきを持っているのを廃墟で見かけた時、あるいは、廃墟ブログで見て、『あぁ、これ同い年かも、こんな絵を書いて、俺も送ったり、貰ったりしたっけかな・・・』と、激しい郷愁に襲われることが、皆さんも、あったのではないでしょうか。
これを見て、送った人の方が、あいつ、どこへ行ったのやら・・・と、在りし日の思い出を胸に、むせび泣いているかもしれない。
これが本当の最後の最後、双方から、お声を寄せていただけたなら、幸いかと思います
平成7年5月2日(1995年)号
最後のアイドルとか言われていた十代の頃の全盛期ではなく、二十代を過ぎて一気に老けたものの、熟女的な可愛さで再ブレイクを狙っていた頃の、高橋由美子が表紙か。表紙を飾っていながら、なぜか巻頭グラビアも無ければ、名前の表記が一切ないのは、トラブルでもあったのだろうか。
1980年7月2日号
週プレと同時期のように思ってしまうが、高橋由美子の表紙のより、十五年も前のものだ。
ゲーム&ウオッチ、ルービックキューブ、チョロQが発売、ポール・マッカートニーが成田空港で大麻所持容疑により逮捕、山口百恵が三浦友和と婚約を発表、松田聖子がレコードデビュー、といった時代。
まさに廃屋タイムトンネルを今、くぐり抜けている最中のような錯覚に陥り、日常では味わえない興奮をこの瞬間体験している。足元がブルブルと、震えが持続して沼を歩くように、態勢が覚束なくなる。
こんな非日常が、こうも手軽に味わえる場所、そこらにありますかと、感慨深く味わい噛み締めながら、時の地層を一つ一つ捲ってゆく
1988年の10月に、平凡パンチは廃刊となっている。
1981年、横須賀の映画館に、剣道部の仲間と連れ立って、薬師丸ひろ子主演「セーラー服と機関銃」を観に行ったのでしょう。
まもなく、こういった彼の思い出の全てが、塵となってしまうことになる
ファミコンやPC98世代にしては古いラジオ。お父さんが長年愛用した使い古したラジオを、貰い受けたのかも。
実際使用していたのは、小学校低学年生の時だけではないだろうか。親から譲り受けた思い出の品だけに、最後の最後まで、捨てられなかったに違いない。
高校生の頃は、小説家を目指していたのかもしれない。
今となっては貴重な、彼の小説原稿の一部を発掘する。
ムネ
たばこにゆっくりと火をつけた。
白く長い煙をはき出し、けだるげに左右に
頭を巡らせた。
目に入る光景は、赤茶けた大地だけだった。
見渡すかぎり生のみずみずしさをあらわすも
のなどない。
奇妙にかわいた荒野**がただあるだけだ。
岩塊とクレーター それのみだ。
「あれから何年たったんだろう。」
男はぼそっとつぶやいた。
「一体何が起きたんだ。
あの緑輝く地球は、ニ百億の人類はどこ
へいってしまったんだ!」
のどの奥から絞り出した声を、風が静かに
払っていった。
妙に乾いた、鼻を刺激するにおいがする風
だった。
5・4・3・2・1・発車(ファイヤー)
グォーー
突っ込みどころ満載と予想していたが、導入部としては、淡々としたポエティックな文体で意外にも引き込まれ、先の展開が気になるようなSF小説作品のようだった。
こんな非日常が、こうも手軽に味わえる場所、そこらにありますかと、感慨深く味わい噛み締めながら、時の地層を一つ一つ捲ってゆく
1988年の10月に、平凡パンチは廃刊となっている。
1981年、横須賀の映画館に、剣道部の仲間と連れ立って、薬師丸ひろ子主演「セーラー服と機関銃」を観に行ったのでしょう。
まもなく、こういった彼の思い出の全てが、塵となってしまうことになる
ファミコンやPC98世代にしては古いラジオ。お父さんが長年愛用した使い古したラジオを、貰い受けたのかも。
実際使用していたのは、小学校低学年生の時だけではないだろうか。親から譲り受けた思い出の品だけに、最後の最後まで、捨てられなかったに違いない。
