血を吐くような想いを込めた均の告白に戸惑いを隠せないキョーコ。
真実を求めるその足は並木へ向かった・・・
手紙-1
・・ああ、そうだった、確か君から手紙をもらっていたんだよね・・

金山はウェーブ気味の髪を上へかき上げながらキョーコへ微笑みかけた。


並木中学の体育館裏には昨夜の雪がうっすらと積もっていた。だが、そこが均と金山の決闘の場であったとはキョーコは露ほども知らなかった。


ええっと・・それで、気を悪くしないで欲しいんだけど・・

笑みを隠すかのようにうつむき加減に語りはじめた金山の言葉を、不意にキョーコが遮った。

いえ、金山さん、手紙のことは、もう、いいんです・・忘れてください・・。

金山の顔から笑みが消え、かわりに怪訝な色が浮かんだ。

・・それより、均の・・いえ、入江君とのこと、昨日何があったのか、教えてもらえませんか・・。」

そこで初めてキョーコは顔を上げて、金山の顔を正面から見つめた。その瞳は真剣そのものだったが、その真剣さは今や金山への恋愛感情に起因するものではなかった。

金山は拍子抜けしたようにため息をつくと小さく肩をすくめた。

怪我-1
ああ、彼のことね。えっと、なんていうか・・ちょっとした事故のようなものだよ。いきなり僕に殴りかかってきたんだからね・・

そう言いながら金山は左ほおに残る薄い痣を指さして、自分が被害者であることを強調した。

そして生徒会長としての自分の立場に差し支えない表現を選びながら、昨日の出来事について慎重に語りはじめた。


・・何で急に殴り掛かってきたのか、理由ははっきりわからないけど。・・まあ小物には小物なりの意地があるんだろうね。・・思いもよらなかったけど、それがわかっただけでもいい勉強になったかな・・。

話し続けるうちに金山の顔には再び自信に満ちた笑顔が戻っていた。


金山の話が終わっても、キョーコは地面に目を落としたまましばらくその場に佇んでいた。

そして消え入るような声でようやく呟いた。

・・さようなら、金山さん。これからも、お勉強、頑張ってください・・。

キョーコの瞳の端に光るものが滲んでいることに気づくことなく、金山は軽く手を振ると校舎に向かって歩き始めた。


それと金山さん・・

呼び止められた金山はいつも通りのさわやかな笑顔でキョーコを振り返った。


・・彼は・・入江君は・・小物なんかじゃないわ。

その静かな語調に含まれた強い想いに気圧されて、金山は慌てて頷いた。

雪-1
金山を背後に、キョーコは校門に向かって歩き始めた。

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