高校生の頃は、小説家を目指していたのかもしれない。
今となっては貴重な、彼の小説原稿の一部を発掘する。
ムネ
たばこにゆっくりと火をつけた。
白く長い煙をはき出し、けだるげに左右に
頭を巡らせた。
目に入る光景は、赤茶けた大地だけだった。
見渡すかぎり生のみずみずしさをあらわすも
のなどない。
岩塊とクレーター それのみだ。
「あれから何年たったんだろう。」
男はぼそっとつぶやいた。
「一体何が起きたんだ。
あの緑輝く地球は、ニ百億の人類はどこ
へいってしまったんだ!」
のどの奥から絞り出した声を、風が静かに
払っていった。
妙に乾いた、鼻を刺激するにおいがする風
だった。
5・4・3・2・1・発車(ファイヤー)
グォーー
突っ込みどころ満載と予想していたが、導入部としては、淡々としたポエティックな文体で意外にも引き込まれ、先の展開が気になるようなSF小説作品のようだった。
SMマニア
思春期の少年は、まず、グラビアアイドルに目覚める。恋というよりは憧れの対象であった。
やがてソフトエロ漫画雑誌で性行為そのものに興味津々、その先では、恋愛経験を重ねた後に、ふと、SMの倒錯した世界を覗いてみたくなったのだろう。
高校生ぐらいで「SMマニア」とは、かなり早熟した少年だったようだ。
窓際の壁に備え付けの小さな棚があったので、引き戸を開けてみると、奥から彼のとっておきの秘蔵の蔵書がゴロゴロと転がり出てきた
つづく…
「愛国廃村少年と、天皇陛下」廃村に行ったら取り壊し直前だった件.3
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コメント
コメント一覧 (8)
3.5インチのフロッピー、初めて見た時は、果てしない未来を感じたものでした。
>当時わが社の社長が仕事中に 夢中になってやっていたのを思い出しました
株も適当に買っても値がバカみたいに上がったし、土地も言わんがな、遊びのように稼いでいた人がいたようですね。タウンズって、その頃でしたっけ。記憶があいまいです。
>この少年もいまは50代になろうかと思われる年齢でしょうね
これを読んで、「父ちゃんの生家解体される寸前だってさ、今度の日曜、みんなで行こか!」と、ご家族で思い出にふける旅にでも行かれたら、レポートのしがいがあったと言えるかと思います。
>平凡パンチやプレーボーイ。誰もが読むであろう青春のバイブルといった感じでしょうか
僕は平凡パンチ世代ではないですが、週刊プレイボーイはよく買ってました。今考えると、エロや芸能に混ざって、政治ネタは必要無かったですね。はじめから相応の雑誌を買うまでです。
>このナショナルのラジオは私も持っていたかもしれないものです
ナショナルなので、その時代の定番だったのでしょう。80年代もパソコンはありましたが、ラジコみたいなのが出現するとは、誰が想像したでしょうか。電波が入らずに部屋の中を走り回ったあの日のことが、昨日のことのように思い出されます。
>右側の筒がボリュームで左側がチューナーだったかと。なぜ左側が持ち上がっているのか? 無理に力がかかったからかもしれませんね
彼も、「そう!そう!それそれ!!」と、頷いているかも。好きなアイドルのラジオ番組を聞いたナショナルのラジオ、もし彼が来たら、壊れかけのラジオを記念に持ち帰るかもしれません。それまでに、完結させたいと思います。
夢中になってやっていたのを思い出しました。まあ、暇で給料が出るってのは
(お互いに)良いことだとバブル崩壊後にしみじみと感じていました。
この少年もいまは50代になろうかと思われる年齢でしょうね。
平凡パンチやプレーボーイ。誰もが読むであろう青春のバイブルといった感じでしょうか。
あっ。このナショナルのラジオは私も持っていたかもしれないものです。
右側の筒がボリュームで左側がチューナーだったかと。なぜ左側が持ち上がっているのか?
無理に力がかかったからかもしれませんね。
その理由(わけ)は、追憶の地層を掘り起こしたことにあります。胸に手を当てて、もし自分も読んだ雑誌があったなら、顔を赤らめて(正直に)、ほんの束の間でも良いですから、当時を偲んでみてください。もっと彼への興味が深まることでしょう。
この酷暑で、ついにフレームから塩が吹きましたか。僕の部屋では、窓をずっと締め切っていたため、ベランダに握りこぶし大の蜂の巣が出来ていました。制作途中なので、巣に立錐の余地無く蜂がびっしりたかった状態。スプレーを吹き、もぎ取って捨てました。
>今年の3月には不倫真っ最中を直撃取材され イタ~い開き直りをして
泥酔で顰蹙を買い、不倫騒動以後、干されてますね。復活のチャンスを、見事に自分で潰してしまったようです。南くんの恋人、武田真治主演、みてなかったです。
>本体に横切った私のつま先がチョンと触れただけでデータが飛んだ?
RPGだったら、殺されかけても、当時なら文句も言えなかったような、それは罪な行為です。中には、一週間スイッチつけっぱなしもありましたから。
>よく室内に暗号めいた規則性のないひらがなの長い羅列が書かれたメモ書きが落ちてて
セーブ機能が付く前の、呪文やパスワードですね。セーブ機能付きカセットは五年間持つということでしたが、フリマで買ってきた昔のカセットを起動すると、登録名がまりなちゃんとか、いまだにバッテリーが持続していたりして驚かされます。
元アイドルと思えぬ失態を晒した上に、今年の3月には不倫真っ最中を直撃取材され
イタ~い開き直りをして全世界を失笑させたあの南くんの恋人ですね!!
なんでしょう こんな純真そうな時代もあったのですねw元住人と同い年くらいかな?
ファミコンはうちの今は亡き兄貴が熱心にやってました テレビ台の下から引っ張り出した
本体に横切った私のつま先がチョンと触れただけでデータが飛んだ?とかで怒り狂った兄貴に
タコ殴りされたのはいい思い出 どんだけ衝撃に弱いんだよとw
よく室内に暗号めいた規則性のないひらがなの長い羅列が書かれたメモ書きが落ちてて
母が掃除のたびに「たー君 これいるの、いらないの!?」とキレてましたw
つい先日のように、ここから巣立った少年にも、子供がいてもおかしくない年齢でしょうね。
>週刊誌やエロ本は恐らく他から巡りめぐって彼の元へ来たか、偶々拾った
そのパターンを忘れてました。剣道部なら仲間同士で貸し合ったりするだろうし、環境的に、拾うことも多そうです。突飛なSMマニアは、そういうことだったのかも。
>僕も小学生から中学生までは車、戦車のプラモデルに凝り、最期はエンジン式のラジコンと、
僕も一台だけ、エンジンのラジコンカーを持ってました。まず、慣らし運転が面倒だったのと、爆音だったので河原でしか動かせなかったので、実働2回ぐらいでやめてしまいました。すぐ電動に戻りましたが、電動カーが自分にはあってました。
>ファミコンは中学生の時買った記憶がありますが、あれってカセットの挿し込み部分が直ぐ壊れて
主に、カセットの方が痛みやすいです。綿棒に、クレCRCを吹付け、カセットの端子を拭いてやると、ほぼ復活します。綿棒は真っ黒に。
>年賀の遠藤くんはもしかしたら、自宅で公文の家庭教師をされてる可能性があります。 Shiojimaくんは住所を辿ると、更地になっています。
廃村と違って、地元で頑張っておられるんですね。昔の友達の家をストリートビューで見たら、更地だったことがあります。Shiojimaくんの友達も、僕のような空虚感を味わっているのかもしれないです。
週刊誌やエロ本は恐らく他から巡りめぐって彼の元へ来たか、偶々拾った。最悪は書店から万引きの可能性がありますね?(笑)
プラモデルはフェアレディZとトヨタ2000GTかな?
僕も小学生から中学生までは車、戦車のプラモデルに凝り、最期はエンジン式のラジコンと、お年玉では足りず親の脛かじってまでのめり込んでました。
ファミコンは中学生の時買った記憶がありますが、あれってカセットの挿し込み部分が直ぐ壊れて、接触不良でそんなに使わず棄てた様な?
ちょっと掘ってみましたが、年賀の遠藤くんはもしかしたら、自宅で公文の家庭教師をされてる可能性があります。
Shiojimaくんは住所を辿ると、更地になっています。